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一緒に作って食べる

いつも朝早くに起きている様子のユーリアが朝食の準備をしてくれていたのでそれをいただきながら、クレイトさんを含む皆で今日やるべきことを話し合う。


その結果、町の散策は早めにやっておきたいけど、ドゥーアさんを送るついでという形で今日は三人でまたエテルナ・ヌイに行くことにした。



クレイトさんが戻ってきたのでドゥーアさんは小屋住まいからエテルナ・ヌイの管理へ戻ることになる。


しかしスペクターたちは今後もユーリアが単独でエテルナ・ヌイへ向かうときのために常にいるらしい。これは俺が来る前からそうだったそうだ。


それと俺のポーション入れのポーチはドゥーアさんに譲ることになった。

クレイトさんが大きな魔晶石を何個もドゥーアさんに渡したためだ。

ドゥーアさんの義体はそれを持ち運ぶポケットもバックパックも持ち合わせていなかったし、今後は魔晶石を常に持ち歩くことになるのでそれがあると便利だと思ったからだ。

俺のポーション入れはまた町で買えばいいだろうし。


ドゥーアさんがこちらに着たときに増えた護衛のスペクターたちはそのままにしておく理由は、エテルナ・ヌイは今の戦力で十分防衛できているし、小屋の方に敵が流れてくることの方が怖いからとのこと。


まー確かにライトニングが使える護衛が居てくれたほうが安心ではある。今まで居た護衛はライトニングは使えなかったとのことだったし。



エテルナ・ヌイにはお昼から行くことになったので、それまでにひとつ魔法を覚えておこうということになった。

覚える魔法は何にしようかと考えたけど、魔法に対する防御魔法という提案をしてみた。

この前ひどい目にあったしな。ならばマジックシールドですな、ということでそれをユーリアと一緒に覚えることになった。


なんでも魔法には抵抗という概念があるらしく、意思のある存在はどんな魔法に対しても抵抗することが出来、抵抗に成功したら魔法の効力が発揮しなかったり、弱くなったりするそうだ。

それはファイアボールなどの攻撃魔法にも通用するらしい。

マジックシールドはその魔法抵抗力を上げる魔法だそうだ。

抵抗に成功したら攻撃魔法の場合は威力が弱まるのが常らしい。まあゲームと同じだな。



ちょっと時間はかかったが二人共無事に覚えることが出来た。


そのあとユーリアと二人で料理して昼飯を食べたあと、エテルナ・ヌイへ皆で向かった。


道中はエテルナ・ヌイから流れてきたのであろうスライムが一匹ぷるぷるしてただけで何事もなくエテルナ・ヌイへ到着。さっそくゴーレムのいるところへ行った。


ゴーレムたちはかなり傷をおっていて腕が取れかかっているものもあった。クレイトさんがなにか呪文を唱えると、対象のゴーレムの傷がみるみるうちに修復されていった。いったい何の魔法なんだろうか。


「クリエイトゴーレムをカスタマイズした魔法だよ」


魔法のカスタマイズ! これは本当に大魔法使いだ。知ってたけどさ。


あっという間にゴーレムたちの修復を終えた。


「そうだ。魔晶石も量産できそうだし、自動修復もつけておこうか。戦闘中に修復は無理だろうけど」


おお、戦闘中は無理でも自動で修復できる能力があれば、次に傷ついてもわざわざクレイトさんがここにくる必要はなくなる。


「それはありがたいですな。クレイト様がこられるまで防衛力の低下を回復できないのは痛手でしたからな」


ドゥーアさんも賛同する。自動回復のためには魔晶石が必要みたいだけど、クレイトさんいわく自然と溜まっていくみたいだし、使いみちが限られていたからこれに使うのも良いと思う。


クレイトさんがゴーレムを修復している間にユーリアは先に行っていつものチェックを終わらせていた。


ゴーレムのあとに魔法の結界のチェックがあったため、墓のある場所でユーリアと合流する。そこには義体のケリスさんもいた。


「あ、ケリスさん、もう大丈夫なのですか? なんかお怪我されたと聞いていましたが」


「いやいや、相手が戦士タイプと見えたので義体ではなく本来の姿でナーガラージャと戦ったのですが、実際は魔法戦士タイプでしてな。少々魔法を食らってしまっただけですよ。義体には傷一つつけておりません」


確かにぱっと見義体には傷などない。


「ほう、ケリス殿が魔法使いタイプでもない相手の魔法を食らうとは結構なやり手だったようですね」


「そうですね、あんなのがたくさんいたら正直対処に困りますよ。幸いそいつ一匹だけでしたので」


俺らが出会わなくてほんとに良かった。俺もユーリアも魔法戦士タイプだから純粋な実力勝負になるだろうし。それに下半身蛇でもやっぱり人間の体を持ったものと命のやり取りはまだ出来そうにない。


今日は顔見せみたいなものだったから戦闘訓練はなしということだった。町で買った屋敷も気になってるのでこれで解散ということになった。


ドゥーアさんとケリスさんが町の入口まで送ってくれた。


「何かありましたらまたぜひこちらへお越しください」


ええ、たぶんユーリアのお付きでよく来ることになると思いますよ。



小屋に帰ってきたら夕暮れになった。思ったより時間がかかってたようだ。それじゃ夕飯を作りましょうかね。


「僕はちょっと部屋に引きこもるよ。いろいろとやりたいことがたまってるんでね」


「はい、分かりました。夕食後は自由とさせてもらいますね」


「ああ、もちろんだとも。自分の家だと思ってくれて構わないよ」


「ありがとうございます。……あの、もしよければなにか蔵書をお貸し願えませんか? リードマジックも覚えましたし」


「おや、そうなのかい。いいね。僕の部屋も片付けて、触ってはいけない本とかはしまっておくよ。本棚においてある本は明日からどれでも読んでいいことにしよう。あ、でも僕が部屋にいる時に入りたいときはノックしてくれたまえ。儀式魔法を使ってる可能性があるからね。返事できない場合があるがそのときはそうだと思ってくれ」


「はい、何から何までありがとうございます」


「もう君は僕の弟子でもあるからね。弟子とかどれぐらいぶりだろうか。とりあえず貸せる本は今から見繕うよ。料理しておいで」


「はい、ありがとうございます。ユーリア、いこうか」


「うん、じゃない、はい」


「うんでいいよ。俺に対してはね」


わざわざ言い直してくれたのは嬉しいけど、堅苦しいのはなしでいきたい。


それはユーリアも言い直しはしたけど同感だったようだ。すごくいい笑顔で


「うん、わかったよ。いこ」


と返事してくれた。



今日はまだ時間があるし、前から作りたかった芋の料理を作ろうと思う。

そう言ったらユーリアはさっと竈に火を入れてくれた。察しが良いというか手際がいいというか。


竈に大きめの鍋をかかげ、クリエイトウォーターで鍋に水を注ぐ。そのあと地下の氷室に芋を取りに行っていくつか持ってくる。芋を洗ってから皮を剥く。

……ピーラーがないのがつらいな。俺は包丁、というかナイフで剥けないことはないがずっとピーラーだよりだったからなぁ。

事実俺が一つ剥き終わる間にユーリアはニつ剥き終わっていた。ユーリアが料理を教わったのつい最近なはずなのに器用さに段違いの差があるような気がするぞ。


まあいいか。剥いた芋を小さく刻んでから鍋に放り込む。このまま水に味をつけてスープにしてもいいんだが今日は手間かけるぞー。


ユーリアと協力して作ったのは芋グラタン? マッシュポテトにした芋に溶かしたバターを混ぜ込んで平べったく形を整えて、その上にチーズを振りかけててフライパンで焼いた。


ほんとはマヨネーズを混ぜ込みたかったんだが残念ながら持ってきてもらった調味料の中にマヨネーズはなかった。


これは異世界もの定番であるマヨネーズ自作をしないといけない流れか?

まあ単に買ってきてないだけかもしれないし、町を散策してからだな。まあバターだけでも風味も味も良いだろうと思う。

それに溶けたチーズ様を乗せているんだ。美味くないはずがない。俺の世界だったらフライパンで焼かずにオーブンで焼いてるところだが、さすがにこの小屋にオーブンはなかった。

パンがあるんだからこの世界にもオーブン自体は存在しているはずだけど。



ユーリアは芋を何度か食べたことがあるらしく、浮かない顔をしていたが完成が近づくにつれ、頬が緩んできていた。

聞いたところでは芋は食べたことあるけど美味しくないと言っていた。

が、よくよく聞いてみると生で食べていたようで、そりゃ美味しくないわな、と。芋って生で食べれたっけ?とか思ったけどそういや長芋は摩り下ろしたり刻んだりして生で食べてたよな。

こっちの世界の芋は食べれるんだろう。それよりも芋を生で食べないといけない生活をしていたユーリアには、今後はどんどん美味いものを食わせなきゃ!と心に誓った。



芋にも塩と胡椒っぽいのは混ぜたから必要ない気もするけど、チーズの上からもぱらぱらと塩をふりかける。ついでに見つけたパセリの葉を刻んだものもかける。


よしこれで出来上がり。付け合わせるパンはあえて黒パンにした。

また芋の煮汁は持ってきてもらったものの中にブイヨンがあったので、それを使ってスープにした。

具がないスープなのでさっき刻んだパセリの葉をふりかけてみる。うむ、見た目贅沢になったぞ。



多めに作ったので二人分をとりわけ、スープと共にテーブルへ運ぶ。


自分のジョッキにクレイトウィーターで水を注いで、いただきます。


一口目は違和感が強かった。

あれ? 美味しくない?


二口目でチーズの味が俺の知ってるものと違うせいだと気づいた。

事実ユーリアは喜んで美味しそうに食べてくれている。

あちゃーしまったなぁと思いつつ三口目を食べると美味しく感じた。

あれ? もう味になれたか?と思ったけど、どうも体の記憶が出てきてくれたようだ。


これは助かる。美味しいはずのものを美味しく感じられないのはつらいからな。



充実した夕食を終え、食器を台所へ運ぶ。以前食器はどう洗うのか気になっていたが、今日は眼の前でユーリアに実演してもらった。


台所の奥に水の入った大きな口の壺があったのだが、その上で食器に竈で出来た灰をかけて手で洗っていた。洗ったあと壺の中に食器を入れて、ユーリアは魔法を使った。


「ピュリフィケーション」


なるほど、と思った。魔法がある世界ならではだな。ピュリフィケーションは水を浄化する魔法だ。灰は洗剤代わりなのだろう。どこかで聞いたことがある。


クリエイトウォーターで水が豊富にあってピュリフィケーションが使えるならとても合理的だ。

俺が覚えないといけない魔法がまた増えた。こういった魔法ってあんがい多いのかもな、この世界。



ユーリアにいつピュリフィケーションを覚えたのか聞いてみると意外にもこの小屋に来てからだそうだ。


自分に魔法が使えると分かっていたら、厨房でのお手伝いという職につけたので伝令よりましだったんだけどなぁ、と昔語りみたいな感じで教えてくれた。


なんでもジャービスさんは魔法の素養がないらしく、魔法関連は他の人に頼むことになるので適性とかを調べるのはあとまわしになりがちだったらしい。



そういう適性を見る人は魔法教師であり、町にも数が少なく有料なのでなかなか、だったらしい。


「そうなんだけど、実際は魔法使いであれば適正を見るぐらいは誰でもできるんだけどね」


クレイトさんがいつの間にか台所の入り口に立っていた。


「もちろん魔法を教えることもね。ただ無料でそれをやりすぎると、魔法を使える人が溢れて、今魔法によって生活している人の生活を脅かすから、とこんなことになってしまったみたいだよ」


あー、うん、なんか俺のいた世界でもすげぇありがちな話だった。そりゃ魔法が使えたら人生変わるかもだしなぁ。


「じゃあ俺に魔法を教えて大丈夫なんですか?」


「もちろん、さっきのは町の論理なだけだからね。実際村とかの閉鎖社会では魔法教師なんていないから、ただの魔法使いが弟子を取るという形で教えるのが普通だし、それと同じだよ」


良かった。違法なことしてるのかと思ったよ。まあ違法だったとしてもクレイトさんを罰することは誰にもできそうにないけどさ。

ユーリアの世間体ってのもあるし。

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