戦争前の思惑
真祖の儀が終わり、レイカは真祖となったが見た目に変わりはなかった
ヴァンパイア特有の長い牙は隠しているようだった
ただ身に纏うオーラは以前と全然別物となっていた
明らかに闇をまとっていた
まだ力のコントロールがうまくいっていないのは明らかで、ドワーフ達が気にしない性格で助かった
いや気にしないというより感じ取れないが正解と言えた
それほどまでにレイカの周りの空気は闇であった
これは昼間活動出来ないわけだ・・・
とサヤは思っていた
一番厄介なのは百夜が去り際に残した言葉だった
「元祖にお気をつけください」
何がなんだかわからない
ただ月下も前以上に口数が少なく考えていることが多いようだった
ピュイアも帰ってしまったので百夜の言った意味がわからなかった
確かにレイカの件はかなり何かを急いでいる気はした
そして急に目が開いたこと
それが百夜の何かに引っ掛かったのだろうか・・・?
残念ながら考えるのはあまり好きではない
何も考えずひたすらに殴りあう
そっちの方が性に合っている
クママなら何かしら意図を汲めるかもしれなかったが連絡方法はなかった
不変とはいつでも連絡出来るので、そこはもどかしかった
クママ達は戦争にも不参加らしいのは情報で入っている
もうひとつの懸念は今のままだと原住民と敵対することになるだろうということ
日本に帰れる可能性が低くなる
尤も日本ではこの強さがなくなる可能性があるから帰らなくてもよいとは思う
考えるほどに頭がこんがらがってきた
そう思った時には唾を吐き捨てていた
サヤがかなりイラついていた
そのおかげで不変は困惑していた
おそらく百夜の言葉だろうが、百夜にしては珍しく言葉足らずすぎた
おまけに我々は考えるのが苦手なタイプのメンバーばかり
そして元祖とはあまり喋ってもいないのでどんなやつなのかすら不明なのである
それで気をつけろと言われても警戒する以外に方法はなかった
ただ目が開いてからは明らかに強くなっていた
なっていたというより素がこうなのだろうな
我やルシファーよりは劣っている感じがするが、神器持ちらしいのでそれが作用するとどうなるのかは正直不明だ
ただ領域から眷族が全て出てきたことを考えると総合力は元祖が上だろう
まだ何かを忘れている気がするが、わからないことは考えぬ
元祖の力が戻ったことに気がかりだったのが月下である
何が起きたのか正直思いたくないが、おそらく真祖の遺体から血を返してもらったのだろう
血の誓約である
真祖となるとき元祖の血が入るので、それの影響で強くなる
ただ命令に逆らえない時がある
あの女に惚れこんだのだろうか・・・?
俺の時ですらそこまで凝ったことはしなかった
第一真祖・華月が鍵を握っていそうだが、俺が真祖となったとき既に死んでいる
じいと俺しか真祖は残っていなかったので、華月のことをよく知っているのはじいだけだ
だがそのじいは既に元祖の領域から月下城に戻り、そこから北東エリアの様子を窺いながら南西エリアに行く予定らしい
これは今までに例がなく、じいも何かを感じ取っていた
真祖クラスでないとここまで考えは及ばないかもしれない
俺達の下の者は基本真祖のことにしか興味がないからだ
嫌な予感しかしない
ルシファーとの全面戦争はまだ避けるべきだと思っていたからだ
そもそもベルゼにしか興味がない
今の強くなった力をぶつけるべき相手はベルゼである
ただ最悪血の誓約で戦わされる羽目にはなるのだろうな・・・
月下が珍しく溜息をついた
みんなが向かっていた先は、ドワーフでもかなり有名な武器職人の工房であった
レイカの得物を探しに来たのである
ドワーフは基本斧を使うのだが、剣から槍まで一通りそろっている
レイカは剣使いなので、剣を探しに来ていた
ヴァンパイアはみんな基本素手である
だがレイカは人間の頃剣使いなので、剣のほうが強いのである
これから戦おうとしている相手は強いので生半可な攻撃は回避され反撃されるだけなのだ
救いは一番強いであろうベルゼブブがおそらく戦闘不参加という点のみなのだ
問題はそれだけではなかった
ルシファーの戦いぶりを知る人が少ないという点だ
戦闘も単調であり、力を隠していた節があった
考えながら剣を探していると一振りよさそうなのが見つかった
魔法属性を備えた優秀な剣だ
ドワーフでなければ作れないであろう逸品だ
「レイカに出してもらう必要はないさ。僕が出しておくよ」
とさらっと言い、だしてしまったのでひとまず言葉に甘えておくことにした
今までの武器は耐えれない物が多かったがこれは耐えれるだろう
そう思うと思わず笑みがこぼれていた
その様子をシュトリュは微笑みながら見ていた
その頃南東エリアに入っていたルシファー軍は行軍を続けていた
月下が治めているとはいえ、人間達とも交流があるため素通りである
そんな中3人の将軍達は話合っていた
「なんか思い出せないことがあるんだけど、お前たちはどうだ?」
戦士ケイトがそう言うと
「そうなんじゃよ。レレクそう思わんか?」
賢者ゴゴンも首を傾げていた
「そうね。何か大事な何かが欠けている気はするんだけど・・・」
魔女レレクも何かが納得いっていなかった
「まあだけど私たちがずっとパーティ組んでたのは違和感ないけどなっ」
戦士ケイトはそう言うと笑った
「そうだのお。レレクとの掛け合いはなんも違和感ないわ」
賢者ゴゴンはそういい魔女レレクの方を見るが、レレクは切ない雰囲気を出しながら周りを見ていた
「まあ何かあれば保険にいろいろ細工をしていたからのお。記憶に間違いはなかろう」
賢者ゴゴンは敵に捕まった場合等の時のためにいろいろ細工していた
だが、それがベルゼブブに破られているとは知らなかった
そう・・・
勇者一行でも特に強かった
戦士ケイトリィ・賢者ゴレラン・魔女レレイクは死んだはずだが、蘇生されていた
それも記憶操作をされた状態で・・・
3人の話を目を閉じ静かに聞いていたルシファーは内心
「ベルゼの仕事は確か・・・だな」
と思っていた
さすがの3人も天使相手に話しかける勇気はなく、ルシファーも普段は目を閉じていたため話しづらかったのだ
「あの3人に仕掛けたのがいつ発動するか見ものだな、ベルゼよ」
そう思い少しルシファーは笑った
その光景を3人は目撃していなかった




