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不変ー意志を持った刀と戦闘狂女性の伝わらない伝説ー  作者: くまま
南西エリア トロヘイ大森林 編
9/101

トロヘイ大森林にて その1

南西エリアの半分を占める大森林その名もトロヘイ大森林

怨血童子の麓でもあり、遭遇するであろう敵も強い

南西エリアの浜辺から歩いてすぐがこのトロヘイ大森林なのだ

と言っても斥候と思われるゴブリンがうろついているぐらいで脅威ではない

こちらの数も少ないのでやつらもあまり気にしていないようだった


「どうやらこのまま素直に通してくれそうだな」

「そのようだぜ。雑魚構いすぎても仕方ないし、歌うのすらめんどいぐらいだろ?」

「うん。こんなところで疲労蓄積はごめんだな」

隊列は前回の依頼同様先頭クママ、そしてジュピがノッホを守るように並び、サヤが後方である

日はだいぶ落ちてきていた

準備が完了してすぐ出てきた影響なのだ

「ひとまず森の中で開けた場所を見つけたらそこでキャンプにしようか」

「そうだな。どんな喰い物くるんだろうな。楽しみだぜ」

ジュピはスキップでもしそうな勢いではしゃいでいる

クママは苦笑いしていた

「余裕そうだな。まだ入ったばかりだから強いのはいないのか?」

サヤが怪訝そうな顔をしている

「ああ、さすがにここいらは出ても一匹でしょうね。たまに徘徊はしてるんですよ」

クママがそう答えた時だった

手で止まるように合図が送られた

みんなが固まるの待つと

「早速一匹現れたね。そこそこタフな相手だし、連携を試してみようか」

「基本の流れだが、俺が挑発スキルで敵を引きつける。その間に他のメンバー特にサヤが中心となって、俺がひきつけた敵をぼこぼこにするって戦法さ。範囲攻撃じゃないかぎり敵の攻撃がくることはないと思ってもらって構わないよ」

「わかった。ちなみにあいつに名前はあるのか?」

サヤは敵の方を指差した

「トロールだ。ひとまずジュピとサヤだけで戦闘してもらおうかな。俺とノッホは補助だけするよ」

クママはそういうといつの間にかギターを持っていた

「ノッホはひとまず何もしないでいいかな。あれに補助魔法も勿体無いしさ」

クママがそういうとノッホは頷いた

「さぁてそれじゃお嬢様!トロールちゃんと踊りますかね!」

「やっと戦闘か」

サヤの目が輝きだした

クママのギター音が鳴り響く

どことなく安らぎの感じがする

「疲労蓄積を防ぐ歌だよ。普段はこれが鳴り響くよ」

「ああ、ちなみにクママは楽器で一曲。歌で二曲目。二つ同時で発動させるんだ。まあそのときは本気だな」

ノッホはもう目を閉じて曲に酔いしれているようだった


ジュピが斧を担ぐと挑発スキルを発動させた

「おりゃああああ」

野生じみた声が響く

木々が揺れ動物が逃げ出す

そんな中トロールはジュピに向かって歩きだしていた

ジュピも高身長で筋肉が厚いので大きいのだが、トロールは3mを超えて体重も300キログラムはありそうだ

トロールが持っていた棍棒が唸りを上げてジュピ目がけて振りおろされる

ジュピは体半歩分ずらし回避する

さすがに力勝負では分が悪いようだ

ジュピは攻撃に移るわけでもなくサヤのほうに目配せする

サヤは無言のまま、トロールの後方から静かに姿を現す

そして左肩からぶら下がっている不変を抜くと一気に間合いまで差をつめる

トロールが思わず悲鳴を上げる

さすがに絶命とはいかないようだが、威力は抜群だった

痛みからか武器をところ構わず振りまわす

「今は離れて様子を見るぞ。下手に近寄って攻撃を受けると多分良くて骨折だ」

「チッ」

サヤは一刀両断出来なかったのが気に喰わないのか、近寄れないのが気に喰わないのか唾を吐き捨てている

確かにあの巨体の膂力から生まれる攻撃をTシャツで受けたらきつい

防具を勧められたがサヤの格闘は速度を用いることで威力を上げる方法を取っているため、攻撃重視ということで服装はそのままだったのだ

原住民の首都コッコレペには魔法がかかっている軽装の防具があるらしいが、運がよければどこかダンジョンやそれこそ月下城にはあるかもしれないというで、淡い希望を抱いてはいる

そうこう考えているうちにトロールの振りが弱まってきた

ジュピが攻撃を開始すると同時にサヤもまた不変を振るう

トロールが2度目の悲鳴を上げるとしばらくして消えていった

「まあこんなもんでさぁ。単体じゃなくてもこんな感じになるんで!」

ジュピが軽く言って辺りを見回している

クママがジュピの肩を叩くとジュピは警戒を解いた

「上出来だね。無理はしなくてダイジョブだから冷静に敵の攻撃を見極めてくれ」

クママがそう言うと辺りを一瞥した

「ここでいいか。俺とノッホでキャンプの安全を確保するんで、ジュピと薪を拾ってきてくれるかな」

「わかった」

サヤは特に質問もせず踵を返し、ジュピを連れて薪を拾いに行った


「安全確保って何するんだ?」

「敵が近寄らない歌をまず歌って、ノッホがそれを魔法で一定時間固定するのさ。それで特に見張りも立てずにみんなスヤスヤってわけだ」

「クママの歌は凄いな」

「まあなあ。この世界で一人のユニークスキルって言えばいいのかな。俺の挑発とかはどこのパーティでも盾役は持ってるしな」

「不動と挑発か。他にスキルあるのか?」

「威圧も持ってるぜ。ゴブリンぐらいなら威圧でしばらく行動不能だ。惚れてもいいんだぜ?」

「威圧かそれはよさそうだな」

さらっと流すサヤ。残念そうなジュピ

「まあスキルは覚えるときなんか目の前に立体映像のようなのが見えるんだけどそれが習得の合図だよ」

ジュピはスル―を気にしてないように言う

「フム、そうかじゃあ先ほど見えたのがそうなのか」

「おおっ!?何覚えたのなになに?」

ジュピがはしゃぎだしたのでサヤはふぅと一息入れると

「アクティブスキル:一撃必殺。クールダウン時間3分。と書かれていた」

「ほへっ!?」

ジュピが目を丸くして仰け反った

「聞いたことないな。ユニークスキルかも知れない。おまけにスキル名ってそのまま名前通りなわけだから強そうだよな」

一撃必殺。単純明快だ。サヤはそう思った

「次の戦闘が楽しみだなあ。なっそうだろう?」

ジュピが肘でつついてくるのがちょっとイラっときたが、確かに次の戦闘が楽しみになった

「ところで叫べば使えるのか?」

そうサヤが言うとジュピは我に返ったかのように顔に冷静さが戻った

「いや実際には念じればいいんだよ。俺のはパーティに伝えたほうがいいスキルばかりだからな」

不動は移動出来なくなるし、挑発の後一呼吸置いてから攻撃したほうがいい

確かに伝える必要がないスキルはいちいち叫ばなくてもよさそうだ

これを知っているのはジュピだけだし、クママとノッホをびっくりさせてやろう

そう思うとサヤは笑っていた


「なあなあ聞いてくれ。我もなんか覚えたぞ!」

サヤの顔が引き攣る

「不変お前もなのか!?」

サヤは自慢したかったのか残念そうな顔をしている

「それで不変は何を覚えたんだ」

「それがだな・・・。パッシブスキル:振り速度倍加。ってのらしい。パッシブとはなんなのだ?」

サヤは考えていたようだが、顔がジュピの方へ向いた

「アクティブスキルって言ったが他にもほにゃほにゃスキルってあるのか?」

「なるほど。そう来たか」

不変は納得した素振りでいた

「ああ。常時発動型のパッシブスキルと一回発動してからの間隔がめっちゃ開いてるスペシャルスキルが存在するぜ」

不変は常時発動型と聞いて納得した

「振り速度倍加・・・。これってやはり・・・」

「今までもそれなりに速いと思うが倍になったのか。不変飛ばしそうだな」

不変はぞっとした。本気でやりそうだ・・・

「飛ばしてはならんぞ!!」

不変は念を押しておく

「拾いに行くのもめんどくさいし飛ばしはしないさ。ちょっと今試してみるか?」

そういうとサヤは不変を手にして素振りをしてみる

ビュォ

「速すぎる」「速すぎじゃろ」

サヤと不変の感想は一緒だった

ジュピはもう声に出ていなかった

「サ、サヤさん。もうひとつスキルを身につけてたのか。今後の成長が恐ろしいな」

不変はそろそろ接触してもいいのかなぁと思ったが、クママがそのときは話してくれそうだなと思ったのでやめておいた

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