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スライムイーター

「せっかくですから何か他にご要望があればお聞きしておきたいのですが」


カムシンさんが別の話題をふる。


「そうですね、仮のものが入るのであればそれほど急ぎません。生活できれば良いので。あとは一度屋敷に来られてみては? その方がイメージも湧くことでしょう。ああ、それと簡素なもので良いので今持って帰れる椅子はないですかね? 今ひとつもないんですよ」


「そうですね、どんなスペースで使うのか分かれば作りやすいですね。露店用の簡単な腰掛けならいくつかありますが」


「露店用? ああ、露店の食べ物屋なんかに置いてある小さなやつですね。それでかまいませんので何個か貸していただきたいのですが」


「ではお譲りしますよ」


「借りるだけでいいですよ。明日からしばらくお昼には屋敷にいるつもりなのでいつでもいらしてください」


「分かりました。その間になんとか仮のものを持っていくことにします」


俺とユーリアが出されたお茶を飲み終えたのを見て、クレイトさんが立ち上がる。


「ではこれでお願いいたします。僕達はこのへんで」



「はい、家の中のものでしたら何でもご用命ください。今後共よろしくお願いいたします」


小さな腰掛けは五つ渡されたので俺が二つ、ジャービスさんが二つ、ユーリアが一つ持って帰ることになった。片手で軽く持てるものなので二つ持ってもいけるだろう。


皆で工房を出る。見送りにカムシンさんとさっきお茶を運んできてくれた女性二人も出てきていた。


「俺はここで別れるわ、お屋敷とは逆方向だしな。金属関連でなにかあったら俺にも声かけてくれよな」


スミスさんがジャービスさんの背中を思いっきり叩いて去っていった。ジャービスさんは両手に腰掛けを持っているので抵抗できない。



椅子が用意できたので明日の面接はどうにか格好がつくだろう。

できればテーブルも欲しかったけど、別に書面を見ることもないだろうからなくても問題ない。


屋敷についてジャービスさんは腰掛けを置いていったん前の住居へ戻ってものをとってくるそうだ。


その前に転移門での帰還に付き合ってもらった。

念の為周りに人がいないか確認して、転移門が消えるのを確認してもらった。指輪のテストも兼ねて。



小屋に帰った頃にはもう夕方になっていた。

手っ取り早く夕食を取りたいと思ったので、肉を大胆にカットしたステーキと、芋を煮て、溶かしたバターをかけただけの付け合せとパンにした。


明日は面接だ。孤児はジャービスさんを信用するとして、孤児院のスタッフは俺ともよく顔を合わせることになるので、重要だ。

良い人が来てくれるといいんだけど。



朝になった。ここに来てから何日目だろうか?

もうこっちの生活にも慣れてきた。

というかどこも体が悪くないってのは幸せなんだなぁと思い知っている感じだ。

この体の元の持ち主には悪いと思っているが、有効に活用させていただこう。

戻りたくても戻り方わかんないしな。



「おはよう」


今日は少し起きるのが遅かったようだ。ユーリアがすでに朝食の準備を終えていた。

しかし寝てないクレイトさんはともかく朝しっかりと起きれるユーリアすごいなと思う。目覚まし時計もないのにどうやって正確に起きてるんだろ。


「おはよー、リュウト。起きるの遅いから朝食勝手に作っちゃったよ、だからちゃっちゃと食べてね。エテルナ・ヌイに行かなきゃ。お昼からまた町でしょ?」


ユーリアお得意のスープとパンだった。まあこれはこれで美味いからいいんだけど、せっかく良い材料揃ってきているのになぁ、と思わなくもない。

まだ贅沢は敵だみたいな感覚が残ってるんだろうか?


まあそれも悪いことじゃないか。

ゆっくり慣れていってもらおう。


一日一食でも良いものを食べておけば体を作るのに足りないってこともないんじゃないかな? 今までが今までだったみたいだし。


そんな感じで昼食のメニューを考えながら朝食をいただいた。ごちそうさま。


今日はクレイトさん部屋から出てこないな。また何か作業をしてるんだろうな。小屋の中なら俺らの思考は読めてると思うし、わざわざ挨拶して邪魔することもないか。


朝食をとってからすぐに準備をしてユーリアとエテルナ・ヌイに向かった。



エテルナ・ヌイに到着したけど、なんか騒然としてる感じがする。昼間なのに建物の影にゴーストが見えるし、スペクターたちも巡回してるのが見える。


普段はエテルナ・ヌイに到着すると同時ぐらいに現れるドゥーアさんもまだこない。


どうしたんだろう、と一応警戒しながら広場ヘユーリアと向かう。



墓地となっている元広場に義体のケリスさんがいた。


「おお、リュウト殿にユーリア様、お迎えにも行けず、申し訳ない」


「どうかなされたんですか? なんかあったような感じですが」


「ええ、予想通りスライムイーターが現れたのですが、思った以上に高位のものが出現したようでして」

「え? スライムイーターってそんなにやばいやつなんですか?」


名前の印象からてっきりスライムよりは強い何か程度だと思ってたけど。


「人間に対して驚異とはならないですが、この辺のスライムを食い尽くされても困りますからね。それに高位のものは精霊に近い感じでして、ゴーストの魔法では効かないんですよ」


「あー、だからドゥーアさんを見かけないんですね」


「そうなのです、あちらで退治しているはずなんですが、手こずっているようです。私は魔法はからきしなので待機ですけどね」


「魔法しか効かない相手なんですか?」


「そうですね、そのへんが精霊っぽいところでもありまして、魔法しか効かない上に魔法のテレポートにしか思えないような移動の仕方をしますので」


「なんか出てきたよ」


ユーリアが広場の東あたりを指差す。確かになんか地面から大きなスライムが吹き出してきてる感じのものが見えた。



「スライムイーターですな、こっちまで逃げてきてしまったようです。スライム以外の生き物やアンデッドに対しては無関心ですので手を出さない限り大丈夫です」


「俺らの魔法で効きますかね?」


「ゴーストたちはもともと魔法の使えない町民だったものたちですので魔力が低いのです。ですから皆様の力ならダメージを与えられるとは思いますが、危険ですよ」


「けど倒しきれてないんですよ」


「まあ、そうですが。分かりました。私が守りますので支援をお願いします」


向こうからふわっとドゥーアさんらしいレイスが現れてスライムイーターにマジックミサイルを放つ。全弾命中してそれなりにひるんでるように見える。



俺もマジックミサイルを唱えてスライムイーターに向けて放つ。ユーリアはファイアボールだ。


どちらも命中したがあまりダメージを与えてる感じではなかった。


これまじ固くない?


スライムイーターのスライムみたいな体の一部が伸びて触手っぽくなって俺たちを薙ぎ払ってきた。


その攻撃に俺たちは反応できなかったけど、ケリスさんが盾で受け止めて逆にはじいていた。


それでスライムイーターの本体までバランスを失ったように震えている。パリィかな? ダメージは入らなくても影響は与えられるようだ。


「ありがとうございます」


おかげで助かった。礼を言ってからまたマジックミサイルを詠唱する。ユーリアもひるまずにファイアボールを唱える。


俺たちに気づいたドゥーアさんがこちらに飛んできた。同士討ちを避けるためかな?


双方呪文を唱えるために挨拶はなしだ。

近くにいたスペクターたちも魔法を打ち出す。これだけの魔法を受けても生きてるスライムイーターってなんなの?


「かなりやっかいですね。そうとう高位のものなのかもしれません。これほどのスライムイーターは初めてです。ドゥーア殿の魔法を受けてもびくともしていない……」


唯一まともに喋れる状況のケリスさんが解説してくれる。ドゥーアさんでも無理だったらどうすればいいんだ?


クレイトさんを呼ぶしかないか?


魔法攻撃を行ったため俺たちもスライムイーターの敵認定されたので、攻撃を受ける。


本体から光線が四方に伸びる。


俺とドゥーアさんと付近に居たスペクターに光線が当たった。

ユーリアにも飛んできたがそれはケリスさんが盾で防いだ。


別に痛くなかったが一気に疲れた気がする。ドゥーアさんは平気なようだけどスペクターは下がっていった。


「やっかいな攻撃だな。ドレインのようです」

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