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強襲

生き残り、ゾンビをあらかた始末し終えたゴブリンたちがこちらに集まってきた。


リヒューサやフファンがそんなゴブリンたちがこちらに来ないよう、威圧で押さえつけている。


この唯一残ったトップファイブの一人の処遇によってはこのゴブリンたち全部と敵対することになりそうだ。まあ敵対しても勝てるだろうけど、いい気はしないな。



「君の言い分は分かった。君は裏切り者だが、見方次第ではロードがゴブリン種の裏切り者だったと考えることも出来る。君はゴブリン種を裏切ってはいないのだな。ではこれを授ける。今すぐ首につけるんだ」


そういってクレイトさんは懐から何やら胡散臭い鎖?をゴブリンシャーマンに渡した。

シャーマンは慌てて立ち上がり鎖を受け取り、首につけた。ネックレスのようだ。


「それはゴブリングレネードに匹敵する爆発を起こす魔法の品だ。私の意に沿わぬことをしでかせば爆発するだろう。心するといい」



シャーマンがひぃといった感じで、また土下座した。


「しかし私は裏切り者である君にここにいるゴブリンたちの統率を任せたいと思う。ゴブリン種の意と私の意とが相反した場合は私にまず相談しなさい。私の意見を聞かずに行動すれば、ぼんっ、だ」


「わ、わかりました。決して独断いたしません。ゴブリン種を統率させていただきます」



『まあ、爆弾云々はうそでただの勝手に外せなくした、僕と念話が出来る魔法のネックレスなんだけどね』


!? まあそんなところだろうとは思った、どうやってクレイトさんの意に背いたかどうかなんて判定するんだろう、とか思ってたし、本気でそんなことをするような人ではないと思ってるし。


まあ正に人ではないんだけどさ。



「私は君やゴブリンたちに無茶を言う気は今のところないし、ここにいるゴブリン種はとりあえず君に任せる。ゴブリン種のために他種族と交渉してみなさい。私はゴブリン種に対しても公平な立場でいるつもりだ。手始めとしてリザードマンに対する窓口は用意してあげよう」



「そんな手温くていいのですか? クレイト様の御身に傷をつけたものに対して」


リヒューサが異議を唱えた。


「構わないさ、彼らが僕たちを裏切っても僕たちは困らない。ゴブリン種を絶滅させるだけさ。それに僕は傷ついてなんかいないしね」


と悪びれたことを言いつつ、今気づいたかのように肩に刺さっていた矢を引き抜き、捨てた。



もちろん矢には血なんかついていない。

そもそも血なんかないんだもの。


けど他者、とくにゴブリンたちにはクレイトさんは矢が刺さっても傷つかない無敵の相手だと思ったようだ。

……どうもエクテルグもそう思ってしまったようだけど、まあいいか。


リヒューサも茶番だと気づいたのか、最初から茶番をしかけたのか分からないけど、その場で頭を下げた。



「フファン、彼がゴブリンたちをまとめたら、代表者をリザードマンの村へ招いてくれるかな。申し訳ないが後始末を頼みたい」


クレイトさんが残務をフファンに押し付けようとしたところで、先程のゴブリンシャーマンがゴブリンたちの元に行かずに発言許可を求めた。



「一つ、進言しておきたいことが……」


「聞こう」


「我々が西進したのは魔王がいなくなったからです。その隙をついて出てきたのです。魔王がどこにいったのかは誰も知りません。戻ってくる様子はあったようなのですが」



「ふむ……。ありがとう、助かるよ。評価を一段階上げよう。さあ、まとめてきなさい」


「ははっ」



「フファン、すまない。本当に急がなくてはならなくなった。あとのことは任せる」


「リヒューサ、リュウト、それとエクテルグ。君たちをまずポータルで送る」


えらい慌てようだな。念話で問い合わせてなにか不具合でもあったかな?



「フファンだけでは心許なかろう。ダンジョウもついておいてやれ」


確かにカッシオの言う通り、フファンだけだとゴブリンに負けることはないとしても心配ではある。


ゴブリン相手に暴れまわったダンジョウも残ってくれた方が安心かな。



「フファンもダンジョウもそれでお願いするよ」


「おまかせを」


フファンとダンジョウがハモった。



再びあの感覚を受け、見慣れた場所へ跳んできた。


エテルナ・ヌイの中央の広場だ。


しかし付近にはゴーレムすらいない。なにか異常事態が起こってそうだ。



「ユーリア!?」


思わず声を出してしまった。あの陣営でユーリアがどうにかなるとは思えないけど、姿が見えないのは心配だ。


北の方から戦闘のような音が聞こえる。すでに敵に侵入されているのか?! というぐらい大きな音だった。

と思ったら東からナーガが一匹急いでいる感じでこちらに来た。



「どういう状況なのか?」


リヒューサがナーガに尋ねる。ナーガが念話で返してくれた。


『襲撃を受けています。まず東にゴブリンのゾンビが大量に。次に北に巨大な化け物がエテルナ・ヌイに侵入しようと壁を壊し始めました』



「ユーリアはどこに?!」


「ユーリア様はケリス様らと共にゴブリンゾンビを迎撃に。北にはヴァルカ様と豪炎竜様が向かいました」



「分かった。俺とエクテルグはユーリアのところへいきます。リヒューサはムアイグラズさんのところへ加勢を。なんなんだ巨大な化け物って。俺じゃ役立てなさそうだ。君はここに残ってここに跳んでくる人たちにその説明も追加で伝えてほしい」



俺はエクテルグを肩に載せたまま東門へ向かって走っていく。すぐに戦闘の音が聞こえてきた。


驚いたことに原型を留めていたはずの東門が周辺の壁ごと吹き飛んでいた。しかも別の場所にも壁に穴を開けられてしまっているようだ。


いた! ユーリアは後方でグーファスとレミュエーラ、オーガたちに守られながらも魔法で支援していた。戦闘指揮はドゥーアさんのようだ。



門だったところにはケリスさんがいるので突破はされていない。


しかし突出した戦力がいない壁の穴方面は少し押されている感じのようだ。



「ユーリア! ドゥーアさん! 今戻りました。すぐにクレイトさんたちも戻ってくるはずです。俺は壁の穴の方に行きます」



「おお! 助かります! クレイト様には北に行ってもらいたく。ゴブリンゾンビどもにレッサーデビルと何やらよくわからぬやつらが混じっておりますのでお気をつけて!」



「リュウト! おかえりー、ごめん。こんなことになっちゃった……」



「ユーリアが悪いわけじゃないよ。またあとで話そう!」


ユーリアの側にいてやりたいが戦況がそれを許してくれる状況ではないようなので後ろ髪を引かれながらも壁の穴方面へ向かう。



う……、まずいな、これ。すでに何体も侵入されて拡散されかかっていた。


なんとか数に任せて包囲できてるけど、オークやナーガでは荷が重い相手のようで、二対一でないと止めれないようだ。


ゴーレムたちも何体か破壊されてしまっているようで、ゴーストが崩れたゴーレムの側から隠れて下がっていくのが見えた。


予備のゴーレムに入りに戻るのだろう。



「あれがレッサーデビルか」


先程の自然発生のゴブリンゾンビと違ってやたら強いゴブリンゾンビに混じって、山羊の頭を持った巨人、という程には大きくはないけど二メートルは超えている大柄な人型がいる。


頭と下半身が山羊のようで上半身にはローブみたいな服とマントを付け、大きな鎌を持っていた。


その周りには空飛ぶイルカ、としか形容しようがない奴らが複数、浮かび泳いでいた。


幸い高く上がることはできないのか包囲から抜け出せはしてない。


けどこいつも魔法みたいな攻撃をしてくるようで空飛ぶイルカの正面に位置してしまったナーガが見えない衝撃波みたいなものを食らって吹き飛んでしまっていた。

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