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とりまとめ

「リュウトの持つギフトの一つ、リンクが切れておったから動作しておらんかった。そのギフトはこの世界に存在せぬものであったようだからな。だから我がテキトーな、その名にあったものにリンクをつなぎ直してやった」


む? 頑健の方は確かに効果がある感じだったから、【悟り】の方か。そう言えばクレイトさんにも効果が分からないとか言ってたしな。それに何の効果も感じなかったけど、そもそも動いていなかったのか。それが動作し始めた?



「そう、なのか?」


「ああ、またクレイト様に見てもらうといい。我が言っても信用せぬのだろう?」


クレイトさんに見てもらえ、とまで言うのであれば事実なのだろう。



すぐバレる嘘をつくことは協調とは真逆だし、こいつの知能ならその程度は分かっていそうだ。


「そう、か。確認が出来たら、お前は協調したがっていると認める。俺は協調してくるやつを裏切るような真似はしたくないからな。ただ、だからといってお前を信用するかどうかは別の話だ」


「ああ、もちろん。裏切り者がどういう扱いを受けるかぐらいは知っている。だが我には協調しかなかったのだ。裏切りはより強いものにはたいして有効な戦略ではない、と常々感じていたが、それを我が身で感じることになってしまうとはな」



ああ、こいつが裏切りの魔王とか名乗るだけあって、魔王カッシオって裏切りの使いどころをよく分かってる気がするな。

クレイトさんとの戦力比を一瞬で見極めてこちらに下ったんだしな、こいつ。


魔王すら一瞬で屈服させるクレイトさん半端ねーということか。



「またせたね」


俺たちの間に立つように、不意にクレイトさんがワープで戻ってきた。


「ん、うまく中にはいれたようだね。先程のは中に入れるようには作ってなかったし、器として足りてなかったからね。今回のはかなりの余裕をもって作ってあるから、さっきのよりは心地よいと思う」


「私などに対する心遣い、感謝いたします」


カッシオがスマートにクレイトさんに感謝した。……このそつのないところも気に食わないんだよなぁ。


俺が不器用だからというのもあると思うが。



一度ワープポータルで外に出てから歩きで皆と合流することになった。


地下工房は一応秘密みたいだしな。


ここは東門の近くかな? 少し本陣からは遠くの場所に出た。三人で歩いて本陣へ戻る時にオークの一団と出くわした。

今はすでにクレイトさんもいつもの人の姿をしているし、俺の姿も認めたようで、何も誰何せずにすれ違った。



「偵察に行ってくれたみたいだね」


「そういえばオークも確かに見かけたが、クレイト様はオークをも支配しているのか」


「支配はしていないよ。ただ君の言う協調をしているだけだよ」



本陣が見えるあたりまで戻ってきた。おや、ヴァルカがいる。邪魔にならないよう金貨の上で寝ているとか言ってたのに。ということはそれに付き合っていたはずのドゥーアさんも出てきているのかな。


まさかダンジョウが手を付けれなかったから引っ張り出されたとか?



本陣ではダンジョウと幾人かが酒盛りをやっていた。


……なにやってんだ?


と思ったけど、ダンジョウ以外は酒に酔わないケリスさんとアルティナさん、そして少々なら問題ないと思われるオーガたちだけが飲んでいた。



これはあれか。ヤマタノオロチ作戦か?


「ヴァルカさんも早く人化の術を習得しなさいな。でないとお酒、飲めませんよ?」



アルティナさんは酔わないように出来るのに、まるで酔っているかのようにヴァルカに絡んでいた。


困っている竜の顔とか珍しいものを見たよ。結構表情豊かなんだな。



一見和やかに見えるけど、酒を飲んでいない周囲の警戒は本物だった。


まだ見えるだけなのにぴりぴりと感じるほどに。


こんな中で酒を飲んでいられるダンジョウは、なかなか肝が座っているのかもしれない。



「やあ、戻ったよ」


クレイトさんとカッシオとともに本陣へ戻ってくる。皆が一斉にこちらを振り返って、一部は駆け寄ってくる。


「まあ、落ち着いておくれ。問題はない。……ないよね?」



「はい、こちらはレミュエーラが重傷を負いましたが迅速な手当のおかげで問題はありません。他は小さな怪我程度ですが全て癒やし終わっています」


「レミュエーラは大丈夫なのかい?」


ふと見てみるとレミュエーラはダンジョウの後ろに立っていて、座っているダンジョウの頭を木の枝でぽんぽん叩いていた。

……いい度胸してる。トラウマとかなさそうで良かった。



「これはこれは、カッシオ様、ですよね。お待ちしておりました。申し付け通り【話し合い】をしておりました」


ダンジョウがレミュエーラの木の枝をうっとおしそうに払い除けながら立ち上がってこちらを見た。


「うむ、よく抑えたな。その努力に見合った話を持ってきたぞ」


なおもちょっかいをかけようとしているレミュエーラを見て、同情するかのような声でカッシオが言う。



「皆、ありがとう。とりあえず解散でいいよ。大司教様、少々お付き合いいただけますか? あとドゥーアくんとケリスくん、ハギルくんは同席してもらいたい。他にこちらの話し合いに付き合いたい者はいるかな? あー申し訳ないがファーガソンくんにはそちらの後片付けの仕切りをお願いしたい」


「なにやら重要そうですので、出来ましたら私も同席させていただきたいです」



真っ先に手を上げたのはアンソニーさんだった。……アンソニーさん一般人なのに勇敢だな。


「アンソニー様が行かれるのでしたら護衛として私も」


ついでラピーダさんが続いて、そのラビーダさんに付き合うという名目でトレイスさんも名乗りあげた。大司教の護衛もついていくといったけど、大司教が遠慮させてくれた。大司教一人で行く、と。



「では同席するものは着いてきておくれ。他の者は解散、おのおのに任せるよ。グーファス、ユーリア、ファーガソンくんに協力してやってくれ」


「はい、分かりました。レミュエーラ、もういいだろう? こっちにきなさい」


レミュエーラはまだダンジョウをいじり足りない、といった顔をしていたけど素直にグーファスに従ったようだ。ユーリアはファーガソンさんの後ろをついていく。



「では俺たちは引き上げます」


タルバガンさんが俺に頭を下げてきた。


「ええ、いろいろありましたが、今後もよろしくです。また報告します」



「ヴァルカ、いったん君の寝床を借りるよ。適当な場所がないんだ」


「分かりました。出入り口はこのヴァルカが見張りましょう」



「おお、凄まじい量の金貨ですね」


「金貨に興味があるのかい? カッシオ」


「金貨そのものにはあまりありませんが、リソースとして優秀なので」


「ふむ……」



金貨の山には金貨だけでなく金製のあらゆる物が埋まっている感じだった。


そこからクレイトさんは金の椅子を取り出し、ついてきていた大司教の後ろに設置した。


「どうぞ、大司教様」


大司教は驚いたような顔で


「え? いえいえ、これに座れるのはクレイトさんだけでしょう? 私にはもったいない」


と固辞していたけど、クレイトさんの御老体を立たせたままにというのは、という言葉に説得されて金ピカの椅子に座った。



まあそれはともかく、皆が集まったところで、クレイトさんの話が始まった。


「まず模擬戦中止になった理由の落下物ですが、あれは豪炎竜でした。空で魔王と交戦したようです。幸い生きておられたので、今はリヒューサとともにリザードマンの村へ癒やしに行っています」


そう言った後、視線をダンジョウへ移し、カッシオに移動させた。


「そしてご存知の通り、そこのダンジョウは魔王の配下、魔属です。しかし彼は我々の味方になるでしょう」



ダンジョウが目を見張り、やはりカッシオの方を見た。


「ここにいる彼は、魔王です。ですが彼は我々の軍門に下りました。リュウト配下となります」


え? そんなの聞いてないんですが?



周りもさすがにざわめいた。


「魔王を配下に?」「リュウトさんすごいな」「一体何が起こったんだ?」


ごもっともな疑問がわきあがっている。俺にだって答えられない疑問だし。

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