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拡張

皆で中央広場へ戻る際、カッシオの一人が話しかけてきた。



「リュウトよ。先程もちらと話したが、今回の件でリュウトもかなり強化されたはずだ。自覚しておるか?」


「え? なんで? 俺結局何もしてないぞ」


もう一人が会話を受け継ぐ。


「一時的とはいえ、リュウトは我でもあったからな、我の力の一部がリュウトにも流れ込んだはずだ。リンクは残っているのでな」


クレイトさんが興味深げにカッシオたちの話に乗ってきた。



「ほう、確かにリュウト、君の魔力はずいぶんと上がっているようだね。先程もマジックミサイルの一発でインプを倒していたし。たぶんもう自力で瞬間移動魔法を行使できる程度には魔力上がってると思うよ」



実感はないけどそれが事実なら助かる。いちいち付けたり外したりとか面倒だったし、魔力が高くなることで損することはないだろうし。



「しかしひとまず驚異は避けられましたが、門や壁の多くが壊されてしまいました。修復を考えると頭が痛いです」


ケリスさんがエテルナ・ヌイの受けた損害についてクレイトさんに話している。


「そこなんだけどね。僕にちょっと考えがあるんだ」


「それは、いったい?」


「あとでみんなで集まったときに話すことにするよ」


皆で集まって報告会をやったほうが良さそうだ。



中央広場に戻ってきたタイミングで、竜たちが飛んで戻ってきた。

ムアイグラズさんも無事変形を解除できたようで、元の竜の姿に戻っている。


そんなムアイグラズさんとリヒューサはクレイトさんの前に降り立ち、すぐに人化してクレイトさんに跪いた。ヴァルカはその後方にゆっくりと降り立った。



「おかげさまで我ら竜種の存在意義である魔王の撃滅に成功しました。ご協力ありがとうございます」


クレイトさんは笑って竜たちに立つように促した。


「いや僕らは自衛しただけだからね。君たちがいなかったら苦労したと思うし、僕たちの方こそありがとう、だよ。特にムアイグラズ殿、貴方のおかげで烈震竜が来る前に魔王を退けることが出来た。すぐそこまで来ていたようだからね」


「はあ、まあ烈震や海嘯は短気ですからねぇ。彼らがまわりを考えずに動くから、我ら竜種は必要以上に恐れられるようになってしまいましたが、我らも人や他の者を巻き込むのを良しとしているわけではないことはご認識していただきたく」



「ああ、わかっているさ。君たちを見ていればね」


豪炎竜や颶風竜は人間とは違う場所に住んでいるから、かかわり合いがないせいか、お互い偏見がないのも大きいんだろうな、と思う。


特に大地を住処にしている烈震竜とかは人間をうざがってる可能性もあるしな。

けど竜種として人間が忌諱するものではないというのは良かった。



「被害は以上となります」


ドゥーアさんが北、東をまとめてエテルナ・ヌイが受けた被害をクレイトさんと俺に報告する。


さすがに誰一人として戦死しなかったというわけにはいかなかったようだ。


ナーガラージャが一人、オークが三人やられてしまったようだ。だいたい攻めてこられた初期にやられたとのこと。


体制が整っていない時だとそうなるかもなぁ。ナーガに被害がなかったのは基本後ろにいるからだろう。


ゴーレムは半分近く破壊されてしまったようだけど、ゴーストやファントム、スペクターたちの被害はないのでこちらは作り直せばいいだけだ。


門は北、東とももう使用不可能、グーファスでは修理も不可能というレベルで破壊されてしまったらしい。



「建築技師に依頼しないといけませんね」


「相応の金貨を使っても良いなら下水道のように我が復活させるが?」


カッシオはなんてことはないという感じで俺の悩みを打ち砕いてくれる。



「僕としては北と東の門はもうなくてもいいと思うんだ。その代わりにエテルナ・ヌイを北と東に広げたいとすら思っている」


さっきケリスさんと話していたやつだな。ドゥーアさんが食いついてきた。


「それはどういうことですか?」


「ああ、エテルナ・ヌイも手狭になってきたし、将来的に土地が足りなくなると思うんだ。だから今のうちに広げておきたいな、と。エテルナ・ヌイは元々町だし、ユーリアが住む町としても拡充させていきたいと思っているんだ。……もちろん君たち次第だけどね」


ドゥーアさんやケリスさんたちの事情をまだ知らない者もいるので、そのへんは誤魔化しながらの説明だった。



「私はたいへん素晴らしいと思います。この地に再び人が住むことになるのは私としても感涙レベルであります。皆も同意見だと思います、なぁケリス?」


「はい、私はここには立ち寄っただけのものですが、過ごした時間が長かったですからね。ここに人々の生活が戻るというのは素晴らしいことだと思います」


「はい、まったく同意見です。つけ加えるなら私達はいずれ去る者ですので、今のうちから住民を募集するのは得策だとも思います。ユーリアちゃんの特殊性を考えると、ラカハイにずっと住むのもアレでしょうし、ユーリアちゃんの味方になってくれる人を住民にしていくのがいいと思います」


アルティナさんが同意見としつつも補足的なことを言ってくれた。

確かに今のエテルナ・ヌイの住民のほとんどは近々いなくなる予定だしな。

ドゥーアさんたちアンデッドも、ハギルたち異種族も。

残るのは俺とグーファス、レミュエーラにリヒューサぐらいか。



「まあ他にもいろいろと考えてはいるんだ。実現するかどうかは分からないけど、エテルナ・ヌイを拡充することに問題はないと思うんだ。エテルナ・ヌイの存在意義でもあった、東の驚異ももうほとんどないからね」


「確かにそのようですな。エテルナ・ヌイは人類にとって東の驚異から身を守る防壁でしたからな。東の地と人類の接点はこの地だけですから。他は海や険しい山で隔絶しておりますしな」



「我らナーガラージャは、東のゴブリンどもがエテルナ・ヌイの傘下に入ったことで、リザードマンの村の近くにこだわることなく、東のどこにでも移住できることになりましたし、近日中にエテルナ・ヌイから離れる予定です」


「我はいてもよいというならエテルナ・ヌイにいるつもりだ」


「片方は常にエテルナ・ヌイにいてもう片方が外にでることにしよう」


事情を聞いてないものたちが、なんでカッシオが二人いるんだ?という顔をしている。無理もない。



「なあ、カッシオ。片方が分身体だって聞いてはいるけど、これどう接したらいいんだ? 俺にはどっちが本体か見分けつかないし」


俺が代表して疑問を口に出す。


「どうもなにも普通に接してくれればいいぞ」



「普通ったって、どっちが本体か分からないって言ってるじゃん」


「本当にリュウトは変なことに拘るのだな。どちらも本体と思ってくれていい。リンクしておるからな。ああ、だからといって片方を傷つけたからもう片方も傷つくということはない。……そうだな、心は一つだが体が二つあるというだけ、という説明で分かるか?」


「分かるような分からないような……」



「人間の言語ではこれ以上の説明は無理だ。今の我の状況が概念的に想定されていないため、この状況を指し示す言葉自体がない」


人間以外にも無理そうだがな、これは魔属特有なのかもしれん、とかカッシオは二人揃ってつぶやいている。



まあ確かに人間には思考できる体が二つあるなんてことは起こらないからな。


頭がたくさんあるヒドラとかなら通用する概念なのかもしれない。


あっちは心、というか脳みそが複数あって体が一つだけど。でもヒドラに独自の言語はなさそうだ。


「そういえば、その分身体の元になったマルモン、だっけ? その魔族はどこにいったんだ?」

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