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魔王カッシオが一歩進み出て、頭を下げて挨拶をする。


「初めまして、魔王のカッシオと申します。リュウトどの配下となります。以後カッシオとお呼びつけ下さい」


なんか魔王だというのにそつなく配下を演じてるな。

よほど父や兄に抑え込まれていたのだろうか?


「なお、そこのダンジョウは我が父の配下のものなのですが、すぐにクレイト様の配下となるでしょう」



「現地人ごときに下るとはいったいどういうつもりですかな? カッシオ様?」


ダンジョウが険しい顔をしてカッシオに問い詰める。しかしカッシオは涼しい顔でその言葉を受け止めたようだ。



「どういうつもりもなにも、我では勝てぬ相手であった、というだけよ。まさか分からぬわけではあるまいな?」


と逆にダンジョウを睨み返した。


「ダンジョウ、お前にとれる手段は二つだ。一つはこのまま逃げ帰り、父に報告すること。我は今父がどこに居るのか知らぬから、こっちでもいいぞ。もう一つは、我とともに下り、配下となるのだ」



「現地人などにですか? カッシオ様、貴方はそれなりに強いお方だと思っておりましたが……」


「本当にそう思うのか? ならばお主は思ったよりも使えぬヤツだった、ということになるな」



二人の言い争いは続いている。クレイトさんは楽しそうにその様子を見ているだけだし、他の参加者には何が起こっているのか分からない、といった感じだ。



「よろしい、ではそのカッシオ様を屈服させたという現地人の相手をさせて下さい。自ら試させてもらいます」


ダンジョウがクレイトさんに喧嘩を売った。カッシオがクレイトさんの方を見る。



「いいでしょう。ですがここは狭いし、私は魔法使いだ。だから貴方がこいつを倒しえたなら、貴方の勝利を認めましょう」


クレイトさんが進み出て、指をパチンと鳴らす。するとヴァルカの寝床であった金貨の山が盛り上がり、金貨でできた巨人の姿が現れた。



「特別製のコインゴーレムです。貴方にこいつが倒せますかな? ああ本気を出して構いませんよ、そちらは結界をはらせてもらいますので」


「ほう、面白い術を使う。付き合ってやろう」


ダンジョウが尊大にクレイトさんの申し出を受けて、金貨の塊に見えるコインゴーレムの前まで移動する。

向き合ったところでコインゴーレムとダンジョウの向かい合う空間が結界に包まれた。



「コインゴーレムは狭いところではなかなかやばいのでね。降伏する際はいつでもおっしゃって下さい」


「戯言を」


ダンジョウがコインゴーレムに届かない遠方で刀を振るう。一瞬後、コインゴーレムの胴体が真っ二つに切り裂かれた。



が、すぐに切り裂かれた場所にコインが集まって傷を塞いでしまった。コインゴーレムにダメージはなさそうだ。

そんなコインゴーレムもダンジョウに当たるはずがない距離で拳を振り上げる。


ダンジョウに向けて振るった拳が、その拳ごとダンジョウに襲いかかる。


いわゆるロケットパンチみたいなもので、腕そのものがちぎれてダンジョウに襲いかかる。



ダンジョウはとっさにバックステップで直撃は避けた。


しかし地面に激突したコインゴーレムの腕を構成していたコインが破裂した感じでダンジョウに襲いかかる。ダンジョウは刀で飛んできたコインをいくつか弾くが、いくつかは体に受けてしまう。


コインゴーレムはまだ足元に広がっているコインを吸い上げているのか、飛ばした腕をいつの間にか再生していた。


あー、これまじでやばいやつだ。

もしかすると浮島で山になっていた金貨もこいつだったのかもしれない。



「コインゴーレムではなかなかダンジョウに致命傷を負わせるのは難しそうですね。長くなりそうだからこっちはこっちで話を続けましょうか」


クレイトさんがにこやかにダンジョウらを無視してこちらに向き直る。



正直、皆ドン引きである。クレイトさんは指パッチン一つであのような強力なゴーレムを創造し、こちらが必死になってようやく押し留めていたダンジョウを翻弄しているのだから。


ダンジョウを煽ったカッシオですら顔色を悪くしているようにも見える。



「ま、まあクレイト様はこんなだから我とて、魔王である我とて従うのだ。分かってもらえたかな? 聖なる者よ」


話を振られた大司教様も顔色を失ってる感じだ。ダンジョウの強さは身にしみてるはずだしなぁ。


「ええ、そうですね。魔の者といえど、クレイトさんには敵わないようで。しかしあなたがクレイトさんを裏切らないという保証はあるのですか?」



カッシオは一瞬驚いた表情をして、その後うんうんを頷き出した。


「そうよなぁ。裏切りとはそういったものよなぁ。しかしな聖なる者よ。我のように裏切りをもたらすものは裏切りというものを熟知しておる。今の我は父を裏切っておる。そしてクレイト様の元におる限り、我の利益は保証されておるのだ。さて、このような状況の場合、お主は裏切るかね?」



大司教という地位を考えれば裏切るという選択肢自体ないと思うんだけど、カッシオはそう説得し始めた。


「クレイトさんからの利益より大きなものを提示されれば裏切るのでは?」



「ふむ、なるほど、確かにそうかもな。しかし我のクレイト様から得られる利益は尋常ではないのだよ。これほどの利益を提供できるものなどクレイト様しかおらぬだろう、と思えるほどにな」


なんだかカッシオはこの短時間でクレイトさんに心酔している感じだ。それほど自らが裏切ったことによるエネルギーの充足が大きかったのだろう。



「それでですね、そのカッシオがこちらにつく条件としてゴブリンたちを攻略しないといけないのですよ。その協力を皆に頼みたくてですね」


クレイトさんがそう言うと、ケリスさんが進み出る。


「ゴブリンですか。理由を聞いても?」


「うん、どうもゴブリンのところにカッシオと同級もしくは格上の魔王が降り立ったみたいなんだ。その魔王を討ち滅ぼす約束でね。これは先程の豪炎竜からも報告を受けているからほぼ間違いないよ」



ドゥーアさんがケリスさんの話を受け取った。


「なるほど。ゴブリンたちはただでさえ混乱しているらしいですから、そこに魔王となるとたいへんでしょうな。わざわざ行かなくてもこちらに来る可能性が高いと思われますな」


「こっちから行くと逆にエテルナ・ヌイが危険かな?」


「はい、戦力を分けるとそうかもしれません。こちらには進撃のための準備も出来ておりませんし、こちらにくるというなら迎えうった方が良いとは思います」



「ふむう、確かに僕たちがいない間にエテルナ・ヌイを攻撃されたら困るねぇ。どうだいカッシオ。迎え撃つ形でもいいかい?」


「はい、もし父なら体勢を整えてからになるでしょうが、知っている限りそれには長い時間がかかるようですし、もし兄ブルトゥスであるなら何も考えずにこちらにやってくるでしょう。私としても急ぎませんので、クレイト様のご都合でよろしいかと」



「ふむ。大司教、こういうことですので、カッシオと、今はどうなるかわかりませんが、ダンジョウですが、魔の者として相容れませんか?」


「そうですね、基本的には相容れません。ですがそちらに害をばらまく意思がなくクレイトさんが監督していただけるのでしたら、聖王教のものを抑えることは出来ます」


「大司教ご本人は大丈夫なのですか? 怪我もされたようですし」


「私のことでしたら大丈夫です。これでも頭は柔らかい方だと思っておりますので。害だから魔の者を排除するだけで害でないなら私は受け入れますよ。まあ頭の固い者もおりますので当面は内密にしていただけるとありがたいですが」

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