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そういってドゥーアさんがまた「ふははははは」と笑う。


ナーガはすでに全部倒しきっていたようで、もはやパニックを起こすオークたちをここにとどめておくものはいないようだった。オークたちは武器を捨てて逃げ出している。


「逃してまた来られても面倒です。追い打ちさせてもらいますよ」


ドゥーアさんは早口で魔法を唱えた。


「ボールライトニング」


逃げ出したオークの集団の真ん中に放電する球が生まれた。その球から周辺にいた複数のオークに何本ものライトニングが走り、絶命させていく。さっきのオークを全滅させたのもこの魔法か。


襲撃は終わったようだ。空が明るくなってきた。夜明け間近だったのか。


今回の襲撃のボスであったと思われるナーガラージャはケリスさんに倒されてしまっていたので見ていない。

上半身は人間とのことだから見ないですんで良かった気もする。

オークたちは顔がアレだし、人型だけどそんなに嫌悪感はないな。



「さて、今までであればまるまるゾンビになるがままだったのですが、今後はそうならないでしょうし、どうしましょうか?」


いくら焼けた匂いがいい匂いだからといって食べる気はしないし、そのまま放置もいろいろ悪影響がありそうだ。

しかしこれらをひとつひとつ埋めていくのはかなりの作業になりそうだ。


「ゾンビ化はユーリアの結界のおかげで起こらないでしょうしね、たしかに。なにか死体を処分するような魔法でもあればいいんですが」


「そういうのは聞いたことないですね。炎の魔法でも全部跡も残さず焼き尽くすとか聞いたことないですし」


「放置でいいのでは? ゾンビにならなくとも、そのへんにいるスライムが消化してくれますよ」


ケリスさんが放置をすすめてきた。ハイエナみたいなものなのかな?



「そのスライムに危険はないんですか?」


「このへんにいるような奴らに人間を襲う力はありませんよ。ネズミぐらいの小動物なら危険かもしれませんが」


「へぇそうなんだ」


スライムって元々は強いモンスターだったってどこかで見た気がするけど、こっちの世界のは最近のイメージのスライムに近いようだ。


「問題がありそうなら大きくなったところでちらしておきますよ」


「そうですね、あの量を処理したらだいぶ大きくなりそうですしね、スライムも。そしたら危険かもしれませんから、お願いしておきたいです」


「分かりました。スライム程度ならゴーストでもできますからね」



「もうスライム、きてるね」


ユーリアが壊滅させたオークたちの方を指差す。確かに一部の死体にゼリー状の何かが覆いかぶさっているように見える。


「もうきてますね。このへんはあまりスライムの食料となるようなものも少ないですし、大喜びなんでしょうな。見ての通り消化はすこぶる時間がかかるため、人間なら捕まっても逃げれます。殴っただけで弾ける程度の体しかないですしね」


「スライムっていうよりゼリーみたいな感じなんだな」


粘着性の強いどろどろの見た目かと思ったけど、どうもここの屍肉食いのスライムはぽよんぽよんのゼリーみたいな見た目だ。死体に覆いかぶさってゆっくりと消化吸収していくようだ。透明でなく暗い色をしているので過程が見えなくて良かった。


「消えてしまった同胞はいないようですが、ゴーレムたちが相当傷ついてしまいました。ゴーレムを直す魔法は私にも使えませんので、クレイト様の帰還を待つしか無いですな」


戦闘が終わったあとエテルナ・ヌイの住民が集まって、報告をドゥーアさんにしていた。そのドゥーアさんが俺たちにまとめた報告をしてくれた。



「それは良かった。ゴーレムたちも直せるなら問題ないでしょうし。こういうことはたびたびあるんですか?」


「クレイト様がここエテルナ・ヌイを改革されてからは初めてですが、それ以前はたまに来ていました。


ここがアンデッドの巣窟になっていることは異種族たちも快く思っていないようですし、そもそもここが人間の町だった頃からこんな感じですしな」


「やつらが勢力をこちらに伸ばそうとすると、どうしてもエテルナ・ヌイが邪魔になるんですよ。逆を言うと王国からするとエテルナ・ヌイを抜かれると、やつらに国を南北に分断されてしまう。ですから我らが生きている頃からこういう戦いはありました」


ケリスさんが補足してくれた。



「まあ今はラカハイが発展してるようですから、ここが抜かれても分断という羽目にはならないでしょうが、厳しくはなるでしょうな」


なるほど、そういうことならここは要害のままにしておかないといけないのか。ドゥーアさんたちっていずれいなくなるんだよな。それまでになんとかしないといけないという感じか。


朝日が眩しい。そういえばアンデッドたちは日光って大丈夫なんだろうか? ゲームでは苦手なのが多かった気がする。



「そういえば朝日出てきてますが、大丈夫なんですか?」


ドゥーアさんたちに聞いてみる。


「私やケリス殿は不快な程度、スペクターは苦手といったところですな。ゴーストはやばいのですでに退避を始めてます」


確かにすでに皆建物の影に入っていた。


朝日が目に染みる。ぶっちゃけ眠い。我慢できずにあくびが出る。


「おや、そういえば深夜に叩き起こしてしまったのでしたな。申し訳ない。小屋に戻って休むことにしましょう」


「私はポーション飲んだせいかまだ眠くないや」


ポーションにそんな効果もあるのか。体が活性化するとかなのかもな。



「でもまあ、疲れが残ったらいけないから、帰って寝ようか」


「ケリス殿、あとのことは任せますよ。では義体を取ってきます」


「任された、といってももうやることはないけどな。一応周囲の警戒は続けておくよ。ああ、戦闘不能になったスペクターの代わりを見繕っておくよ」


「そのスペクター、大丈夫なんですか?」



「ああ、霊体は休んでおけば回復するからな。そのへんは生身よりも楽でいいよ、そのかわり魔法やポーションで一気に回復とか出来ないけどな」


なるほど、戦闘時とかきつそうだ。けど無事で良かった。


しばらく待ったらドゥーアさんが義体で戻ってきたので、帰ることにした。

途中からスペクターが三体、ついてきていた。増えてるし。


「最初の二人は戦闘力の高い者でしたからな。その不足を補うために一人増やしたみたいですな」


まあさっき襲撃があったばかりだし、防衛は一人減ったぐらいなら大丈夫か。むしろ小屋に来られると怖いしな。


「ありがたい話ですね。安心して寝れますよ」


小屋に帰ってきたらすぐにベッドに倒れ込んでしまった。もちろんそのまま寝た。



目が覚めたのはお昼前ぐらいだった。

一瞬に感じたから深い眠りだったようだ。

お腹も減っていて腹が鳴った。


「おはようー」


広間には誰も居なかった。台所から物音が聞こえたので見てみると、ユーリアが一人で料理しているみたいだ。


「あ、おはよー、リュウト。お腹空いたでしょ? いまスープ作ってるからちょっと待ってね」


「ああ、ありがとう」



返事して広間の椅子に座る。昨晩のことを思い出す。

結局何も出来なかった。


まあまだ教えてもらっている立場だから当然といえば当然だけど。

しかしたぶんクレイトさんは俺にユーリアを守ってもらいたいと思ってるはず。

そうでなければここまでの厚遇はないだろう。

しかし昨晩はやらかしてしまった。

もっと慎重にならないと。

それにもっと力もつけないとな。


攻撃魔法とか俺でも使えるかな?

ユーリアみたいにファイアボールとか使えたら役立ちそうだ。

無詠唱とかは無理かもだけど。ドゥーアさんも魔法教えるの上手かったし、聞いてみようかな?

あーけどクレイトさんから直接の方がいいのかな。なんせ弟子だしな。



といろいろ考えていたら、食事が運ばれてきた。


「なにぼぉっとしてるの? 昨日のダメージ残ってるとか? ポーション飲む?」


ユーリアが俺を気遣ってくれているようだ。こんな小さな子に気遣いさせるとかダメダメじゃん。


「あー、ちょっと考え事をな。ダメージは残ってないよ、ありがとう。そういえばポーションって貴重品じゃないの?」


けっこう使ってる。貴重品だとアレだしな、聞いておいたほうがいいだろう。


「貴重といえば貴重かも。材料はここらへんでは手に入らないものばかり。けどポーションにしてるの私だから、そこまで高くないよ」


食べながら聞いてみると、クレイトさんにポーション作りを覚えるよう言われて、それなりのストックを作ってるそうだ。

材料はジャービスさんが買って持ってきているらしい。

ここらへんでは取れないけど取れるところではありふれたものが素材だから、そこまで高くはないらしい。

けどポーションの生産ができる人自体少ない上、技量に左右されて、しかも魔力を消費するので大量に作れないから、貴重品ではあるそうだ。


「私の作るポーションは高品質だっておと-さん言ってくれた」


ユーリアが自慢げに教えてくれた。



クレイトさんが作ればいいのにな。と思っていると心を読んだわけじゃないだろうに、ユーリアが答えてくれた。


「おとーさん、自分では作れないんだって。なんかアンデッドは治癒系統の技術は一切使えないらしいよ」


「へー、あのクレイトさんでもだめなんだ。包帯を巻くとかの物理的なものもだめなのかな?」


「分からないけど、魔力が絡むとだめだって言ってた」



「魔力だしなー、理不尽でもそういうものなんだろうね。普通に考えてもアンデッドに治癒関連は必要ないしな」


今日のスープも美味しい。しかも前と味が少し違う。味付けを自分で変えて美味しいということはユーリアには料理の才能もあるのかもしれない。

少なくともメシマズではないようで安心した。

子供の頃からろくなもの食べてなかったみたいだからそのへんは心配だったんだ。

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