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襲撃

「え?!」


クレイトさんがいないときにか! いないからか?


「戦力的にケリス殿に任せてもよさそうではあるのですが、襲撃者に魔法使いが複数まじっているらしく……。私の魔法の力があったほうが良さそうなのです。ですが私一人が向かえば万一小屋に同規模の襲撃者が現れた時対応できませんので……」


「そうですね、俺達もついて行ったほうが安全かもしれない。ユーリアも起こしてきますね」


女の子が寝ているところに入るのはなんかアレな感じもするが緊急時なのでそうもいってられない。

強めのノックを念の為してからユーリアを起こしにいった。

が、ユーリアはすでに起きていて出発の準備も終わっていた。さすがだな。


ライトの魔法を教えてもらっていてよかった。

自分についてくる光球を作り出してドゥーアさんの義体について走っていく。

ユーリアも同じようにしている。ユーリアも剣を持ってきていた。まああれだけ戦えるんだから持っていたほうがいいよな。


エテルナ・ヌイの門まで来ると、中で争いの音が聞こえてきた。門の前にはゴーレムはいない。おそらく迎撃に向かったのだろう。


「敵の主力はオークのようです。ナーガもいるようです。ナーガがいるということは後ろにナーガラージャもいるかもしれません」


「オークは分かります。豚みたいな人型のやつでしょ? ナーガってのは上半身が人間で下半身が蛇になってるやつ?」


「いえ、それはナーガラージャですな。ナーガは大きな蛇ですが魔法を使います」


広場の東から打撃音とか聞こえるのでそっちだな。


そちらに駆けていくと、ゴーレムとオークが戦っているのが見えた。


オークは俺のイメージ通りの姿をしていた。凶悪な面構えの豚の頭部に太った人間の体といった感じの。


ただ思っていたよりだいぶと小さい。150cmぐらいか? そんなやつらが棍棒や錆びた大剣を持っていた。


ゴーレムの周りにはスペクターがちらちらと見える他、白くてはっきりと見える幽霊も後ろの方にいる。


「白いのはゴーストで我らの味方です。ただ魔法に弱いので後ろに下がっているのかと」


四体いるゴーレムは強いようで一度に三体ぐらいのオークを相手にしているがまったく下がらない。


「私は義体を後方へ置いてから来ます。のでしばらくは戦闘に参加せぬようお願いいたします。お前たち頼んだぞ」


後半は護衛のスペクターに言ったのだろう。スペクターたちが一瞬はっきりと見えた。


ケリスさんの姿は見えない。やられたとは考えにくいから別の戦線があるんだろう。


ドゥーアさんが戻ってくるまで建物の影で待っていることにしよう。

と思って少し移動したら全く別のところから現れたオークの一団と鉢合わせしてしまった。

どうも回り込もうとしていたようだ。



オークたちがプギャプギャいいながら襲いかかってきた。


正直現実感がなさすぎたせいか、あまり恐怖は感じなかった。

もしかすると体がひっぱってくれてるのかもしれない。

でなければたった一回戦闘の練習しただけで殺意を持った怪物相手と戦えるとは思えない。


剣を抜いて構える。


こちらから斬りかかるのはさすがに無理だ。しかし防御ならしないと死ぬし、反撃もそこまで抵抗はないはずだ。……体は動いてくれそうだ。


武器を振りかざし突撃してくるオーク。


しかしそいつは俺の元に辿り着く前に絶命した。


スペクターが魔法を放ったためだ。

光の筋がオークの体を貫くとオークはばたっと前のめりに倒れた。

後ろにいたやつも何匹か巻き込まれたようで同じように倒れている。


貫通する光の筋……ライトニングか。ゲームの知識があって良かったと思う。でないと驚いてばかりで動けなかったかもしれない。


町の狭い路地での攻防でライトニングは助かる。オークたちは光の筋を避けれない。

一匹がライトニングを食らっても生き延びで突っ込んでこようとしたが、ユーリアが唱えていたファイアボールで絶命した。


死体の焼ける臭いで気分が悪くなったりはしなかった。なぜならオークの焼ける匂いが豚肉を炒める匂いみたいだったから。


一応油断なく構えてはいたがオークたちは誰一人こちらに接敵することなくばたばたと倒れていく。


スペクター強えぇ。ユーリアもすげぇ。オークたちはびびったのか動きが止まった。


オークの後ろから光の矢が飛んできた。飛んできたのは5発でうち3発はスペクターに。残りは俺とユーリアに当たった。思いっきり殴られたような衝撃がくる。


ユーリアが崩れ落ちる。しまった。かばえなかった。

ヘドを吐きたい気分なのを我慢してユーリアの前に立つ。


さっきのはなんだ?


マジックミサイル?


ソウルストライク?


なんだっていい。ユーリアを守らないと。ユーリアが受けたものが俺と同じなら痛いだけのはずだ。次を防げば大丈夫なはず。


光の矢が飛んできた方向をにらみつけると、オークの後ろにオークより大きい、鎌首を上げてる姿が2m近いコブラみたいな蛇がかろうじて見えた。

あいつがドゥーアさんがいっていたナーガか。くそっ、魔法を使う敵がいるって聞いてたのに油断してた。


こっちが崩れたのを見たからかまたオークたちが突撃してきた。


「ふははははははは」


不意に大きな笑い声が響いた。


……この声はドゥーアさん?


そう思ったらドゥーアさんのレイスの姿がすぅっと俺達の上前方に現れた。


「ふははははははははははは」


ドゥーアさんは笑い続けている。それを聞いたせいか、ドゥーアさんを見たせいか、明らかにオークたちがパニックを起こしているのが見えた。


今のうちだ。

剣をいったん鞘に戻し、ユーリアをお姫様だっこで担ぎ上げて、射線が通らない建物の影に飛び込む。

ユーリアならポーションを持っているはずだ。

ユーリアは意識はかろうじてあるものの、自由に動けないといった感じだったが、腰のポーチを指し示してくれた。

ユーリアを座らせてポーチを開けるとポーションが入っていた。

それを取り出し、蓋を開けてユーリアの口元へ差し出す。口を開けたのでポーションを含ませた。


「……ごめん」


ユーリアが意外と元気そうな声で謝ってくる。


「大丈夫か?!」


「うん、大丈夫、ありがとう。油断した」


ポーションの効果はかなり高いようだ。


「俺もだよ。立てるかい?」


「立てる。痛みもなくなった。力も出る。いける」


「よし、行こうか。といってもドゥーアさんが来たからもう終わってそうだが」


そう言うとほぼ同時に向こうから強い光と激しい音が響いた。


戻ってみるとドゥーアさんが魔法でオークやナーガを全滅させていた。オークたちがいたところに浮いている光の玉(?)から小さく発している稲妻に打たれたようだ。


「間に合ったようですね、良かった。ではこれから私の後ろにいてください。ゴーレムたちのところへ行きます」


「はい、分かりました」


俺とユーリアの声が重なった。



ドゥーアさんが来てからは一方的な戦いになった。


オークたちはドゥーアさんが笑うだけでパニックを起こすので一気に戦力外に。


ナーガたちが魔法攻撃を飛ばしてくるがドゥーアさんには効いた様子もない。

ゴーレムやスペクターがその魔法を受けるとやばそうだったんだけどな。


格が違う、という感じだ。実際に先程俺たちが受けた魔法の残り三つのうち二つを食らってしまったスペクターは消えはしなかったものの、戦闘不能になってしまったようだし。


ナーガラージャは見かけない。

見た目蛇のナーガがオークを率いていたとは考えにくいんだけどな。


そう思ってあたりを見回していると、ドゥーアさんの背後から宙に浮いた剣が近づいているのが見えた。

魔法攻撃かなにかだと思って剣を抜いて駆け出そうとしたら、ユーリアに服の裾を掴まれて止められた。


「あれはケリスさんだよ」


ああ、ソードファントムとかいってたか。あれが本来の姿なのね。よく見てみると剣が浮いているのではなく亡霊が剣を持っているだけだった。剣を持った亡霊?といった感じか。


「こっちももうかたがつきそうだな」


ああ、この声は確かにケリスさんだ。

振り返らずそのまま前を見たままでドゥーアさんが答える。


「ええ、こちらはほぼ片付きましたが、どこに行っていたのです?」


「こっちは大規模な陽動だったみたいでしてね。私の方にナーガラージャが来たから退治していました」


「ああ、どこかにいると思ってましたが、すでに倒されていましたか。ではここを片付けたら終わりですな」

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