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ゾンビ化と屠殺

ユーリアはどこかなと近くで作業していたゴーレムに聞いてみた。


ゴーレムは作業を一旦とめてグーファスの作業場を指差してくれた。


ゴーレム、というかその中にいるゴーストに礼を言って、作業場へ行く。



作業場では先程持ち込まれた大きな猪をハギルが解体していた。


それの見学をユーリアはしていたようだ。隣にはケリスさんが立っている。


すでに半分ほどが解体され肉は他のナーガラージャが持っていっている。


「本当にこの鉄製の肉切包丁は素晴らしい。スパスパ切れて実に捗る」


なんかハギルが喜びの声を上げながらどんどん解体していっている。



俺に気づいたケリスさんが説明してくれた。


「どうやらハギルたちが今まで使っていた包丁は石製だったようです。それでは厳しいだろうということでグーファスが作った肉切包丁をハギルに貸したのですよ」


なんとナーガラージャは石器を使っていたらしい。

……たしか東の地では金属製品はゴブリンが独占してるとか言ってたしなぁ。

さすがに武器まで石器だと困るだろうから武器に優先して金属を使ってたんだろうな。



「あ、リュウト。ハギルすごいんだよ、あっという間に肉になっていくの」


「確かにハギルの捌きは素晴らしいです。下半身が蛇体だからかあのような巨大さでも姿勢が楽に取れるようです」


グーファスもこちらにきてハギルの捌きの解説をしてくれる。

ああ、確かにあんな風には人間にはできないな、といった体勢でちょうど捌いていた。



捌いていたハギルがこちらに気づいたようで作業を中断してこちらにくる。


「こちらの肉がこれの最上でございます。クレイト様にお渡しいただきたく」


全身血まみれでにこやかに肉を差し出してくるハギル。片手には包丁も持っているのですごく怖い。


ケリスさんがちゃんとそんなハギルと俺らの間に入れる位置に移動していた。

グーファスが慌てて葉っぱを取ってきて代わりに受け取る。



「ありがとう、ハギル。たぶん私達も食べることになると思うのだけど、いいかな? もちろんおとーさんにも食べてもらうけど」


ハギルが渡した位置は俺とユーリアの中間だったのだけど、ユーリアが先に受け答えしてくれた。

役目としては俺がした方がいいんだろうけど、ここの最上位はユーリアだから、ユーリアが受け答えした方がハギルにはいいだろう、と思う。



「もちろんです、ユーリア様」


血まみれでユーリアに対してもハギルは礼をした。慇懃無礼には見えない見事な礼だった。



「ありがとね、ハギル。……えっと、それからヴァルカやレミュエーラも」


「ありがとうございます、ユーリア様。こちらからヴァルカにも伝えておきますが、レミュエーラへはお願いしてもよろしいですか?」


後半の問いかけは俺に対してだった。



「ああ、ハギルにレミュエーラとの接点はないだろうしね、俺が代わりに伝えておくよ」


「私が直接するよー?」


それもそうか。



「明日はまたみんな頼むよ」


グーファスやハギルたちナーガラージャから大きな返事が届く。グーファスは大丈夫としてハギルたちの忠誠心?みたいなのには心配してたがどうやら大丈夫っぽいな。



「そういえば、狩ってきた生き物はゾンビにならないの?」


グーファスが驚いた顔をしている。


「あれ? リュウトさん解体したことないんですか? あ、そうか。町に住んでいたら解体とかしなくていいですものね」


内心まずいこと言ってしまったかと思ったけど、グーファスは一人で納得してくれた。



「小さい生き物、そうですね、うさぎや野鳥程度までならゾンビ化はしません。大人だと大きな動物でも子供でそれぐらい小さなものなら同様です。ゾンビ化する大きさのものは頭を落とすか内蔵を出せばゾンビ化しません。結界をはるか、聖別された武器でとどめを刺すのもありです。これが一番確実ですね。

頭落としや内蔵抜きだと、殺した瞬間にゾンビになることがまれにあるので。まあゾンビ化したってもう管理化にあるから怪我とかすることはあまりありませんが、さすがに一度ゾンビ化してしまったものは食べられないので損をしますね。大きな獲物を襲って食べる肉食獣とかはそのせいか内臓から食べ始めます」



「なるほどね、だから肉屋さんが聖別化してる包丁とか持っているのか」


「ええ、そうらしいですね。肉屋まで飼っていた家畜を持っていくのも村の仕事ですからね。それを肉屋が屠殺して肉にしてくれるというわけです。村でも屠殺することもありますが、だいたい村にいる聖職者に結界を作ってもらって止め用の武器を聖別化してからになりますし、聖職者がいない場合、例えば狩り中とかなら小さめのものなら頭を落とす、大きくて無理そうなのはなるべく早く内蔵を取り出す、という感じですね」


「なるほどね。だからヴァルカたちも内蔵出してからこの猪を持って帰ってきたわけか」


「そうですね。血抜きもちゃんとされていましたし、内臓も新鮮なままフリーズされていたので美味しく食べれそうです」



そう説明してくれたグーファスから肉を受け取って、ユーリアを連れて休憩処へ戻った。


すでに変身は終わっていたようでスカートを着たレミュエーラがくるくるまわって遊んでいた。


「若いのぅ」



なんかしみじみと見た目幼女のリヒューサがつぶやいたのをはっきりと聞いた。


「お、リュウト、ユーリアもおかえりー」


二度目だから慣れているようでちゃんと危なげなく走ってきた。



「おー、随分慣れたな」


「足を曲げるところ違うからこの前慣れるまでたいへんだったんだよ」


そうだろうな。確か鳥の逆関節な膝に見えるところが実は足首みたいなものらしいんだっけ。



「今から慣らしておけば明日も役立てると思うよ。今日このままで狩りにいきたいぐらい」


「ははっ、頼りにしてるけど今日狩りに行くのはやめとこうな。万一怪我とかかされたら困る」


そうだよねー、って感じで頷きながらレミュエーラは慣れてない人間の足でステップを踏み出した。

セイレーンって踊りもうまいのか? とても慣れてない感じはない。

レミュエーラもなんだか多才だな。つられてユーリアも踊りだそうとしたけどうまくステップが踏めないようだ。

ユーリアには残念ながら踊りの才能はないようだ。

まー俺なんか元の体の時はスキップすらできなかったんだけどな。



ユーリアの踊りになってない踊りを見てにこにこしているクレイトさんだったが、先にユーリアとレミュエーラとで帰るように言われた。


「わかった。レミュエーラもお風呂に入れるね」


念話で指示をもらったようだ。レミュエーラも水浴びはしているようだが、狩りもしてきたしで今の孤児院の基準でいえば衛生的に不合格っぽいしな。


羽に対して石鹸はたぶん悪い影響を与えるだろうから普段は石鹸が使えないのもあるだろう。


「僕はゴーレムたちを見てから一人で帰るよ。あ、夕食はいらないと伝えておいてくれ」


「はい、わかりました」



今まで見えなかっただけだろうけどスペクターが二人見えた。ケリスさんは最近ハギルたちにつきっきりだから来れないようだ。


「それじゃ小屋に帰りますね。よろしくお願いします」


護衛のスペクターにもお願いして、三人で小屋を経由して屋敷に戻った。



屋敷でみんなで風呂の用意したけどレミュエーラも手伝ってくれた。

いつの間にかクリエイトウォーターとピュリフィケーションを覚えていたようだ。


フリーズを使えるんだし魔力的に使えて当然だけど少々びっくりした。しかも結構強力だ。この調子で魔力を上げていけば変身の魔法を自力で使えるときが来そうだ。



レミュエーラは一度この屋敷に来てるけど、そのときは来ただけって感じだったから複数の人間に囲まれて生活ってのは初めてなのでいろいろなところでいちいち感心していた。


しかしレミュエーラはしっかり子どもたちに溶け込んでいた。適応力が高くて何よりだ。

異種族と言っても結局体の差がなければあとは教育ってことなんだと思う。

まあレミュエーラのセイレーンは半分人間だからってのもあるのだろうが。



皆が風呂に入り終えて落ち着いたところでクレイトさんが帰ってきた。

いったん全員集められて明日の打ち合わせを軽くして、この日は終わった。

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