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スクランブル

とりあえず竜たちとは家の前で別れて、ユーリアと一緒に広場に戻ってきた。



もうすでに普段どおりにゴーレムたちは墓地にするため今は南のある区画を更地にすべく建物を瓦礫にし、瓦礫を撤去していっている。


瓦礫は武器になるので今は保存場所に積み上げられている。



東からオークが三人、こちらに向けて走ってきた。


「リュウト様、それにユーリア様、ご報告があります」



三人のうち進み出てきたのはいつぞやの戦闘隊長を名乗っていたオークのようだ。傷跡とか装備に見覚えがある。


「先程我らは定期偵察に出ていたのですが、そこでリザードマンの伝令と出会いまして、緊急に伝えたいことがある、と。我らはリザードマンより足が早いので先触れとして戻ってまいりました」


リザードマンの伝令ということは同盟を結んでいる東のリザードマンの村のものだろう。それが緊急でエテルナ・ヌイに伝令とか嫌な予感しかしない。おちおちゆっくりもしてられないようだ。



「分かった。君たちはハギルに主だったものを集めてこちらに来るように伝えてくれるかな。俺はクレイトさんを呼ぶよ」


オークたちは走り去っていった。俺は指輪をこすり、クレイトさんに伝えた。


『ちょうど終わったところだ。カッシオとともに戻るよ、途中でダンジョウも回収してくる』



「リヒューサたちは呼ばなくていい?」


ユーリアが聞いてきた。んー、どうだろう? 確かにリザードマン関連なら呼んだ方がよさそうだ。


「そうだね、クレイトさんに頼んで念話で呼んでもらうよ」


「そっか、言ってよかった」



ユーリアはにこにこだ。本当に頭になかったから、ユーリアが提案してくれてよかった。


「ありがとな、そこまで気が回ってなかったから言ってくれて助かったよ。また何か思いついたら言ってくれよ」


「うん! じゃなくて、はい!」



ハギルたちがドゥーアさんも伴ってこちらに来たのとほぼ同時にクレイトさんたちもこちらに戻ってきた。


「リザードマンは今エテルナ・ヌイについたようだ。ケリスくんから報告があった」


言ってる間に東からリザードマンとケリスさんが見えた。

リザードマンは走るのには慣れてないらしく息も絶え絶えでしっぽをおおきく振りながら走り寄ってきた。


『息を整えて、落ち着いて話してくれ』


クレイトさんが全方位念話でリザードマンに話しかける。


今リザードマンの言葉が分かるのは、クレイトさんとハギルたちナーガラージャだけだからなぁ。


リザードマンがある程度息を整えてからシャーシャー言い出す。

これが言語っぽいんだよなぁ。……あれ? 何言ってるのか分かるぞ。



「東の監視櫓がゴブリンの軍勢が西に向けて移動してきているのを確認しました。今頃はその監視櫓に到達してるものと思われます。長はその監視櫓がどうなるか次第だが、悪ければすぐに村まで軍勢が来るだろうから援軍を求める、とのことです」


おおっと、予想された動きではあるけど思ったよりずっと早い。


クレイトさんがリザードマンの言葉を全方位念話で繰り返した。


『思ったより早いし、リザードマンも巻き込む気満々だな。急いだほうが良さそうなので僕のポータルでリザードマンの村へ移動しよう。ただ相手が魔王である可能性も高いし、ポータルで大人数は送れないので、選抜するよ。選ばれなかった者はエテルナ・ヌイでユーリアを守ってくれ。ムアイグラズさん、よければエテルナ・ヌイの防衛を手伝ってください』



今到着したばかりのムアイグラズさんにもお願いしている。


「リザードマンの村へ行くのはリヒューサ、ハギル、カッシオ、ダンジョウ、リュウト、ボクだ。三人ずつしか送れないから、まずはリュウト、リヒューサ、伝令殿を送る」


ヴァルカも飛んできたけど、念話で司令を受けたのか、降りてこず東門の方へ飛んでいった。



「エテルナ・ヌイ防衛はドゥーアくんに任せる」


きびきびと指令を出してくれるクレイトさん。正直、まだ正式に俺やユーリアに譲ってなくてよかったと思う。


「ユーリア、君には死なれては困るからお留守番だ。僕もユーリアから離れるのは怖いが、さすがに連れていけない。ドゥーアさんの言うことをよく聞いて、自分の身をしっかり守っておくれ」


過保護になる理由も知ってるからアレだけど、過保護なクレイトさんには苦渋の判断だったのかもしれない。

表情が歪んでいる。


いつもポーカーフェイスなクレイトさんらしからぬ態度だ。

けど分かる。



「はい、ちゃんと大人しく待ってるよ。だって私は墓守だからエテルナ・ヌイを守らなきゃだしね」


表情が歪んでいたクレイトさんがふっと笑った。



「よし、飛ばすよ。リヒューサ、リュウト、飛んだらまず状況を把握しておいてくれ。僕はポータルを出さないといけないから一番最後になる。それまではリュウトが仕切ってくれ」



あー、なんで俺もと思ったけど、これ試験みたいなものなのかも。

物理的にクレイトさんがしきれない状況になるんだし、ちょうどいいと言えばいいよな、たしかに。


「はい、了解しました」「了解した」


リヒューサと同時に返事をすることになった。



リザードマンの伝令の足元にポータルが開いた。

伝令が消え、しばらくしてリヒューサがポータルに入って消えた。そこからさらに数瞬待って俺もポータルへ入る。


ワープ系のいつもの感覚があって、俺はリザードマンの村へ到着した。



俺は初めてここに来たけど、すごく異世界っぽい景色だ。


沼というか湿地帯にある半島みたいに陸地が出っ張っている場所に集落を作っているっぽい。


湿地帯は浅く歩いて進めるようだ。建物はだいたい高床式になっている。


陸地側には洞窟も見えて、そこは警戒が厳重だ。リザードマンの戦士が歩哨に立ってるぐらいだ。



俺より先に飛んできた伝令はすぐに回りに俺たちが来ることを知らせてくれたようで、どんどんリザードマンが集まってくる。


一人進み出てシューシュー言ってくる。何言ってるか分からないはずなのに分かる。これは間違いなくギフトだな。


「さっそくきていただけたのですね。ありがとうございます。おお、リヒューサ様も来ていただけましたか」


俺の後ろ、ポータルポイントの後ろにリヒューサが移動していたようだ。


「リュウト、私が通訳してやるから指示を頼むぞ」


「はい、了解です。あとそれとリザードマンの言ってることは分かるので俺の言葉を通訳してくれるだけで構いません」


「ん? いつのまにリザードマンの言葉を習得したのだ。まあよい。分かった」


「とりあえず現状の報告を。戦力はこれからさらに何人か来ます。クレイトさんも」


リヒューサが俺の言葉を通訳してくれる。シューシュー言ってて、俺自身が習得して発音できる気がしない。



「今手練の者に偵察させていますが、最新の情報ではゴブリンたちは監視櫓までたどり着き、監視櫓は破壊されたとのこと。敵対する意思はありそうです」


「防衛に向いた地形、近くにありませんか?」


「いえ、見ての通りの湿地帯ですので……」



だよなぁ。こちらから前に出てやるしかなさそうだ。


「とりあえずリザードマンの戦力はどれほどで?」



「今動けるのは戦士が十名、シャーマンが三名、ドラゴニュートが二名です」


ドラゴニュートって確か竜になりかけというか竜っぽいリザードマンみたいなものだったっけ。


「ではドラゴニュートだけこちらの指揮下に入ってもらっていいですか? 他の方は集落の防衛で」



そう話している間にハギル、カッシオ、ダンジョウもやってきた。あとはクレイトさんだけだが、どうしよう。


『あとは僕だけだからテレポートでそっち行くから行動開始してていいよ』


どうしようかと思ったところで念話が飛んできた。助かるけど、今後はこういうフォローなしでも動けるようにならないとな。

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