首都での戦い その3
ベルゼブブの目つきが変わった
クママもノッホもそして祈っていた首都の原住民も唖然としていた
目の前に広がっていたのは・・・
「ほう。俺を楽しませてくれそうだな。ここまで出来るとは思っていなかったぞ?」
ルシファーがそう言う
ルシファーの片腕が吹き飛んでいた
そう・・・
レイカと凍土がコンビネーションの流れるような連携技をルシファーに繰り出していた
そう凍土の刀技にレイカの魔法からレイカが剣技を繰り出し、そこに凍土が絶え間なく魔法を打ち込む
それを全力で片腕にダメージとして蓄積させたのだ
そして連携の最後は圧巻であった
初級魔法しか使えなかったはずのレイカが剣技を使用しながら上級魔法を詠唱し
魔法に関しては素人のはずのオーガである凍土もまた上級魔法を詠唱し
同時に発動させた結果だった
全てアイコンタクトで済ませていたので、ルシファーも把握しきれなかった
レイカは既に疲労困憊だった
凍土も魔力が尽きたのか領域が解けかかっていた
だが健闘はそこまでだった
ルシファーは片腕が吹き飛んだのも気にかけずゆっくりと近づく
そして首を掴む
怨血童子が宙で足をバタバタさせている
接近されると一番弱い怨血童子である
そして詠唱には少なからず態勢が悪い
凍土が行こうとしたが足が動かない
そう、またルシファーの領域が発動していた
首都の原住民が一斉に祈った結果にさぞかし見えただろう
ルシファーが首都の原住民に微笑む
「君達の祈りによって私は再び力を取り戻した!」
白々しい茶番だが、それに気付いてるの原住民はいない
「うっ。がはっ」
怨血童子がバタバタしているが力が違いすぎて首にかかった手をほどけない
そして耳元でルシファーが呟いた
「ばいばい。どうじちゃん」
ルシファーが力を入れると力無く手をぶら下げる怨血童子
そして消滅した・・・
凍土の悲鳴が木霊する
レイカは声を上げれる状態ですらない
ルシファーが踵を返し、レイカの近くへとゆっくり歩いていく
首都の原住民からは歓喜の歓声が上がる
凄まじい地響きのような歓声であった
「日本人でありながらオーガに加担した罪は重いぞ・・・!」
そう言うとルシファーは光の槍を持っていた
そして、光の槍でレイカを貫いた
地面に既に伏せていたため、光の槍が天空に昇るかのように光の柱が立ち昇った
苦痛を感じることもなくレイカも死んだ
クママもノッホもただ見ていることしか出来ず、涙を堪えることしか出来なかった
凍土が怨嗟の声を上げる
だがそれに臆するルシファーではない
首都は異様な熱気と歓声、そして祈りに包まれていた
そしてレイカの元によると神器・悪魔殺しを手にとった
凍土にもルシファーは歩み寄る
「ここに大罪を犯したオーガ達を殲滅すると誓おう!原住民よ我を讃えよ!」
ここでまた一段と首都が揺れ大歓声が上がった
凍土の耳元でルシファーが囁く
「領土を返還すればよかったものを・・・。残存のオーガ達も殺してあげますよ。貴方達が寂しくないようにね。ははは」
そう言い立ちあがるルシファー
そして悪魔殺しを掲げるルシファー
悪魔殺しは掲げられると凄い光を放った
勇者モッテンのときとは比べ物にならないほどであった
だが違いはベルゼブブが涼しい顔をしていること
そして光に当てられただけで凍土が凄い悲鳴を上げていた
「これが神器をちゃんとした実力者が使うということなんですよ。勇者モッテンとかいう雑魚は悪魔殺し無しではせいぜいランクD程度なんです。カリスマはあったようですがね」
ルシファーがそう言うが凍土の意識はもうおぼろげである
「・・ま・・・に・・・・な・・・」
凍土はもはや声に出なかった
「では観衆も期待しているのでざっくりと止めを刺してあげましょう」
ルシファーは手にした悪魔殺しをゆっくりと振り下ろす
そして凍土に斬りつける
声にならない声を上げ消え去っていく凍土
「首都に乗り込んだオーガは消滅しました。しかも仇敵怨血童子です!歴史が変わった日と言えるでしょう。慈悲深き貴方達に天使の加護があらんことを」
ルシファーが茶番を繰り広げていた
ベルゼブブはべーちゃんの格好のまま微笑んでいた
「この人間の死体はそうですね・・・。そこの方々片付けてください。オーガに操られていた可能性もあるので丁重にね」
ルシファーがそう言うと兵士達が慎重に扱い教会の方へと運んでいった
「天使様お怪我のほうは大丈夫なのでしょうか?」
教会の者が心配そうにルシファーを見上げていた
「お構いなく・・・。そして首都に住まう南西エリアに居た者たちよ!これより、南西エリアに逆襲に行くぞ!怨血童子はもういない。統率も取れないような相手に後れを取ってはならない!」
ルシファーがそう言うと一人二人と歓声を上げ、いつの間にか首都はまた揺れ出した
シュトリュはかなり厳しい顔つきをしていた
「ベルゼ・・・。あの策士はこれを狙っていたのか・・・?しかし、共同戦線をこういう形で潰されるとはな・・・。神器もルシファーの元にわたってしまったしな・・・」
そこに百夜が耳元で
「これは若が強くなってもきついかも知れないですな・・・。ルシファーの実力も相当ですぞ・・・」
そう百夜が言うとシュトリュも頷いていた
「連絡しておかないとな。僕らはもう少しこちらで様子を伺おうか」
シュトリュがそう言うと百夜は頷き、そしてすっと消えていった
クママとノッホはレイカが運ばれた教会へと行っていた
そして、レイカの亡骸を見て泣き崩れるクママ
だが・・・
ジュピの声が聞こえてきた
「おい、クママ。まだレイカは生きてるぜ?」
クママが辺りを見回す
ノッホが体をつつき上を指差した
上空にジュピらしき霊体が見える
「ジュピ・・・?ジュピなのか?」
クママがそう言うとジュピは頷く
「ルシファーに殺されたんだが、最後の悪あがきをしてやったんだ。レイカが死んだ時復活出来るようにな!」
ジュピがそう言うとレイカが微かに動く
「さぁてと、クママ。もっと喋りたいがもう時間だ。そしてもう俺の加護はレイカにない。もっと体を大事にするように言ってくれるか?」
そう言うジュピの目には涙が流れていた
「ああ・・・ジュピ。俺は約束を破ったことないだろ?任せておけ」
クママも涙目ながらにジュピに胸を叩いてアピールする
「そう・・・その・・・」
ジュピは何かを言いかけたが消えかけていた
だが消え掛けの状態でレイカの髪をすくと
「・・・レイカ。これで最後だ・・・。しばらく来るんじゃないぞ・・・?」
そう言うとジュピは消え去った
そしてレイカが起きあがった
「う・・・ん。・・・あれ?クママにノッホさん?私は死んだはずじゃ・・・。待って・・・。ジュピを感じないわ」
クママとノッホは顔を合わせるとクママが話しかけた
「ジュピは旅立ったよ・・・。そうか、今までジュピが守ってくれたんだな。あいつらしい・・・」
クママは上を見上げると、ジュピが笑っている気がした
「ジュピの加護っていうスキルがあったんだけど、それが発動したみたいだわ・・・。オーガ達は!?」
レイカがそう言いクママの腕を掴むとクママは首を横に振った
「怨血童子もその他のオーガもみんな消滅したよ・・・」
クママがそう言うと、掴んでいた手を離し力なくぶら下げた
「凍土・・・。くっそおおおおおおおおおおお」
教会にレイカの声が木霊する
「ルシファーは今南西エリアを取り戻すために戦争の準備に取り掛かっているよ。すまない・・・。加勢出来ず・・・」
クママがそう言うとレイカは首を横に振る
「あれは仕方ないわ。ノッホさんを守るためでしょ?逆の立場だったらきっと同じことしてたわ・・・。しかし、怨血童子も凍土もいないとなると南西エリアは・・・。せめて怨血童子の妻の墓だけでも守りたいけれど・・・」
そこでクママはおかしなことに気付いた
「ところでオーガも消滅の運命なんだろ?なんで妻の墓は建てられてるんだ?」
クママがそう言うとレイカは少し迷った顔をしたが、告げた
「実は・・・」




