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ラカハイ

「ああ、そういうことですか。パティルスライムを活性化する方法を偶然見つけたんですよ。よければ町に行ったときにその方法を使いましょうか?」


パティルスライムって確かにクレイトさんも言ったよな。クレイトさんと同じ名前じゃん。どういうことだ?


『それは昔生前の僕が作り出したスライムだからだよ。そこらにいた野生のスライムでは処理が追いつかなくなっていてね、当時』


そういうことか。そしてクレイトさんが名前を名乗りたがらないのはこれのせいかもしれないな。


「おお、それはもらうよりありがてぇなぁ。もうたくさん持ってるだろうが、報酬はそれなりに出ると思いますよ」


「ありがたいね、無いよりあった方がいい」


「よっしゃ、それじゃ町へ向かうとしますか。今から出たら野営に適したところで泊まれるし、そこなら町までそう遠くないから明日から町で活動できるようになりますし」


「それはいいですね。では行きましょうか」


その言葉に合わせて冒険者たちが席を立ち、さっと散る。さすが優秀な方たちだ。行動が早い。


ユーリアは食器を片付けようとしてたので呼び止めた。


「それはあとで俺と一緒に片付けよう。今はクレイトさんを送ろうか」


服をもらえることになってテンションが上がってるのか返事の声は大きかった。


「うん、わかった、そうしよう」


『服のところに鉄の指輪を置いてあるからそれは早めにつけておいておくれ。それをつけていたら僕がどこにいても念話ができるようになるからね。それに護符を兼ねてるからいろいろと役立つと思う。あと念の為の剣を置いていくよ』


あ、はい。分かりました。お出かけになったあとに指輪はすぐにつけることにします。剣は使うことがないように祈りますよ。


『ドゥーア殿がいるから心配はしていないけどね』


心配性だな、クレイトさんは。でも何かを守るのなら心配性の方がいいのかもな。


小屋から出ると、馬車を引いていた馬に食べさせていた飼葉のたるをロメイさんが馬車に積み込んでいるところだった。アレックスさんが馬車を操るようだ。ビルデアさんとモーガンさんは馬車から離れたところでキョロキョロしている。ジャービスさんはすでに馬車の荷台に乗って飼葉の積み込みを手伝っているようだ。


クレイトさんがかなり軽やかに御者席のアレックスさんの隣に座った。ロメイさんも馬車の荷台に乗り込んだようだ。馬車の周りに居た二人もなにか合図を出していた。


「ではユーリア、いってくるよー。リュウトくん、よろしく頼むよ」


クレイトさんがユーリアの方を見て手を振った。


「いってらっしゃーい」


ユーリアも大きく手を振り返す。馬車がだいぶ離れるまで振り続けていた。



クレイトさんが町へ出かけた日は特になにもすることはなかった。


鉄の指輪をつけて、体をふいて、今まで着ていたものを水で洗って、干した。いただいた服は少々大きかったがなんとかなるレベルでよかった。


おいてあった剣はぱっと見シンプルな剣だった。

けど、これたぶん魔法の剣だろう。

だって鞘から抜いてみたらうっすらと刀身が光ってるんだもの。

鞘をつけるため用であろうベルトもあったので携帯に困ることはなさそうだ。


鉄の指輪は見た目本当に簡素な装飾もあまりない鉄製の指輪だった。

けどこれ護符の役割もあるって言ってたけど、どんな効果なんだろうか?

ゲームなら魔法防御とかが上がるとかありそうだけど。


誰も居なくなったのでドゥーアさんは義体から抜け出し本来の姿になっている。

義体は万一のため椅子に座らせっぱなしにしておいた。



夕食はユーリアと一緒に作った。


ユーリアも新しい服に着替えていた。

今までは貫頭衣とTシャツみたいなのに長ズボンといった一般村人スタイルだったけど、今回は上はさほど変わらないけど、下がズボンから長スカートになっていた。

上の服にも簡単ながらフリルみたいな装飾がついているし、すごく女の子っぽくなった。


「可愛くなったね」


ユーリアは顔を真赤にしてほんと?と嬉しそうに訪ねてくる。


「ほんと? ほんと?」


褒められたのが嬉しかったのか新しい服でテンション上がっているのか、俺の前でくるりと回ってみせる。

スカートがふわっとあがる。


「これ、やってみたかったんだ。今までスカートなんて着たことなかったから。なんかスースーする」


「そうか。まあすぐなれるさ。さあ、料理しようか」


フライパンも油もあったので適当な葉野菜や玉ねぎを切ったものと塊のハムから切り取ったものを炒めた。胡椒っぽい香辛料があったのでそれも使わせてもらった。

ユーリアはこんな料理は知らないと言っていた。

贅沢品だからかこっちにはないものなのかは分からない。


味は刺激的だった。


香辛料がちょっと多すぎたかも。

贅沢だろうから次回からはもっと少なくしよう。

けど前の世界にいたときに食べてた野菜炒めみたいな感じで懐かしかった。

まだ数日しか経ってないはずなのに……。ユーリアは変わった味だと言いつつ、全部食べてくれた。


材料を漁ったときになんか芋みたいなのもあったから次はそれを使ってみたいと思う。

大量のチーズもあったし、今からヨダレが出る。

いやぁアレルギーを気にせず食べれるって幸せだなぁ。


完全に夜になったらドゥーアさんがライトの魔法で小屋の中を明るくしてくれた。今まではクレイトさんがしてくれていたようだ。一応ろうそくも持ってきてもらったものの中にあったけど使うのは緊急時だけになりそうだ。


ライトの魔法はユーリアも使えるらしく、便利だからドゥーアさんにライトの魔法を教えてもらった。

ドゥーアさんも教えるのうまいな。

アンデッドは教師に向いてるとかあるのかな?

まあたまたまだろう。

それにライトぐらいの魔法ならこの体が元々覚えていたという気もする。


一通りできるようになってからドゥーアさんからエテルナ・ヌイのことを教えてもらった。


エテルナ・ヌイはここら一帯を治める王国の南北をつなぐ交通の要衝だったらしく、栄えていたそうだ。また東側が異種族の領地らしくその防衛の意味もあった。

そんな町だったから商人が多く訪れ、だから冒険者も多く、防衛力も高かった。

クレイトさんが向かったラカハイは、エテルナ・ヌイが町だった頃は鉱山の開拓村だったらしい。


様々な鉱石が豊富にあったため順調に人口が増えていっている途中だったそうな。

おそらくエテルナ・ヌイが滅んでしまったために、ラカハイが代替として栄えたのでは?とのこと。

滅んだとはいえアンデッドが徘徊する場所になったため異種族からの防壁としての役割はずっと続いているらしい。

たまに今のエテルナ・ヌイにも現れてるので防衛しているそうだ。


ユーリアからは今のラカハイを教えてもらった。今のといってももちろんユーリアが住んでいた一ヶ月前のことだけど。


ラカハイはさっきドゥーアさんが言ったとおり鉱山の町で山を半分くり抜いたかのように出来ているらしい。

だから高低差が激しいし階段が異常に多いので、他のところからは階段都市と言われてるそうだ。

それを聞いたドゥーアさんは


「あのラカハイが都市を名乗るまでになってるんですな」


と感慨深げに頷いていた。


また階段が多いためか伝令と呼ばれる職があり、町の中を走り回っているらしい。

伝令と言ってもメッセージを伝えるだけでなく、手紙や小物などなら運びもするらしい。

ユーリアたち孤児も多くがその伝令をやっていたそうだ。

ジャービスさんは元々冒険者だったが孤児と接しているうちに世話をしてくれるようになったらしい。


ラカハイには四つのギルドがあるらしく、一番大きいのが採掘ギルド。大きな本部があるらしい。

二番目が商人ギルド。

あと鍛冶ギルド、冒険者ギルドだそうだ。


冒険者ギルドは乱暴な人が多いのでそこに伝令に行くのはいやだったらしい。

冒険者ってそんなに柄が悪いのかこの世界では。

最初に出会った冒険者が黄昏の漂流者で良かった。

でもあの人たちを基準にしちゃいけないってことね。


「ケリス殿とかみたいに良い方々も多いのですがね。なんというか格が下のものほど柄が悪かったという覚えがありますな」


ドゥーアさんの補足でなんとなくだけど、淘汰の結果かなとか思った。

生き残る冒険者ほど礼儀が分かっていて、分かっていない者は良い仕事にありつけず消えていく、みたいな。

まあ全部が全部そうなわけはないと思うけどさ。


ユーリアがうとうとし始めたので、このへんでお開きとなった。明日はクレイトさん抜きで見回りだ。


と思ったら夜中にドゥーアさんに起こされた。


「どうされたんですか? こんな夜中に?」


「どうもエテルナ・ヌイに襲撃者がきているようです」


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