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話し合い

皆がこちらにも気づいた。皆、何が起こっているのか分からないといった表情だ。



ハギルが本陣にきた。


ダンジョウが体をずらした。


ハギルも目の前にいるのがケリスさんと同レベルにある敵だと気づいたようだ。


そのおかげでうかつに動けなくなったようだ。



「私は魂の色が見える。今のお前の色はあの魔の者と似た色だ」


少なくとも中身は別人であると気づいてくれたようだ。


「すり替わったのならリュウトさんを返せ、体を乗っ取ったのならすぐ出ていくといい」



『ふむ、すなわちこの女にはこの者は殺せない、ということか』


「いったい、何を言ってるんです?」



俺はうろたえたような声を出した。こいつ、ごまかすつもりか。強行手段は取れないとふんで。


『なかなか面白いな。どうやってこの女を裏切らせようか……』


ラピーダさんを惑わすつもりか。



ラピーダさんの力が多少強まった。ぶっちゃけ決められた関節が痛い。


『ふむ、いい記憶を見つけたぞ。なるほどな。これでいくか』



「我につけ。褒美にライルの居場所を見つけてやろう」


俺はとんでもないことをラピーダさんに囁いた。



「!? くっ」


明らかにラピーダさんが動揺した。一瞬極めていた力が緩み、首につきつけられた短刀もわずかに離れる。


今の俺にはそれで十分だったようで、ラピーダさんから逃れ、魔将ダンジョウの前に飛び出す。



『ダンジョウ、ごまかせ』


飛び出した俺を大振りで切ろうとする。中身が俺だったとしてもなんなく躱せそうな一撃だったので余裕で躱し、俺は本陣から離れようとする。


ラピーダさんは俺を追いかけようとしたけどダンジョウによって阻まれたようだ。



「ラピーダさんがおかしくなった!」


俺は叫びながら本陣から離れるように走る。



『まさか気づかれるとは思わなかったが、おかげで疑心暗鬼を振りまけたな。後々やりやすくなるだろう。あとはダンジョウだが、どうするか』


魔王の思い通りのまま事が進んでいるようだ。どうしたらいいんだ。どうにか体を取り返せないだろうか。



「バインド」


不意に魔法が発動した。俺の周辺に何かが漂ったかと思ったら体の自由が奪われたようでそのまま転倒した。


『な? どこから?』


俺の中の魔王にも気づけなかったようだ。俺はと言えば、俺もまったく気づけなかったが、予想は出来る。



『急に君の声が聞こえなくなったと思ったら本陣の方が混乱しているようだったので慌てて戻ったのだが、いったいどういうことなのかな? 答えられるなら答えてほしい』


クレイトさんが戻ってきてくれたようだ。聞こえなくなったって、今の俺の考えも読み取れてないのかな? どうもそうっぽい。乗っ取られた上に今は物理的にも動きを止められているから、どう伝えればいいんだろう。


『くそ! なんだこいつ、存在感がまったくなかったぞ。おい、ダンジョウ、なんとかしろ』



本陣の方から爆発音が聞こえる。俺がいなくなったからダンジョウが本気でも出したのだろうか?


となるとこっちに来る可能性もあるな。


『まったく声が聞こえないね。何か遮断でもされているのか、気絶しているとか? もし消滅してるとかだったら、この体を動かしている存在は許せないねぇ』


またピンチだ。クレイトさんが俺が消滅したと判断したら、魔王もろとも体を吹き飛ばされかねない。



『どうしたものか。魔力からして相当強いみたいだが。まずは入り込むか?』


入り込むってどういうことだ? クレイトさんの体を奪うってことか?



「待った待った。リュウトは生きている。体を借りているだけだ」


「ほう、そうなのかい。で、そのリュウトから体を借りていると主張する君は誰なんだい?」


そういってたぶんクレイトさんが俺に触れずに立たせた。


念動力とかその類のものだと思う。



「それも含めて話を二人だけでしたい。協力願えないだろうか?」


何を企んでいるのか分からないが対話を求め始めた。


「……ふむ、向こうで暴れているやつを止めたら聞いてやってもいい」



『ダンジョウ、殺すな。【話し合い】でもしておけ』


そう、中のやつが念話を飛ばすと確かに向こうでの気配が動かなくなった。どうなっているか動けないので見えないけど騒動は聞こえなくなった。言われたとおり話し合いを始めたのかもしれない。


「まあ、いいだろう」



「こちらも我々が帰ってくるまで動かないように言った。さあついてきてもらおうか」


たぶんユーリアやケリスさんとかに念話を飛ばしたのだろう。


そして俺の足元にポータルが開いた。



気づくと俺は見知らぬ、暗い部屋にいた。

それなりの広さがあり、本棚や机などがあるけどベッドはなかった。


「ここは昔、僕の拠点だった場所だ。人が容易に近づける場所ではないので条件にあっているだろうし、逃げることもできない」



人が近づけないと言ったはずなのに人影が近づいてきた。


俺の中の魔王も警戒している。



「心配しなくてもいい。自律型の義体だ。まあ簡単に言えばより人に見た目が近いゴーレムだ。ここの管理を任せていた」


以前のドゥーアさんやケリスさんの義体より人形っぽい義体が、椅子を差し出してくれ、俺が座る。クレイトさんも向き合った形で座った。



「で、話とはなんだい?」


「ああ、貴様、我らと同じ魔属だろ?」


おおう、いきなり核心をついてくる話題だ。けど何故こいつがクレイトさんに気を使ったのだろう?


そういう話をしたくないのはクレイトさんの方だろうに。



「魔属だったこともある、が正しいね。過去は確かに魔属でもあったが、今は魔属でもアンデッドでもない。属で言えばね」


そう言って、クレイトさんは見た目の幻術を消して骸骨の姿に戻った。



「ほう、そんなことが可能なのか。まあ可能なのだろうな。確かに魔属ではないとも言えるようだ」


「属がついてると不便なことも多いのでね。解除させてもらった。しかし過去魔属だったことは否定しないよ」


そう言いつつ、近くまできた義体をクレイトさんの横に跪かせた。



「さて、こちらのことは話した。君のことを教えてもらおう。それとリュウトくんに体を返してやってほしい。体はこの義体を使うといい。人間の真似事ぐらいはできるようにしている」


「移動してやってもいいが、この人間がどうなっても知らんぞ?」



「どういうことかね? 返答次第では……」


「待てって。我自身はこいつをどうこうする気はまったくない。我の体質の問題だからな」



「体質、というと属性かね?」


「ああ、貴様の属性は不死だったようだな。しっかり精査すれば俺の属性も貴様なら見えるんじゃないのか? 我がこの体から出たら貴様はともかく人間に対しては影響があるかもな」


「ふむ、まぁ君のその属性とやらを見させてもらうとするよ」


しばらくクレイトさんの動きが止まった。俺も微動だにしない。俺の声は相変わらずクレイトさんには聞こえていないようだし、影響とやらがどんなものか知らないが、はやく体を返してほしい。



「ふむ……、なかなか面白い属性のようだね」


「だろ? それでもいいなら移動するぞ、どうする?」


「ああ、構わないよ、移動してくれ。それでリュウトがどうこうなるということはないだろう」


ん? 俺だから大丈夫なのか?


『よお、体悪かったな、返すぜ』



俺の体を無断で乗っ取ったくせに出る時に謝ってきた。

なんなんだろう、こいつ。


俺は椅子から立ち上がり、跪いたままの義体の肩に手をやる。



ふと重力を感じる。今まで魂だけでふわふわ浮いていた感じだったのだけど、文字通り地に足がついた感じだ。


「おー、動ける」


「返したぞ。……貴様なんともないのか?」


義体が立ち上がる。

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