出会い その4
サヤとノッホの二人部屋だったが、怪しい物音もせず朝を迎えられた
元々二人部屋だったようでノッホ一人で住んでたのだろうか
まあそれより今後だ
そう思っていたらサヤが起きたようだ
「何か変わったことは起きたか?」
「いや、治安がよいのか何も起きなかった」
「ふむ、少しは信頼出来そうだな」
意志疎通を行っていたらノッホも起きた
「おはようございます。サヤさん。良く眠れましたか?」
「おかげさまで野宿もせずにすんだよ。ありがとう」
「じゃあ朝ご飯にしましょうか」
「オッ、ありがたいっ」
そういうと部屋からノッホが出ていった
「我は置いて行け。」
「言われなくてもそうするさ。」
サヤはにこっと笑顔で部屋を出ていく
「あいつめ、我がご飯を食べれないのを笑顔で返していったんだな?」
ぐぬぬと思いながら帰りを待つことにした
「おはよ~」「おはようございます」
そこにはクママとジュピがいた
どうやらこのパーティで一軒家に住んでいるようだった
「おはようございます。珍しく二人とも早起きですね」
そう言ってふふっとノッホは笑っていた
「美人に朝早く会えるとありゃそりゃ当り前だろう!?」
ジュピはノリノリで言ってる
「ジュピがうるさくてな。俺もついでに起こされたんだ」
クママはまだ眠そうにまなこをこすっている
「おはよう」
サヤはそっけなく挨拶をかわす
「俺が作ったんだ。ああ俺達のなかでは俺が一番料理うまいと思うぜ?」
ジュピはふふんといった表情をしている
ご飯に卵に魚料理が並んでいた
ああ日本人なのは確かそうだなそうサヤは呟いた
「いただきま~っす」
みんなでご飯を食べ始めた
しばらくしてからクママが口を開いた
「ところでだ。サヤさん。うちのパーティに入ってみないか?」
「サヤさん強そうだし、あの刀もよさそうだ。うちのパーティには攻撃担当がいなくてね困ってたんだ」
「この世界が理解出来るまででもいいんだ、どうだい?悪い話しじゃないと思うぜ」
サヤは顎に手を当て考えた
いろいろお世話になったのだその借りは返すべきだろうと
「依頼とやらが気になるし借りを返すべきだな。しばらくの間頼むよ」
「いやっほぉ~」
ジュピは大騒ぎしてよろこんでいる
「その前に少し確認したいんで、ジュピと軽く手合わせしてもらえないか?」
クママがそう言うと
「ああ確かに。うちのパーティはちょっと特殊でね。みんなスキル持ちで個人の戦闘能力が高いんだよ」
「ジュピが一番手合わせに向いてるしね」
「万が一の時はノッホが回復出来るから問題ないさ。なっ」
「う、うん」
ノッホは恥ずかしそうに下を向いてる
「ひとまず朝ご飯くっちまおうぜ!」
ジュピはそう言うと勢いよくご飯をかきこんでいった
不変を持って一軒家の入り口を出ると一帯はちょっとした集落であるのがはっきりわかった
夜に到着したからよくは見えてなかったのだ
一軒家から歩いてすぐの場所に訓練場のような場所があった
「よっしいっちょ、サヤさんの実力みさせてもらいましょかね?」
ジュピはストレッチしながらそう言った
「私はいつでもいいぞ」
「ではいざ!」
そう言った瞬間ジュピは一瞬で3mの間合いを詰め斧を振りかざす
サヤは斧を見きりすれすれでかわす
そしてそのまま右フックを放つ
ジュピもまたかわす
「刀よりも格闘なんだっけかサヤさん」
ジュピはにこっと笑うと斧を水平になぎ払うように振る
サヤは腰を低くしそのまま足蹴りでジュピの足を狙う
確かに蹴りは入ったのだがサヤの足のほうがダメージを受けていた
「こいつが俺のスキルなのさ」
ジュピは歯をキラーンとさせながらそう言う
「体を鋼鉄にでもするのか?」
サヤはそういいながら間合いを離していた
「不動というのさ。まあその場から動けないだけで全身硬直ではないんだけどね」
そういうとジュピは少しずつ間合いを詰めてくる
「みんなスキルを持ってこっちの世界に来るのか」
「いいや。得意武器に応じてっぽいんだ。銃とか扱うやつもいるんだが銃は強いらしくスキル持ちは報告されていないぜっ」
片手で軽々と斧を振り回している。膂力はかなりのものだろうとわかる
「私は格闘だからスキルあるのかな?」
「そのうち覚えるかもな。俺もクママもノッホも最初は全然だったんだ。経験を積めば覚えるのかもなRPGぽくさ」
「フム、期待しておこう」
そして斧が振り回される最中サヤは攻撃をかいくぐり連打を浴びせる
それほど効いてるようには見えないのかジュピは余裕の表情を見せている
「うちのパーティは強敵と戦うことが多いからその影響もあるかもな」
「強敵?」
サヤの眉がピクリと上がる
「おや?強敵に興味がおありかな?妬けるねえ」
ジュピはまだまだ余裕そうに連打を浴びながら斧を持っていない左手でたまにサヤの攻撃をいなせている
攻守にバランスがとれているようだった
「お前本気なのかそれとも全然余裕なのか?」
サヤは不機嫌そうに尋ねる
今まで黙って見ていたクママが口を開く
「いや、ジュピにあれだけ攻撃してかわせる人みたことないよ。実は前までアタッカーがいたんだがその人より強いんじゃないかサヤさんは」
ジュピも頷いてるようだった
ただノッホだけは俯いたままだった
サヤがここまで強いとは思わなかった
ジュピとやらも結構なてだれに見えるがそれでも、だ
手下達には全然本気を出せていなかったと言った方がいいぐらいだ
疲労さえなければあのまま勝てていただろうなとさえ思える
我を使うまでもなかったな
不変は心の底からそう感じていた
ジュピはかなり固い。我から見てもなのだ
それでも圧倒し続けている
サヤは今を楽しんでいる
ジュピは笑顔のままでこそいるが汗の量がサヤと比べ物にならぬ
スキルとやらがなければもう地面に伏せていそうだ
そういえば我もスキルなんて覚えちゃうのかな
とか期待しちゃいかんのだろうなあ
と考えていたら決着がついた
「いやぁ、ここいらにしましょうぜサヤさん。これ以上はさすがに事故になりそうだし。サヤさんの実力は十分わかったし」
ジュピは両手を挙げ降参といった感じに手を振っていた
「チッ、そうだな」
もっと戦いたかったといいたげに冷たい視線をジュピに送っている
「す、すごい・・・」
ノッホが思わず目を大きくしてサヤを見つめていた
クママは拍手していた
「いやぁ、俺より全然強いですね。あははは、はぁ」
「そういえばクママは強いのか?」
サヤはクママにもジュピとやれるほどの力があるのではと目を輝かせていた
「いやいやいや。俺はパーティの縁の下の力持ち的存在でしてね。ジュピより攻撃力ないんですよ」
サヤは残念そうな顔をして次はノッホのほうを見つめる
「ノッホはどうなんだ?回復役とは言っていたがジュピの感じでは回復の出番はあまりなさそうだが?」
「わわわたしは、クママよりは強いかもですけど、魔法は詠唱時間が必要なので1対1とかじゃまず無理ですぅ」
「クママってそんなに弱いのか?ジュピと同じぐらいの雰囲気を感じたんだが気のせいだったのか・・・」
サヤは顎に手を当てて考えていた
「縁の下の役割を捨てればそれなりになるかもですが、ちょっと俺のスキルは特殊なんですよ。吟遊詩人って言えばわかりやすいですかね?歌うことでジュピの防御を高めたり、ノッホの魔力を回復とかです。この世界に一人だけって言われてます」
「歌いながらの戦闘はさすがにきつそうだな」
「おまけに楽器を持って歌で防御を高めながら楽器で魔力を回復とかしてるんで武器より楽器を持ってる時間のほうが長いと思います」
クママは苦笑いしながらいつの間にか手にはハープを持っていた
「実際に体験してもらいますかね。疲労に聞く音色でもどうです?」
「ノッホも聴きたい!」
「お前は疲れてないだろ」
「あんな緊張感あるの見てたら疲れちゃうよ~」
サヤはやれやれと言った表情で切り返した
「じゃあ聴かせてもらおうかな」
「ええ、それではどうぞ」
ハープの音色が集落に広がっていく。住人達も聴きいってるようだった
そして疲労が抜けていく感じが体から感じられた
これがクママのスキル吟遊詩人か
サヤはそっと目を閉じしばらく音色に体を任せていた
これは始めて聴くが良い音色だな
不変も感じていた
疲労はないが単純に良い音色であるとは判断がつく
巫女が舞い、神楽笛が響く
不変はそんな昔のことを思い出していた
「そういえば背中の刀を使わなかったがやはり間合いとか詰められるときついのか?」
「いや。単純に使いなれていないんだ。それにこいつは馬ごと切り捨てるとか大勢に囲まれた場面に向いてるからな」
「確かに。俺はもう斧に馴れてるからこれで防御も可能だが、馴れていないと防御もきつそうだしな」
「そういうわけで弱いのをまとめて倒すとかそういう場面で使っていこうかなって思ってるだけさ」
「まあたまには素振りとかして使いなれたほうがいいとは思うが、サヤさんはそこいらはわかってそうだし、お節介はこれぐらいにしようかな」
「素振り。そうか確かに手に馴染ませないといけないな。武器はほとんど使わないから助言は助かるよ」
「おっ?そうかい?困ったら俺の胸に飛び込んでくればいいさ」
サヤは冷たい視線をジュピに送る
「あ、あはは。冗談ですぜ」
「ところで依頼が入ってきてるんだが早速こなしてみないか?」
クママが紙を持ってヒラヒラさせている
「ゴブリン10匹が近くに来てるってやつか。簡単だしいいんじゃないかな」
ジュピがそういうとノッホも頷いていた
「そいつらは弱いのか?強敵がいいんだが・・・」
「ゴブリンは弱いですね。いろいろ種類はあるんですが、基本的に別種類はこの近辺では見たことないですね」
「強敵とはそのうち闘うことになりますよ。たまに集団で攻めてくるんですよ」
クママとジュピはそう言って真剣そうな顔つきになった
「そろそろその周期でしてね。俺達はボス退治を任せられることが多いんでそのときまで我慢してください」
クママはそういうとノッホの方を一瞬見つめて、サヤを見つめ直した
「基本パーティでこんな少ないのは珍しいんです。あまり集団が好きじゃないってやつの集まりなもんでして。幸いみんな特殊スキルっていわれる強力なスキルもあるので他のパーティより上の位置づけなんです」
「フム、私もあまり集団は好きではないので助かるよ。10人とかごめんだ」
「ひとまずゴブリン退治でも行ってみますかね。働かないとね」
そういうと各々準備を始めた
そういえばもうあれだけ動いたというのに体が軽い
クママのは便利だな
いろいろ使えそうだなククッ
サヤは口角がいつの間にか上がっているのに気付かずにいた
ノッホはこっそりサヤの口角が上がっているのを見ていた