ドワーフ大迷宮の災難 その1
しばらくサヤ達がさまよっていたその頃
時は少し戻りレイカ達へ
準備が整ったレイカとシュトリュとジュッチェは首都から少し離れた場所へ来ていた
本来は多人数で行くべきところなのだがシュトリュの希望で3人で行くこととなった
そしてシュトリュは首都を出ると子供の格好から元祖と言われるその人の格好をしていた
レイカはその姿にびっくりしたが特に気になったのは、やはり両目の場所に入っていた真一文字の傷跡であった
子供の姿ではそんな傷跡はなかったため、何かの戒めなのかと思った
それほど親しくもないので、聞くのは止めた
ジュッチェは元々シュトリュのこの姿や正体を知っていたらしく、シュトリュが少人数の提案をすると少し考えて頷いた経緯があった
穏やかな顔をしているが、顔の傷跡や何かわからない感覚が気を許せるとは思えなかった
そしてレイカは何よりもジュピも凍土も失い、実力差が歴然としすぎている相手に勝てるのか希望を失いつつあった
レイカ自身はまだまだ強くなれる実感はあったが、どれほどまでに強くなれば仇討ちが出来るのか途方もないように思えた
だがそんなときはジュピと凍土、そしてジュピの親友であったクママとノッホを思い出すようにしていた
クママとノッホもシュトリュ・・・いや元祖に匹敵しそうな何かを感じる時があった
ベルゼブブはルシファーの上のように感じるがそれでもルシファー自体が化け物の存在だが
元祖や同等の力を持つ者が集まれば倒せそうな気はした
私も絶対そこに食い込んで必ず仇を討つ
そう言い聞かせてレイカは奮い立つようにしていた
そうしなければルシファーが殺す時に一瞬見せた、絶望に落としにかかってくるあの目の恐怖に打ち勝つことは出来ない
ドワーフから武器防具の援助や強力な戦士を仲間に入れれば勝てると信じるしかない
心にふつふつ沸きだす恐怖と怒り、そして悲しみ
そんなレイカを元祖ことシュトリュは見ていた
「そんな怖い顔しないでも、ルシファー達は追ってこないさ」
シュトリュがそういうがレイカはツンとしたままだった
そこにジュッチェが入り口を指差しながら声をかけてきた
「あそこですぜ、旦那方!」
ジュッチェは道案内役ではあるが、戦士としてもかなり優秀なほうであるとシュトリュが言っていた
まあそうでなければ、少人数で帝国まで行く自信はないよねってレイカは返していた
「ありがとうジュッチェ。やはり君が一番だね」
シュトリュが爽やかに答える
レイカは見向きもしていなかったのだが・・・
「灯りは気にせんでも大丈夫だ。魔法道具の松明がそこいらじゅうで灯ってるから」
ジュッチェがそう言いながら入り口の方を親指でクイっと示した
「それじゃ行きますぜ!一週間ぐらいはかかると思ってくれ。やばいのにあったらもっとかかるけど」
ジュッチェはさらっと怖いことを言ったのでレイカが思わず口を出す
「やばいの?そんなの聞いてないわよ?」
レイカがイラっとした顔でジュッチェを問い詰める
がシュトリュが間に割って入った
「僕が元祖の姿に戻ってることでわかってもらえると思ったんだけどね。まあ、その通りだよ。それともドワーフの力を借りずにルシファーやベルゼに勝てると思ってるかい?」
シュトリュが言い返せない言い方で聞いてくるので引きさがるしかなかった
「そう。最善の道はここから繋がってる。やばいのは僕が相手するよ。なんせ元祖だからね。あははははは」
シュトリュはそう笑うが、あまり顔は笑っていなかった
普段子供の姿をしている理由も聞いてないが、何かしら理由はあるものだと思っていた
「納得しましたかい、お嬢さん。もっとヒゲ生えてればドワーフにも通じる美人さんなんだがね」
ジュッチェがそう言い、レイカは余計なお世話と言い返すか迷いやめた
ジュッチェは迷うことなく道を案内し続けていた
普通の人にとっては全く一緒の光景にしか見えない場所をだ
ドワーフは大体こういう力を持っているらしく、特に強い者が道案内というわけだ
最前線で大迷宮を掘っている者たちにもやはり道案内は居た
地図を作ればいいと思うが、魔法があまり通じない
そして、大迷宮は常に進化しつづけるため、めんどくさいと地図は作ってないと言っていた
やばいのは時々掘りあてた遺跡に住み着いているらしいと
ジュッチェが多人数を望んだのは時折その遺跡を通る必要があったからであった
そして迷い込んだ人間達が一番休む場所に選びそして死ぬのが多いのも遺跡だと言っていた
入り口は扉もなく冒険者が時々迷い込んでは、命を散らすおかげでドワーフ達の懐は潤うとも・・・
そして最初の遺跡に辿り着こうとしていた時だった
遺跡で凄い音がしていた
ジュッチェが姿勢を低くするように促してきた
そして指をさしてみるようにジェスチャーしてきたので見てみると信じられない光景が見えた
サヤが居た
他二人の男は知らなかったが、片方の男からはシュトリュに似た何かを感じた
もう一人は渋い顔をしていたが記憶をたどっても誰かわからなかった
そして戦っている相手・・・
ドワーフが必ず避けて通るドラゴンであった
火を噴き、翼からの風圧でまともに近づけない
そして絶望的なほどに三人は近距離しか出来ないように見えた
「ドラゴン起こした馬鹿がいやすぜ?旦那どうします?素通りがお勧めですがね」
ジュッチェがそう言うとシュトリュは顔をほころばせた
「いや参戦しようか。僕の息子の月下が戦っているようだ。もう笑うしかないね。修行のためまさかここまで来るとは」
そう言うと堂々とドラゴンと戦っている三人の元へと歩るいていった
ジュッチェとレイカは顔を合わせひとまずそのまま待機した
ノウキントリオはさまよったあげくなんとか辿り着いた遺跡でドラゴンを発見してしまった
三人は顔を合わせると一斉に頷いた
不変が寝ているドラゴンを蹴りあげ開戦した
体長は20mぐらいはあるだろう
成体と言える格好をしており、鱗は立派な真紅に染まっていた
蹴りあげられたことで咆哮をしたドラゴン
近くで聞いた三人は思わず耳をふさいだほどであった
巨大な爪が不変を捉えようとするが不変は余裕でかわす
さすがに不変でも受け止める気にはならなかったらしい
大地が爪でえぐれ、かろうじて保っていた建物は崩れ落ちる
そして火を噴くが不変が涼しげな顔をして二人の前に立つ
ドラゴンも少し迷った顔をした
そして羽ばたくと風圧で今度は飛ばしにかかったが、やはり不変が不動直立して二人の前に立つ
そして不変が口を開いた
「ドラゴンよ!降りていざ尋常に勝負せよ!」
サヤが思わず
「ドラゴンが理解できるもんかよ」
というと月下が口を開いた
「理解出来るさ。あいつら賢いからな。4大竜とかいろんな言語喋れるらしいぞ?」
月下も既にテンションが上がっていた
ドラゴンとはまともに戦ったことがなかったからだ
そうこう話していると頭に直接何かが聞こえてきた
「主ら我を起こして何ようかと思えば・・・くだらぬ。そんなに死にたいのであればくれてやろう」
ドラゴンの声であった
そして目を開いたドラゴン
強烈な光りが辺りを包む
そんな時だった
月下は何かに気付き視線を向けた
月下の視線の先から一人の男がゆっくり歩いてきた
そう元祖ことシュトリュであった




