出会い その2
どのくらい歩いただろうか
サヤは疲労からだろうか不機嫌なのはわかっている
めぼしい食べ物も見つからず明かりは月夜?のみだ
人にも会えずではここがどこなのか無人島なのかそれなのかすらわからない
ここは話すべきだろうかそう思っていた矢先だった
「ナア、人とかいると思うか?」
不変はふむと言った表情をしたかった
「ひとまず森から出れれば何かしらわかりそうだけどな。こうも月夜だけではさっぱりわからぬ」
「チッ、やっぱりそうか。お前遠くまで感知できるとか便利な力はないのか?」
不変はふと考えた。必要ないからそこまで試したことはなかったのだ
「ちょっと試すかね。待ってみておくれ」
不変は視野感知を広げるイメージを試してみたが、変わらなかった
今度は意志疎通が可能なものが別にいないか感知してみる
「おいサヤ。意志疎通可能そうな気配が近くにいるぞ」
「お前の意志疎通可能とは私のような奴ってことか?」
「いや、サヤのような者は例外だ。基本は善良な者にしか意志疎通は出来ぬ」
「オマエ、投げてやろうか」
サヤの眼は笑っていなかった
「ちょ、ちょっと待て!!!まだ付き合いも浅いのだ。お前も善良かもしれぬだろう」
サヤは柄から手を離してくれたようだ
こやつとこの世界を旅する可能性もあるのかと思うとため息をつきたい気分だった
「デ?意志疎通は出来そうなのか?」
不変はそう言われて試すことにする
「我の声が届く者よ。話しを聞いてくれないか?」
森のどこかで「うわっ!?」と声が聞こえる
「姿を現してくれぬか?ここはどこなのだ?地球という単語を知っているか?」
そう言うとガサガサと音と共に男が一人サヤの前に姿を現した
「へ?目の前には女性だが、声は男のように聞こえたんだが。女装してるのか?」
その瞬間、男の顔の横を右ストレートが空をきった
「ちょ、ちょっと!?」
男は慌てて両手を挙げ左右に振っている
「私が女装に見えるか?」
サヤがきれかかっている、こいつはまずい
「あああ!すまん!!我はそこの女性の肩にぶら下がっている刀なのだ。おかしな話とは思うが声は違うであろう?それでひとまず納得してくれんか」
「へっ?あ~。あんた達が召喚されたのか?」
「召喚だと?そんな話し聞いたことないぞ。まあ元の世界に戻れなければ話しにならんだろうが」
「ふむ。召喚されるとたまにおかしなスキル持ったやつが来るらしいしその類かな?」
男は一人納得したような顔をしている
「まあこんな綺麗な顔した男とかいたらやばいもんな」
男はまた一人納得していた
「話しも通じてるようだしお前は私と同じ世界にいたものなのか?そうなら別世界というわけでもなさそうだが」
サヤがそこまで話したところで男は真面目な顔になっていた
「いいや。ここは別世界だ。ただ召喚されるのは日本人らしい。あんたも日本人なんだろ?刀背負っているし」
「確かに日本人だ。私の名前はサヤ。背中の刀は不変という。お前の存在を感知したのは不変だ」
「おっと。俺の名はクママ。日本人の名前はこっちでは隠してるんだ。なんかRPGっぽいじゃん?異世界とかさ」
クママと名乗った男はゲームとか言う世界に吸い込まれたとでも思っているのだろうか
「この世界は召喚者が圧倒的劣勢で未知の力を召喚しその力を利用して劣勢を挽回しようとしてるのさ」
「なんだと!?そんな理不尽で別世界に飛ばされたというのか?」
またもやサヤがきれそうだ
「ひとまず冷静に話しを聞こうではないか?サヤよ。我々はあまりに情報がないのだ」
クママは刀のほうにウィンクし、話しを続ける
「なぜか知らんが召喚に長けてるみたいでね。この世界では魔法と言われるものが強力なんだよ。たまたま召喚の魔法を見つけたみたいで手当たり次第に呼んだらしい」
「なぜ日本人だけなんだ?」
「召喚魔法はそこで技術としてストップしたらしい。だって人が呼べるんだからな。それがどうも日本人限定の召喚らしいんだ」
「チッ、私もめでたくその召喚魔法とやらのお眼鏡に叶ったってわけか」
サヤは唾をまた吐いてる。もうここまでくると馴れてくるな・・・
「まあそういうことになるな。サヤさん。あんたは喧嘩強いかい?」
クママは体を見回していた
「喧嘩していた最中にこっちの世界に飛ばされたんだよ!」
サヤは思わず怒鳴っていた
あちこちで鳥が飛ぶ音が聞こえた
「そうでしたか。確かにひょろひょろでもなさそうだし、その刀結構重そうだしな。そんなの振りまわせるのはなかなかいないと思うぜ」
「振りまわしたのは飛ばされる前の一振りだけだがな。それは召喚されるのに関係あるのか?」
サヤはクママの目をじっと見つめ答えを待っていた。
クママはちょっと時間を置いて口を開いた
「何かに秀でてる人が召喚されやすいってのは聞いてるんだが、条件は未だに不明らしいんだよ」
サヤは格闘だけで手下どもをのしていたからそれが認められたのかなと不変は納得する
「その話しぶりだと他にも召喚された日本人が大勢いるってことか?」
サヤは真面目な顔でクママに問いかける
「その通りだ。この島には召喚された日本人が住んでいる。召喚する側も儀式のためにこの島に上陸するんだ。言語とかなぜか通じるんだ。普段生活するぶんには問題なく交流出来ると思うぜ」
「そこで食事は出るか?実は先ほどからお腹が空いていてな。問題ないなら安全な場所でもっと情報をくれないか」
普段からこうしていてくれればいいんだがな
不変は呟きたい気持ちを抑えながら夜空を見上げていた