出会い その3
クママは歩きながらいろいろと教えてくれた
ここは召喚された者が始めに来る場所で、召喚の森と言われていると
儀式が行われた形跡があったことからクママが使いにだされたとも
日本人がこの島に住み始めてからは召喚する際に条件を出すようにし管理されていたのだが、今回は無許可で召喚されたようだとも言っていた
しばらく歩いただろうか
人工的に作られたような灯りが見えた
サヤは心なしかほっとしたような安堵の顔をのぞかせていた
「おっ。クママ御苦労さま。こんな夜にお使いとは災難だったな」
そういうと男はクママの背中を叩き笑っている
「偵察は不向きだからなあ。ジュピなんかが行ったらもう一人使いが必要になるだろ?」
クママはそういいジュピと言われた男の背中を叩き返し肩を組んでいた
「そいつも日本人か?」
サヤが不思議そうな顔して二人を覗く
「クママ!こんな綺麗な女性と夜空のデートか!?俺にも紹介してくれよ!」
ジュピは笑いながらサヤに礼儀した
「サヤさんだ。こいつはジュピ。俺のチームで脳筋特攻役してるんだ」
そういうとクママはジュピにこづかれながら笑いあっている
「サヤです。お世辞でも嬉しいです」
不変は気付いた。こいつ頬染まってない。言われなれてるそんな雰囲気だ
灯りが顔を照らしてるため頬の様子などそんなにはわからない
ジュピよ、さようなら
不変は心でつぶやく
「俺も日本人さ!そもそもこの島に残ろうとする原住民は全然いないんだよ」
頭は剃り上げられていて、筋肉もついており黒光りしそうな勢いなので日本人っぽく見えない
我よりも重量の武器を使っていそうだな
じっと観察するとサヤと同じように武器を背中に担いでることに気付いた
ジュピの武器は斧と言われるもののように見えた
二人と話した結果不変の存在は隠すことにしているので意志疎通は行わず、視覚感知だけを行っていた
そのとき視界に小柄な女性が目に入った
「クママおかえりなさい!相変わらずジュピと絡んでるんだね。そっちが新しく召喚された方かな?綺麗な人だね」
小柄な女性はフードを取るとサヤに礼儀し手を伸ばしていた
「そうだよノッホ。サヤさんて言うんだ。さっきからジュピが鼻を伸ばしていて困ってるんだ」
クママは冗談交じりに笑いながらジュピのほうをみている
「サヤだ。よろしくね」
そう言って、ノッホと呼ばれた女性と握手をしていた
「私はノッホ。パーティで回復を担当してるんだ」
ノッホが言ったことが理解出来ず怪訝そうな顔しているサヤ
その様子に迷った顔でノッホがクママに助けを求めていた
「ああこの世界のことだけしかあまり話してないから戦闘状況とかそういうのは説明してないんだよ」
そう言われるとアッというような顔してサヤを見つめ
「ごめんなさい。クママがもう説明してると思っちゃって」
しょんぼりして俯くノッホ
クママも困った顔しながらサヤに向かい
「サヤさん。俺達はパーティというのを組んで召喚者からの依頼をこなしてるんだ」
「召喚者からの依頼?それを達成すると元の世界に戻れたりするのか?」
サヤは依頼と聞いて報酬がなんなのか期待しているようだった
だが、クママの様子では元の世界に戻れないようだ
「いえ、元の世界に戻れるわけではないのですよ。食品だったり、そういったものですね一人でやるより安全だったり一人でやろうがパーティでやろうが同じ数だけ報酬がもらえるのでみんなパーティに入って依頼をこなしてるんですよ」
サヤは顎に手を当てて考えているようだった
「そういえば森の中でこの世界の住人が劣勢とか聞いたがそれが関係してるのか?」
「そうです。依頼には敵対勢力の討伐依頼も多いですね。噂なのか希望なのかは不明ですが、敵対勢力を弱体化出来れば日本に戻れるという話しも時々聞こえますよ」
ジュピやノッホも頷いている
サヤはまだ顎に手を当てたままだった
「敵対勢力ってのがまた厄介でして、人ではないんですよね。ゴブリンって言われる緑色でちっこい人のような奴から、オーガって言われる大きくて角が生えてる人のような奴までいるんです。このほかにもたくさんいますよ」
そこまで聞いた時微かにサヤの目が輝いたように見えた
不変は恐ろしい悪寒を感じていた
「そいつらはこの島にいるのか?」
サヤは顎から手を離していた
「いや、いませんが、小舟ですぐ大陸に行けましてね。ゴブリンぐらいならすぐ討伐依頼が出されると思いますよ」
チッ、あっ、こほん
こやつ本性隠そうと慌てておるな
不変は言いたいけれど言えないジレンマに苦しんでいた
「ああ。サヤさんお疲れでしたよね。食事と寝る場所用意するんで椅子に掛けて待っててください。ノッホ手伝い頼むよ。」
クママはノッホを連れて集落の人混みへと消えていった
残ったジュピだが
「サヤさん。俺も今日は見張りの担当でね。すいませんがしばらく情報整理やらそこいらの見物でもしててください。近くにはいるんで何かあれば声掛けてください」
一礼するとジュピも灯りのする方へ歩いていった
「オイ不変。聞こえてるか」
不変は驚いた。口に出さずに意志疎通してきたサヤにである
「聞こえておる。いつの間にそんな技術を習得したんだ?」
「私にもわからないが、不変と口に出さずに喋りたいと思ったら出来たんだよ。それよりもだ、どう思う今までの話し」
不変もそれはサヤに聞きたかった質問だ
「信用出来そうな気もするが、もっと情報であったり実際に見てみないことにはわからんというのが正直なところかもな」
「そうだな。食事と寝る場所を用意してくれると言っていたし、どの程度もてなしてくれるのかそれとも明日には裸になっているのかでわかるだろう」
「我は寝る必要もないし、そうなりそうな時はサヤを起こしてやろう」
「それでお願いするよ。そうならんことを祈ってるが」
サヤは遠くを見ながら今日起こったことを必死に整理しているそんな様子だった
喋る刀と出会い異世界に飛ばされれば整理するだけでも大変だろう
我はこんな身だし外の世界に興味があったからこれはこれでよかったのだ
サヤよ残念だったな
我の野望に巻き込まれてしまって
人混みを避けるように食事を持ってくるクママとノッホが見える
仲は悪くなさそうに見える
そういえばジュピと違ってサヤに対してあまり興味がなかったように見える
ホホゥこれが恋愛とか言うやつなのだろうか
確かにサヤとノッホを見ている時の顔つきが若干違うようにも見えるな
サヤには真面目で固い気がするが、ノッホに対しては優しい気がする
サヤを見てみると特に気にした素振りもない
まあサヤはそこいらへんめんどくせぇとか言いそうだしな
不変は勝手に納得していた