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お金の使い方

「ひとつ、気になってることがあるんですが」


今のうちに聞いておいたほうがいいことがあったので話がまとまったこのタイミングで聞いてみる。


「ラカハイの町は人の出入りは管理してないんですか?」


「ん? 質問の意味がよくわからんが?」


「あ、いえ、町に入るときに税金取られたりとか、そもそも出入りを制限しているとかです」


「ああ、そういうことか。ラカハイは別に城塞都市でもないし、制限とかしてないし、把握もしてないと思うぞ。税金は馬車とかで来た荷物にはかかるけどな。

あの町だ、馬車で荷物持ってきても町の中に入れるのに人手がいるからな。人の出入りを制限しないことでラカハイの町は発展してきたという背景もあるからな」


「あ、そうなんですね、よかった」


俺たち、けっこう考え無しで出入りしてたからなぁ。でもまあこれで心配が一つ減った。


「自由に出入りしてもいいなら、二階は俺たちやジャービスさんの個室ってことでいいかもしれませんね」


「それでいいかもね。まずはその線でいってみよう」


「おとーさん、ありがとうね」


今までずっと黙って話を聞いていたユーリアが唐突にクレイトさんにお礼を言った。

一瞬何故か分からなかったが、孤児の世話をしていたジャービスさんの後押しを今までもしていたが、直接手を貸すことになったからだと思った。元々ユーリアも孤児だし、仲間もいるだろうしな。


「なに、ユーリアのためだけじゃないさ。僕のためでもあるし、それで皆が良くなるのはいいことだろ?」


「うん、それでもありがとう」


あ、ジャービスさんが泣きそうになってる。まあそういういい人だからユーリアもついて行っていたし、慎重なクレイトさんが信用しているんだろう。


「いや、本当にありがたいぜ。わしだっていつまでも元気でいられないし、今後どうしていこうと悩んでたところだったんだ。これであいつらにも道筋をつけてやれるってもんだ」


そういってジャービスさんは立ち上がった。


「これから忙しくなりそうだ。さっそく戻って準備させてもらうよ」



「あ、少々お待ちを」


そんなジャービスさんを引き止めたクレイトさんは懐から巾着を取り出してテーブルに置く。


「これは支度金みたいなものです。10ゴールド分入っております。差し上げますので役立ててください」


「ええ! そんなにかい? いいんですか?」


「ええ、もちろんです。これから引っ越しや触れ伝えに何かとかかるでしょうし、貴方のお金周りが良くなったら説得力が変わるでしょう?」


「あ、ああ、確かにそうだが。なんだか悪いなぁ」


「これは支度金と言っても今日からしばらくのお給金みたいなものですから、たまには良い酒でも飲まれたらどうですか?」


「おお、そんな許可までもらって飲まねぇわけにはいかないな。ありがとうございます、きっとクレイトさんの望むようになるよう頑張ります」



三人で屋敷の外までジャービスさんを送ってから小屋に戻ってきた。


「しかしクレイトさんも大盤振る舞いですね」


「ああ、無駄に溜め込んでいたからね。使うときに使わないと。そうそう君たちにもお金渡しておかないとね」


そういって俺とユーリアにもお金を渡してくれた。俺には1ゴールドと1ゴールド分のシルバーの合計2ゴールド分、ユーリアには1ゴールド分のシルバーだった。


「リュウトの方が多いのは、万一のためです。それにリュウトの方がなにかと入り用でしょうしね。無駄遣いするなとは言いません、むしろ小遣いと考えてください。なにか大きなものを買いたいときは僕に言ってください」


子供の小遣いとしては大金な気もするがありがたく頂いておこう。


「大盤振る舞いに見えるかもしれないけど、人の良心を利用しただけでは長続きしないからね。ちゃんと利益のある相手だと思ってくれた方がいいのさ」


なるほどね。持ってる人の考えだ。よっぽど苦労したんだろうか?



このあとエテルナ・ヌイへ行くユーリアについて行った。クレイトさんからの伝言もあったし。


そこでドゥーアさんにもこちらのことを大まかに伝えておいた。たぶん忙しくなるからクレイトさんは来れなくなることが多くなるけど、明日は来ると。俺らもしばらくは朝方にくることになりそうだし。


ユーリアはいつものチェックとお祈りをして、俺と一緒にケリスさんの戦闘訓練を受けた。やっぱり筋が良いとケリスさんに褒められた。エテルナ・ヌイから帰ってきたらもう日が落ちていた。



小屋に戻ってからクレイトさんから肉を受け取って氷室の中にある大きな箱に入れた。

なんでも氷室を整備する前に使っていた、入れたものがプリザーベイションがかかったようになるという保存用の箱だ。


これが一家に一個あれば流通も変わるだろうな、という箱だ。

残念ながら量産はできないそうだ。


なまものはここに入れることにしている。冷蔵庫でも腐るものは腐るしな。

そう考えたら俺の世界のものより上だよな、これ。まあ、肉が腐る心配をせずに消費できるってことだな。


夕食はどうしよう。昼にこれでもかって肉食ったから肉でなくていいし。無難にスープにしとくか。

てきとーに野菜をぶち込んで、干し肉とハーブ類で味付けしたスープにすることにした。米やマヨネーズはまた今度でいいや。米だと時間かかるし。


しかし孤児院か。俺にはそんな発想すらなかった。けどユーリアの将来を考えると、元々仲間だったろう孤児たちを育てるのは正しいという気もする。俺も立ち位置しっかり考えていかないとな。

今んとこまだただの居候だしな。



次の日、昨日は早めに休んだので睡眠時間はバッチリだ。なので朝早くから活動する。


まずは白米を鍋に入れて水で洗って、つけておいた。朝用には間に合わないと思うので昼用だ。

朝は白パンをスライスし、バターをたっぷり塗って、その上にチーズを削り落とす。

さらにそのうえにマヨネーズをかけて、ハーブソルトをばらまく。

これをレンジでチンしたら完成なのだが、レンジはないのでバターをたっぷり引いたフライパンで焼く。


パンから熱が伝わってチーズがある程度溶けたら完成だ。まー溶けてなくても美味いとは思うけど、溶けていたほうが美味しく感じるんじゃないかな?


ユーリアには好評だった。俺は……なんかマヨネーズの味が違う気がした。この体はマヨネーズを食べたことがなかったようで、補正はされなかった。まあ不味くはなかったのでよし。



朝飯を食べてからすぐにエテルナ・ヌイへ三人で向かう。今日も変わりなし。


クレイトさんがドゥーアさんと話をしていたけど、あんまり聞き取れなかった。俺とユーリアはケリスさんから戦闘訓練を受けてたから。

あとから聞いてみたら、スペクターを町へ出すことは出来ないか聞いていたようだ。

クレイトさん的にはスペクターの護衛がほしかったのかもだけどさすがにその提案は無茶だったのかドゥーアさんに断られたらしい。

まあ町中でスペクターが見つかったらただじゃおかないだろうしな。いくら見つかりにくいとはいえさ。


でもクレイトさんも間違った判断をするんだな、と逆に安心した。

そして自らの間違いをゴリ押さない人だとも。ちゃんとドゥーアさんの意見を聞き入れて諦めてたし。

今日の用事はそれだったらしく、何事もなく小屋に戻った。



昼のため米を炊く。白ごはんもいいかもだけど、たぶん俺しか求めてないと思うし、俺の分をとっておいて残りは焼き飯にでもしようかと。


何個かたまごがあったはず。


さすがにいつのものか分からないから生では食べれないが加熱すればいいはず。


それと玉ねぎっぽいのをみじん切りにしてバターで炒めた。火加減を自分で調整できるようにならないとな。


火周りは未だにユーリアに頼りっぱなしだ。


玉ねぎを炒めたらまずそれは木の皿に別においておいてフライパンで卵を炒めた。


そこに炊きたての米を投入し、とっておいた玉ねぎを投入した。ああ、しまった。

先に肉を炒めて細かくしておけばよかった。


もう間に合わないので今回は肉無しで行く。ある程度混ざったところでブイヨンとマヨネーズをかけ入れる。


ブイヨンは気持ち少なめに。とどめに胡椒を振り入れる。


うーん、この世界基準で言えば焼き飯も十分贅沢品だなぁ。ちょっと味見してからハーブソルトも少しかけた。


けっこう会心の出来だと思う。途中で味見もしたので味もばっちりだ。肉を入れたら完璧だったな。


ユーリアは最初なにこれといった顔をしていたが食べてみると美味しいとわかったようで全部食べてくれた。久々の米で俺も満足した。残した白米はおにぎりにして保存箱の中に皿ごと入れた。


おにぎりなら冷えても美味しいだろうし、なんなら崩して使ってもいい。


ただやっぱり米を使う料理は時間がかかってしまうな。今度は時間に余裕のあるときにしよう。


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