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孤児院

屋敷まで帰ってくると、すでにジャービスさんが屋敷の前で待っていた。


「いやぁ、呼びつけておいてお待たせしてしまったようで、申し訳ないです」


クレイトさんが頭を下げる。ほんとに驕ることがないよな、この人。


「いやいや、クレイトさんのお呼びですからこちらが勝手に早めに来ただけですから」


とジャービスさんも頭を下げている。なにこれ、ここの人達はいい人だらけか。


「おや、そちらのお二人は?」


「それも含めて話をするよ。まあまずは入っておくれ、何のもてなしも出来ないけどね」

四人で屋敷に入る。


『ロックに異常はなかったよ』


良かった。少なくともまだ目はつけられていないということですね。



「ほぉー、広い屋敷ですなぁ」


ジャービスさんが感心している。といっても家具とかはまだ何にもないので広いだけなんですけどね。


「ちょっとジャービスさんに見てほしいものがあるんだ」


「ほお、なんでしょうか。わしなんぞでできることなら何でもしますよ」


まっすぐに転移門がある部屋へ案内する。



「これは? まさか転移門?!」


ジャービスさんはひと目で光り輝く門を転移門だと見抜いた。この人、確か元冒険者とか言ってたし、見たことあったのかもな。


「ええ、そうです。ここをくぐってもらいたい。まずは私から通りますよ」


そういってクレイトさんは転移門をくぐった。もちろん部屋からは一瞬で消えたように見える。


さすがにジャービスさんも面食らってるようだ。


「どうぞ、俺らはジャービスさんがくぐったあとにくぐりますよ」


そういってユーリアの手を握る。ユーリアは何も言わないでいる。変装しているしそれが正解だな。


「そ、そうか、じゃあ、いかせてもらうよ……」


恐る恐るといった感じでジャービスさんが転移門をくぐる。消えたのを確認してから俺たちも一緒に転移門をくぐった。


小屋のクレイトさんの部屋に戻った。


「転移酔いとかはありませんか?」


「え、ああ、特に何も体に異常はありません。迷宮で転移門をくぐったことがありましてね。一応知ってはいたんですが、まさか町中にあるとは思わなくてね」


「そうですか、話が早くて良かった。続きは広間でしましょう」


そういって大きなテーブルのある広間へ移動する。俺とユーリアは台所へ行く。お茶を用意するためだ。まあユーリアだけでもいいんだろうが、なんかあっちにいるのも緊張するからさ。


「いつもの紅茶と干し果物でいいかな?」


「それでいいんじゃないかな。干し果物はとってくるからお茶の方頼むよ」


台所から地下の氷室にいって、干し果物が入った壺から数切れ取り出してくる。これは干しリンゴかな。


台所へ戻ってお茶の準備を整える。ジョッキを三つお盆の上へ乗せて、砂糖入れも乗せる。

マドラーはどこだっけ? ユーリアが持ってきてくれた。

紅茶を入れるのはユーリアに任せる。

だって紅茶なんてティーパックでしか淹れたことないんだもの。


用意が済んだお盆を俺が持とうとしたらユーリアに断られた。

自分が持っていくと主張された。まあぜひとも俺がやりたいってわけじゃないし、ユーリアに任せることにして、手ぶらで広間に戻った。


「揃ったようだね」


俺とユーリアが着席するのを待って、クレイトさんが話し始めた。


「まずは二人の説明をしないとね」


と言って、クレイトさんは左手を上げた。セシリアがユーリアに戻る。ジャービスさんが唸る。


「あ、すいません」


ユーリアが元に戻ったから俺もロバートからリュウトに戻ったのだろう、なんか騙してたような気がして、謝ってしまった。



「今のは?」


「ディスガイズという変装の魔法です。ちょっとした理由で変装させていました」


「その理由をお聞かせしてもらっても?」


「ええ、先程の転移門とも絡んでいる話でして、あれなしでユーリアやリュウトが町にあのタイミングでいるのはおかしい、と思いましてね」


「ああ、なるほど、確かに。まあ大半の人間はそんなこと気にしないとは思いますけどね」


「たぶんジャービスさんのおっしゃるとおりだとは思うのですが、慎重に行きたくてですね」


「ふむ、なにかわけありと言った感じですね。先程も申しましたがわしが出来ることなら喜んで協力させてもらいますよ」


そういってジャービスさんは干しリンゴを齧って紅茶を飲んだ。


「ええ、そうですね。お願いしたいことがあります」


「わしができることなら」


「あの屋敷の管理人をしてもらえませんか? ぶっちゃけると私たちにはあの転移門が必要なだけでして、屋敷は必要なかったんですが、転移門を守る必要もありまして。ただあの屋敷を無人で管理するのはリスクを伴うとも感じましてね。誰かに住んでもらいたかったのです。もちろん転移門のことはご内密にお願いできる方にね」


「わしがあの屋敷に?! そりゃ願ってもないことだが」


「もちろんご給金はお渡しします。それ以外にも管理費、護衛費も別途お支払いします。また転移門の秘密が守れるという前提になりますが、他の人を住まわせても構いません。むしろそういう方がいたら住まわせてほしいです」


「! それは、わしが孤児たちの世話をしてることを知っていての発言と考えてよろしいので?」


「ええ、もちろんです。孤児院にしろとまでは言いません。ただジャービスさんが行っていることのご協力も出来たら、と」


「転移門がネックだが、それが条件だしな」


「あの屋敷に住むものが知るのは構いません。ただ町中に拡散だけはされたくないので」


「ああ、そうだろうな、こんなもんがあると分かったら国が黙っちゃいねぇ」


「ですので二階は使わないようにしてください。魔法的トラップをしかけますので、命の保証は出来ない、とお考えください。一階だけでも十分な広さはあると思いますので」


「でも子どもだとだめと言われたらむしろ行こうとしませんかね?」


なんか危険な方向に話が進んでいたので意見を挟んでみる。



「そうだな、正直その心配は大きい。だから一度全体を見せて、なにもないと分からせてから行くな、とした方が助かる」


「二階はジャービスさんが仕事で使うからとかなんとか言って、いったん転移門を隠した状態で見せてから入るな、の方がいいかもですね」


「転移門は隠せるのかい? ならそうしてくれるとありがたいな」


「ではこうしましょう。なるべく入るな、ということにしておいて、普段は転移門は隠しておきます。転移門を利用するときは魔法で事前にジャービスさんか誰か信用のおけるものに伝達し、転移門のある部屋から人を遠ざけてもらう、というのは?」


「ああ、その方が転移門自体がバレることは少ないと思う。事前通達が少々手間だがそっちでお願いできますか?」


「ジャービスさんにも負担がかかる方法ですが、いいのですか?」


「もちろんだ。こんな良い条件であいつらが暮らせる場所を得られるんだ、大したことじゃない。むしろわがままを通してもらってこっちが恐縮するってもんさ」


「ではまたこちらから連絡するための魔法の指輪を持ってきます。本日からあの屋敷を使っても構わないので、ジャービスさんはあちらに越してきてもらえますか? あ、念の為、ここに入る子たちは面接を行いたいのですが、いいですか?」


「ああ、俺の独断で決めるより、金を出してくれる人が面接で決めるの方が納得しやすいしな。日時を決めてくれたらそれに合わせて皆に声かけておくぜ」


「そうですね、では明後日、お昼すぎから夕方までこちらにきますので、外で待っていただく、ということでどうですか? 集めるのはジャービスさんが世話をしたことのある孤児、および屋敷の警護や管理ができそうな大人、です。もちろんジャービスさんにはここの責任者となってもらいますので、ご自身と相性の合う方で口が堅い人、ということで」


「ああ、分かった。素行が悪いと損をするということを教える大事な機会になりそうだな。あと大人だが、何人ぐらいがいいのかな?」


「給金の心配なら無用です。ジャービスさんが管理できるなら何人でも構いませんよ。もちろん限度というものはありますし、私も面接しますからね」


「わかった、そっちも何人か当てはある。集めておくぜ」


「では明日も来て魔法の指輪を渡したいと思うので、明日はどこか分かりやすいところにいてください。今日みたいに伝令を捕まえて声かけさせていただきます」


「ああ、わかった。伝令は子供を捕まえてくれたらだいたい俺のいる場所は把握してるはずだが、自宅かいつもの酒場にいるぜ。そうそう、これからこのことは言ってもいいんだよな。クレイトさんが孤児院みたいなものを始める、といった感じで」


「ええ、構いません。むしろ積極的に言ってくださる方が嬉しいですね、僕もここに地盤を作りたいと考えていますので」


「それならだいぶと楽だな。実際にクレイトさんがあの屋敷を買うってなった時は、ちょっとした話題になったしな」

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