旅立ち その3
ジュピと共にペロロンが所有する一軒家に戻った
そしてノッホと共同の寝室に戻るとサヤが声をかけてきた
「オイ、不変からはクママとノッホはどう見える?」
「ん~?ノッホがクママを好いているのは確実そうだがな。クママでも狙っておるのか?」
「チッ、そうじゃねえ!実力だよ実力!!感知能力で実力とか見えないのか?ジュピが信頼してるとは言えジュピだけが強い可能性もあるだろう?」
顔を真っ赤にするわけでもないのでほんとうに色恋沙汰はご遠慮なようだな。あまり話題にしないでおこう・・・
「ああそっちかすまんすまん。我の見立てだと一番強いのはクママだな。次にノッホ。ジュピはあれでも一番弱いと見える」
「な、なんだと」
サヤの眉間に皺が寄って今にもきれそうな顔をしている
「なんというか気っていうのか?クママが一番でておる。ノッホも同じくらいだな。それに比べるとジュピも周りよりは断然強いのだがあの二人よりは一回り小さい」
「実戦を見るしかないのか。まあ強いっていうなら歓迎だ。エリアボス全制覇の勢いで行きたいからなぁ」
サヤがまた邪な笑顔を浮かべている
「ここ最近戦闘がなくて体がウズウズしてるんだ。南西エリアで暴れるのもいいなあ。はああん」
戦闘を思い浮かべて恍惚の表情とかかなりやばいな・・・
まあしかしこうして外の世界を旅できるのはサヤに感謝せねばなるまい
意思を持つようになってからも祀られそこから動くことはない運命であったはず
そのうちジュピとノッホにも意思疎通してみようかなと思う
サヤはイラつきが隠せなかった
相手の実力を見抜くのは多少なりとも自信があったのだが不変の見込みと大幅にずれていたのだ
あの感知能力は変なところで確実に近い何かを持ってる
つまりクママとノッホは実力を隠せる実力者と見るのが一番なのだ
イラつきが修まらないのでジュピの元に歩いていく
「ジュピ聞きたいことがある!!」
「サヤさんどうした?俺に恋人いるかってか?いないぜ!」
「ハァ?違う!クママとノッホは強いのか?」
余計にイラついてるのが手に取るようにわかるジュピも振り返った先の顔を見て変な言動をすると次にどうなるか悟ったようだった
「俺より強いぜ?近接は確かに俺が上だが、クママは距離を問わずに強いし、ノッホは魔法さえ発動すれば一瞬で1万の軍勢は滅ぼせる。そんなのが俺たちのパーティだ」
「フム・・・。」
「まあ南西エリアでパーティ戦するだろうし、じっくり観察するといいさ。ノッホの詠唱サポートはクママ一人でやってるんだ。確かに俺のスキル挑発で大体の敵は俺のところにはくるんだが、もれたりするときもあるのさ。クママはもれたのを処理してるんだ」
「ジュピが敵をまとめて、クママがサポートしつつノッホで殲滅っていうのがスタイルだったのか」
「そういうことだな。ただサヤがアタッカーとして参加してくれたから昔みたいにノッホは温存スタイルになるかもな」
「昔?もっと人数居たのか?」
サヤは興味がなかったのでそこいらについては全然質問していなかった
「昔は4人パーティだったのさ。だが依頼の最中にアタッカー役が死んでしまってな。攻撃兼回復のノッホはあの時酷く取り乱してたもんさ。クママが慰めてやっと落ち着いてきたんだが、サヤさんを見ると昔を思い出してあまり喋れないのかもな」
「そうだったか。なんか悪いことを聞いてしまったな」
「いやクママといずれ話さなければと昨日話し合ってたから聞いてきてもらってよかったさ」
ジュピの目はどことなく儚さをまとっていた
「その前任者は男だったのか?」
「いや女性さ。サヤさんに負けないぐらい美人だったぜ?剣と弓の使い手だったのさ。魔法も下位魔法は一通り使えたはずだったぜ。万能という点ではチーム随一だった」
「女性か。ノッホが昔に重ねるのも仕方なさそうだな」
ジュピはゆっくり頷く
「ちなみに俺とクママは幼馴染なんだよ。一時期別のチームに入ってたがお互い気心知れた人とパーティがいいってことでペロロンを立ち上げたんだよ。そこに前任のアタッカーとノッホが入ってずっと活動してたのさ」
「美人ならジュピもさぞかしアタックしたんだろ?」
「ああまあ・・・。最初はしたがね・・・。」
そういうと口を濁した
サヤがああやっぱりかという顔をしたところでジュピが急に動いた
「無事成功し結婚しようってなってたんだ。こっちの世界で知り合って結婚した人たちも少なからず居た。特にパーティだ。お互いに助け合うのが必要だから惚れ易い下地は出来ると思うぜ」
「そうだったか。すまんな」
「いや、いいさ。俺よりも回復が遅れ死なせてしまったノッホのほうが見ていられなくてね。言い方が悪いかもだが俺のほうが早く立ち直ったんだぜ」
「フム・・・」
気まずい空気が流れる
そして準備に戻ると言うとその場を後にした
「サヤは死ななそうだしだいじょぶだろう」
サヤがどことなく辛そうなので話してみた
「強敵と戦えれば死んでもいいんだがな。パーティの中では最後に死にたいかもな」
「サヤに死なれたら我はどうなるんだ!そこいらに転がったままとか勘弁願いたい!」
「業物に近いから誰か拾ってくれるだろう」
そういうとちょっと笑ってみせてくれた気がする
元々荷物も多くないサヤは一人居間で寛いでいた
質素だがテーブルや椅子はそれなりに作りがよさそうだった
周りをいろいろ見ていたところで一枚の写真らしいものが見えた
そこには笑ったクママと仲睦まじいジュピと前任のアタッカーそしてクママの背中に隠れて顔だけ出してるノッホが居た
「ああ最初で最後のみんなが写っている魔法さ」
ジュピがそういって椅子に座った
「魔法でこんなことも出来るのか」
「ああ。結婚が決まり依頼に出る前に撮ったやつさ。クママが声上げて笑ってるところ見たことないだろ?あの依頼以降そうなっちまったんだ」
「確かに美人だな。ジュピにはもったいない」
サヤはそういい凛とした顔でジュピを見た
「はは。まあクママとノッホが結婚したがらないのは俺のせいだろうな。結婚したらどちらかが死んでしまう。とか考えちまってるはずさ。特にクママはな」
ジュピは窓から見える空を見上げながら遠い目をしている
「フム。結婚しててもおかしくなさそうだったのにしてないのはそういう背景があったのだな・・・」
「そういうことさ。まあ湿っぽくなるし俺に暗いのは似合わないって言われそうだからここまでにしようぜ?なっ」
そういうとジュピはサヤにウィンクしていた
クママとノッホが帰ってきた
そして準備が完了していると伝えると
「俺は必要なものは準備済みだし、ノッホもすぐ行けるようだし月下様に会いに行くとしますかね」
クママがそういうとみんなで「おー!!」と声があがった
ルートは南西エリアのトロヘイ大森林を抜けジェレノイ平野から南東エリアに行くことにした
トロヘイ大森林は怨血童子の麓でもあるのだが、チーム戦力としても抜けきれないとどちらにせよ月下のいる月下城までも辿り着けないというのがクママの意見であった
そこでちょっとした強敵と戦ってパーティの連携を深めようという意図も感じる
ただひたすら闇雲に敵に突っ込んでも勝てるわけではないのだ
いくら強いと言っても4対1万とかはノッホを守りきれずそこから瓦解していくのは想像に難しくないのだ
ジェレノイ平野はそこまで危険は高くないらしく道もそれなりにきれいなままという報告もある
やっと戦える
サヤはそう思いながら不変を背負う
こうしてチーム・ペロロンの長い旅は始まった