何処か間接が外れた日①
この物語はグロックという男の悲しき物語。
グロックには一人娘がいる。名はペェネシア。
彼女は母親の事は覚えていない。
だからグロックが彼女にとっての唯一の家族であり、最も大事な存在だった。
ペェネシアが生まれてちょうど1才となったその日。
誕生日という最高の日であるはずのその日に災悪が起きた。
それはcitrusと言う小さくも美しい町での出来事だ。
この町は他の町から比べると田舎という雰囲気の漂う所だ。
近くには大きな川が流れ、毎日旬になると新鮮な魚がとれる。
また町の外は緑豊かな草原が広がっており、少し離れた森の中ではキノコや山菜がよく採れた。
そんな町で人々は優雅に暮らし、とても平和であることがうかがえる。
だが他の大きな都市からは離れている場所。
最近はガラの悪い連中が幅をきかせ、町を荒らして回っているというウワサ話もある。
そんな奴等がいつこの町にもやって来るとは限らない。
「北北東、異常無し……」
その為警備員の者たちは町の東西南北に設置された監視塔にて日夜怪しい奴がいないか真面目に取り組んで――
「よしゃっ『フォーカード』!」
「うわマジかよ『ストレート』より良いやつ出しやがった」
「へへっ残念だったな『ロイヤル・ストレート・フラッシュ』だ」
「なん……だと?」
「んな良い役が出てたまるか! そいつぁイカサマだ!」
「……東方向……以上なし」
「そ、そうだイカサマだ! だからノーカンだ!」
「「ノーカン!ノーカン!ノーカン!ノーカン!!」」
「なんだぁ証拠はあんのかよ?」
「うっそいつぁ……」
「ねぇ、けどよ……」
「んじゃ俺様の勝ちだな。へへっ今夜の酒はタダ酒だぜぇ!」
「飯メシ賭けてたのかよ‼ ――ってんなこたどぉでもいーんだよちゃんと監視しごとしやがれ!」
「んな事言ったってよぉ~どーせ誰も来やしねぇって」
「だが、近くの町では嵐が通りすぎたような酷い有り様だったと言うぞ?」
「んなもんはウワサだろ? 尾びれが付いて話盛られてるって」
「そうそう。本当にそんなことが出来るってならそれはもう化け物の仕業しか無いって」
「獣? ウサギとかがか? へっそりゃあ傑作だ」
「……だけどよ、万が一があってからじゃ遅ぇんだよ。こぉやっていつでも警報が鳴らせるように……ん?」
望遠レンズを覗き直すとその先には土煙が上がっていた。
妙だ。確かに今見ている草原は風通しが良いから強い風が吹けば砂埃が舞うがあれは明らかにおかしい。
異変に気づいた男は急いで倍率を最大に上げる。
「――!?」
そこに見たことのない生き物が大群で押し寄せてきていた。
これはまずい。奴等、一直線にこっちへ向かってきている。
男は大急ぎて目の前のボタンを押して警報を鳴らした。
次回警報がなり響くな住民たち、次回序章②