表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/137

ダンジョウ

無視された格好の冒険者たちの前衛も何もできずこちらに向かって走ってくる。


リヒューサの飛びかかりはオーガ数人がかりだったが盾で受け止めることが出来た。



おー、リヒューサの目がひかってるよ。


間近に迫られると怖ぇ。


って言ってる場合じゃないのでライトニングをリヒューサに打ち込む。


ユーリアはマジックミサイルだ。味方が近いからファイアボールは怖いもんな。レミュエーラは矢を放とうとした。が撃てなかった。



思わず目を狙ってしまったようだ。しかしこれは模擬戦で、相手は知り合いだ。だから撃てなかったようだ。


俺の魔法は若干の手応えがあった。俺の魔力でもリヒューサに通じたようだ。アクセサリで魔力を上げていてよかった。



リヒューサが鎌首をもたげて、ファーガソンさんに向けてブレスをはく。


完全に指揮官狙いだ。とっさにグーファスが盾をかかげてファーガソンさんを守る。



俺とユーリアはその頭を狙ってマジックミサイルを撃つ。


ダメージはなかったようだけどそれを嫌がったリヒューサが下がってくれた。慌ててグーファスとファーガソンさんに駆け寄る。



グーファスは盾をかかげていたとはいえ、完全にブレスに包み込まれたため、かなりのダメージを負ってしまっていた。

すぐさまポーションを渡す。ポーションを飲む元気は残っていてくれたようだ。


「ありがとう……ございます」


今は礼なんていいって。

ファーガソンさんの方は無事グーファスに庇われたようであまりダメージは受けなかったようだ。けど念の為ポーションを渡す。



足を止めての殴り合いになるというイメージだったけど、自由に飛びかかってくる竜、怖いな。


実際機動力あるんだから足を止めて殴り合う義理はリヒューサにはないわな。



本陣が襲われたためかまだ攻撃を続けているゴーレムたち。


本陣から離れた位置にあるストーンゴーレムの陣地へまた飛びかかろうとしたリヒューサを今度は追いついてきた冒険者前衛とハギルたち異種族部隊が止めることが出来た。



動きを阻まれたリヒューサはいったん冒険者たちをはねつけるためか、回転尻尾アタックをしかける。

今回は誰も当たらない。


当たらないのを見て、リヒューサは吠えた。


その瞬間冒険者たちがびくっとして動かなくなった。



俺のゲーム知識がそれが何故なのか教えてくれる。


ドラゴンロアーだ。


ドラゴンの吠え声には魔力が込められていることがあり、その声を至近距離で聞くと動けなくなるというやつだろう。


ドゥーアさんのリディクルみたいなものだな。皆の動きを止めて悠々とリヒューサは呪文の詠唱を始めた。



それとほぼ同時に空が光り、赤いものが数個落ちてくる。うち一個はどうもこちらに落ちてくるようだ。



「うわぁ~!」


おとなしく観戦していた子どもたちが声をあげる。それは頭上すれすれかと思えるほどの高度でエテルナ・ヌイを飛び越え、東の敷地外へ落ちてきた。


すさまじい衝撃音と砂埃が東門から入ってくる。


他にも落ちてきていたがそれらはかなり東に落ちたようだ。



リヒューサがメテオでも唱えたのかな? と漠然と考えていたけどさすがにそんなことはないよな。皆、騒然としている。


リヒューサがなにか気づいたかのように、落ちてきたものの方向へ飛んでいく。もう模擬戦どころの状況ではないと判断したファーガソンさんはリヒューサを無視して皆に集まるよう指示を出した。



『しばらくリュウトとファーガソンくんに任せる』といってクレイトさんが自分で出したウッドゴーレムに乗ってリヒューサを追いかけていった。


「なんだったんだ?」


冒険者達や異種族たちが本陣へ集まってくる。不意の戦闘中断で浮足立ってる、というか不完全燃焼のようだ。


「先程見ましたように、師クレイトがリヒューサとともに検分に行きましたのですぐに詳細が分かるかと思います。また落ちてこないとも限らないので引き続き警戒をお願いします」


俺がそう説明している間、ファーガソンさんは怪我人は今のうちに治療を受けるようにとの指示を出していた。さすがだ。



治療のためモーガンさんと大司教、大司教とウッドゴーレムに相乗りしているためアンソニーさんも、本陣へ来てくれた。


モーガンさんは治りきっていないグーファスを癒やしてくれた。こちらに運び込まれてきたオークはリヒューサの尻尾で跳ね飛ばされて、かなりの重傷を負ってしまっていたようで、ナーガラージャの治療術では間に合っていない様子だった。


それを見て、大司教がオークに癒やしを与えてくれた。



初めてみた人間の老人がオークに癒やし、しかも素晴らしい癒やしを与えたのを見て、異種族の皆が驚いていた。


ぶっちゃけ俺も驚いた。



どことなく宗教者は異種族に対して差別的だと考えていたからだ。


しかし大司教にはそのありきたりな枠には当てはまらない人だった。

リザードマンもモンスターではないと認めていたのは確かだけど、オークは竜とはあまり関係がないはず。

普通に情け深い人のようだ。



癒やしを与え終え再びゴーレムに乗りこんだ大司教が突然叫んだ。


「魔の気配がします! 皆さん警戒してください」


最初はみんな「ん?」と言った感じで反応が薄かったけど、大司教の護衛たちは戦闘警戒の姿勢になっている。


アレックスさんは青ざめて子どもたちの方、正確に言えば奥さんと娘がいる方へ走っていった。


ビルデアさんもそれに続く。



それを見たおかげか、ケリスさんとアルティナさんとグーファスはファーガソンさんごと俺らを守る位置へ、ファニーウォーカーは大司教とアンソニーさんを守るように動いた。


ハギルたちは俺らを守るように囲んでくれ、シャイニングホライゾンは子どもたちの守りのために動いてくれている。



『こんなところに我らを感知できるやつがいるなんて聞いてねぇぞ』


ふと念話らしきが聞こえた。誰だ? 知らない声だ。



『お、聞こえた? 我だよ我々、もう少しでつくからあいつの相手してやっててくれよ』


誰からだ? このオレオレ詐欺みたいな声は。あいつって誰だ?



「それはわたくしでございます」


いきなり目の前に見知らぬ人物が出現した。俺の周りには大勢いたにも関わらずだ。



そいつはこちらでは珍しい黒いラメラーアーマーを着込んでおり、手には日本刀のような武器を持っていた。顔は兜と面宛のせいでよく見えない。


すぐに俺とユーリアをカバー出来る位置にケリスさんが滑り込むように来てくれる。


アルティナさんは無詠唱で俺とユーリアになにかの魔法をかけてくれる。


グーファスとレミュエーラですらユーリアとその謎の人物の間に立ちふさがってくれた。



「申し遅れました。わたくし魔王カッシオ様の導きによりこちらに赴きました、魔将ダンジョウと申すものです。以後お見知りおきを」


そう言いつつ、武器を構える。



「まあ、すぐにお別れすることになるかとは思いますが。この世界から」


そう言って一番近くで立ちふさがっていたレミュエーラに武器を振った。


「レミュエーラ!」


ユーリアの叫ぶ声が聞こえた。


レミュエーラが吹き飛び、その首から血が流れているのが見えた。すぐ近くにいたグーファスがカバーに入って首が飛ぶのは防いたが、一瞬間に合わなかったようだ。



「モーガン!」


ファーガソンさんの癒やしの指示の声が聞こえる。また各自で先程魔将ダンジョウと名乗ったものを取り押さえるべく、周りの皆が動いた。



だけど俺は動けなかった。目の前で起こった凶行で呆然としてしまったのもある。


『ふう、ようやくついた。それじゃいただくぜ』


という声が聞こえてから一切体を動かせなくなったためだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ