第二話 父の裏切り
レオは村に戻ると村の惨状に絶句する。
家の大半は焼け、村の人々は道端で倒れ込んでいる。集会所や村長の家も真っ黒に焦げている。
「...!そうだ、うちの家は...!父さんと母さんは...!」
レオは真っ直ぐと自宅に向かった。
「そん...な...」
レオの家も他の家に漏れず焼かれていた。神殿に行く前の家とは見る影もない。
「なんで...どうして...」
レオは何故自分がこの様な目に合っているか理解できなかった。当然だ。彼はまだ、13歳の少年なのだから。
「...まだ無事な人がいるかもしれない。もしかしたらその中に父さんと母さんもいるかも...」
そう言いながらレオは振り返り、無事な人が人間を探そうとした。
すると村の奥に妙な影を見つけた。
「ん?なんだあれ...もしかしたら生存者かな...」
レオは小走りでその影に近寄る。丁度その影がはっきり見えるようになった瞬間、レオはまた絶句した。
「と、父さん...?」
そこには、レオの父ディースが己の騎士剣で村長の心臓部を貫いていた。村長を突き刺した剣を横に振るうと村長の亡骸が地面に転がった。
「...レオ...」
「ど...どうして!」
「レオ...これは必要な犠牲なんだ...捧げなければいけない供物なんだよ...」
「く、供物ってなんだよ!そんな分けわかんない理由で村の皆を皆殺しにしたのかよ!?」
レオは自分の父への恐怖と動揺を声を荒げかき消した。
だがディースは喋らない。無言でレオを見つめる。
「...か、母さんは!?そうだ、母さんは何処だ!まさか母さんも」
「母さんはそこにいる」
ディースは騎士剣で近くに横たわる母を指す。
「!?か、母さん!」
レオは母の元へ行く。
「か、母さん...?」
母の体を触る。周りが烈火に焼かれているのに冷たかった。
「私は母さんも殺した。お前で最後だ」
「父さんが母さんを殺したの...?」
「そうだ」
「あ...ああ...ああああァァァ!!」
レオは泣き叫び、絶望した。こんな事があるのだろうか。尊敬する父が敬愛する母を殺した。
「レオ。お前を殺して終わりだ。」
ディースは騎士剣を振り上げる。レオに向かって。
レオは絶望と共に怒りが湧いた。この父を絶対に許さないと。
レオは逃げた。全力で。村の外れの神殿へ。