氷晶窟にて その4
不変もまたその速さに苦労していた
体の動きがまだぎこちない上に相手は凄い速さで攻撃と回避を繰り返す
不変が攻撃したときには残像ですらなかった
だが相手も手をこまねいていた
不変が固すぎてダメージが通じてなかった
神々しい鎧が全てを弾き返していた
鎧を破壊することもままならない
アクアの残像もまた現状を打破出来ない状況に陥っていた
両者とも疲労の心配はなかったが、それだけに終わりなき戦いに思えていた
サヤは相変わらず一進一退の攻防を繰り広げていたがサヤのほうが分が悪かった
時折力を抜いているとは言え相手は疲労しない
サヤは既に汗が垂れ落ちていた
一撃のダメージが重いとわかっているので精神疲労も蓄積される
サヤは頃合いを計っていた
そうアクティブスキル「一撃必殺」を出すタイミングを・・・
不変は決心をしていた
意外と早く使うことになるのだなと思った
そうパッシブスキル「振り速度倍加」の解放だ
実はずっと止めていた
体の変化がどうなるか不明だったからだ
ただ先ほどのゴーレム戦でアクティブスキル「一閃」が使えたのは確認していた
「一閃」は一瞬だけ近距離だが思い描いた場所へ移動出来る。おまけに光るので目を眩ますことも出来る
「振り速度倍加」が刀本体にだけなのかこの擬人状態にも適用されるのか怖くて試していなかった
サヤも苦労しているだろうと考えた不変は実行する
サヤは違和感を感じ取っていた
不変刀がパッシブスキル「振り速度倍加」を発動させた気配を感じたからだ
そしてアクアの残像が攻撃したタイミングで振るって見るとやはり効果が現れていた
そしてサヤは口角を上げた
アクアの残像が一瞬ひるんだがそのタイミングではサヤは攻撃しなかった
だがゆっくりとアクアの残像へと近寄る
そして放つ
アクティブスキル「一撃必殺」を
アクアの残像は避けきれず消え去っていった
そしてサヤもまた疲労から不変刀を地面に突き刺し膝をついてはぁはぁと息を吐いた
そんなサヤの前にアクアがまた現れた
月下を担いで・・・だ
不変もまた今までと違う自分を感じていた
明らかに体が軽く思ったことが実行出来ていた
重厚な音がする鎧にそぐわない速度で動く不変
アクアの残像は躊躇っていた
明らかに不変の様子は傍から見ておかしかった
そして不変はいつの間にか右手に持っていた盾でアクアの残像を殴打するとアクアの残像は一撃で消え去っていた
「ふぅ。こんなもんだな。我が一番だなこれは!」
今にもスキップしそうな勢いで不変は喜びながら奥へと進んだ
時は少し戻る。そう、不変の元からアクア本体が消え去った時へと
月下もまた広間へと出ていた
そしてそこには懐かしい顔が正座していた
「その気配・・・。本当にお前が住み着いていたのかアクア」
月下がそう言うとアクアは頷いた
「戦闘狂モードかえ?お喋りなところを見るとな」
アクアがそう言うと月下もまた頷く
「まさか、またお前と戦える日が来るとはなあ!百年前はずいぶんお世話になったなあ!」
月下は高笑いしていた
「あの時の小僧如きが・・・。多少は強くなったようやけどまだまだやな。お仕置きが必要みたいやな」
そう言うとアクアの雰囲気が一変する
そしてサヤにも不変にも使わなかった領域を使用する
滝が流れ、川が流れている
小石がそこいらに敷き詰められ領域内でなければ癒しの光景だろう
月下も領域を使用したがアクアの領域へと支配される
つまり月下の方が弱いことを意味していた
月下の笑いが止まった
「小僧。本気で参るぞ」
そう言った刹那だった
月下にボディブローが当たる
そして
「鬼水の型・壱」
アクアがそう言うと刀より放出された水が巨大な竜の形へと変化し月下に襲いかかる
だがそれはフェイクかのように既に月下を斬っていた
血が噴き出しそのまま月下は倒れた
倒れた月下の上を竜が飛んでいった
その威力は洞窟を軽く震動させ、天井からぱらぱらと土が落ちてくるほどであった
「運がいいな小僧。うん?残像の気配があらへん。面倒やな」
頭を掻き、一息吸うと月下を担いだ
「まずはお嬢ちゃんところでもいこうかな。あの金ぴか君は厄介な匂いするわ」
月下は回復することで精いっぱいであった
「なっ!?月下!!やられたのか」
そう言うと先ほど感じた強そうな気配は本物とわかった
唾をごくりと飲み込むとアクアの方を見た
「わかったやろ?ささ帰った帰った」
アクアが引き返すべき道のほうを指差す
「チッ。残像にすら手こずったてのに、本体かよ。きついだろこれ」
おまけにアクティブスキル「一撃必殺」を先ほど使ったばかりだ
スキル使用時間が回復していないのだ
アクアが担いでいた月下をサヤの元へと放り投げた
その時だった
不変が現れたのだ
「遅くなったな。本体の強さからしてサヤには荷が重すぎると思ったのでな」
サヤは思わぬ光景を目にしていた
右手に盾、左手に大剣を持っていたからだ
「いや、それはいいんだが、その武器は・・・?」
サヤの意見は尤もだった
刀ではなく大剣だった。それもかなり大きい
「ああこれか?我が武器が欲しいと念じたら出てきたんだが・・・。刀じゃなくてびっくりしたわ」
不変はなんとなく元気がなさそうだった
「刀に盾も似合わないがな。ところでアクアはどうする?」
サヤがアクアの方を一瞥する
「金ぴか君きてもうたかあ。しゃあない。一戦しましょか?それで懲りてくれるやろ?」
アクアがそう言うと領域を使用した
だが異変が起きていた
不変も領域を使用したのだ
荘厳なステンドグラスには天使が剣を掲げ今にも突撃しそうな絵が描かれている
そして天使が上空に勢ぞろいしていた
赤ん坊の格好をした天使がラッパを吹いている
そして太陽が近いように感じた
不変からはいつの間にかパッシブスキル「炎鱗」が発動し、天使の羽が生えていた
だがお互いの領域はぶつかりあいそして消滅した
「やっぱ金ぴか君は厄介であってたなぁ。ちょいと分が悪いかなあ。そろそろ小僧が起きそうだし」
アクアは頭を掻いてふぅと一息入れていた
「我が先に行く!サヤはタイミングを計らって参加するがよい!」
そう言うと不変はアクアに向かって大剣を振るう
剣圧が凄くブォンと空気を切り裂く音が聞こえる
そして衝撃波となってアクアの居た場所へと直撃した
かのように見えたがアクアは受け止めていた
そしてそのままお互いに大剣と刀を交えた
圧倒的に不変のほうが力が強いと思えたが、鍔迫り合いとなっていた
こうしてサヤ・不変対アクアの一戦が始まった




