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悪の凶弾に気を付けて。  作者: うい
1/7

プロローグ

不定期更新になりますがよろしくお願いします。

聖アリ暦677年、魔晶石による革命的な発明がなされた。

今まで見向きもされなかった屑石だった魔晶石に一定量以上の熱を加えるとその体積の数倍にも及ぶ魔力を発する事が解った。

それを組み込んだ動力機関、俗に言う魔晶機関が生活の一部に溶け込むのはそう時間はいらなかった。

そうしてここ聖帝国アリは世界の中心国としてだけではなく、産業の中心国として発展していくのにもまた、時間はかからなかった。


 ※


聖アリ暦700年。

夜の聖帝国は昼間と違い人通りも少ない。

魔晶機関の発明により商人や様々な国の人々がやってくるようにはなった。

この三十年間で、唯一神、聖アリの名の下に発展してきた聖帝国アリは産業開発の国アリとしても勢力を拡大してきた。

国は潤い人材も潤い、活気に溢れそしてそれはこの国だけではなく他の様々な国々にも多大なる影響を及ぼした。

だがそれは昼の姿。

夜の聖帝国には人通りが少ない、いや無いといっても過言ではない。

魔晶機関は様々な利益を生み出した。これは間違いない。

だがメリットだけでは無かった。

魔晶石は一定量の熱を加えるとその体積の数倍以上の魔力を発する。

そしてそれと同時に大量の魔素と呼ばれる煙を排出する。

この魔素は魔力と違って人体に有害な煙らしく、これを例えば妊婦が吸うと異常を持った子供が生まれるとか何とか。

更にその煙は人体に有害なだけではなく町全体すらも白く覆いつくす。

それがこの魔晶機関開発の地、聖帝国アリともなれば尚更。

夜にもなればまるで町全体が濃い霧にでも包まれたかの様に眼前の道すらよく見えなくなる。

人体にも有害といわれ更に視界まで塞がれる様な煙が漂い危険な夜中、誰も好んで出歩く様な人間は居ない。

特別な事情が無い限りは。

そう、例えば祖母が危篤状態だとか今すぐ行かなければ彼女に別れを告げられるだとか。


例えば『誰にも知られたくない様な事情がある場合』だとか。



「全く、今月に限って何であのジジババ夫婦は金返しにこねーんだよ!」


俺は煙を直接吸い込まない様に事務所に備え付けてある浄化魔法がかけられているマスクに手を伸ばしながらため息を吐きながら一人ごちる。

マスクの紐を頭の後ろで結び再びため息。

誰が好き好んでこんな煙深い夜に出歩かなければならないのか。

毎月の返済利子をかなり抑える代わりに必ず月末の夕方には返済のために事務所に来いと言っていたのに今月に限ってやってこない。

先月だったならまだ良かった、ところが何故、何故今月なんだ。


「明日朝一でここのショバ代払わなきゃならんのさっきまで忘れてた俺を殴りたい」


明日は三ヶ月に一回のショバ代支払い日。

にもかかわらず、それを忘れて酒タバコ女と使い続けてた俺には金が無い。それに気付いた時の絶望感よ。

だが幸いにも、そう幸いにも今日はあの毎月必ず金を返しに来る老夫婦の返済日。

どうにかかき集めた20万ゼニに老夫婦からの返済額の10万ゼニで30万ゼニ。

そしてショバ代は月々10万ゼニ、三ヶ月で30万ゼニ。

どうにか足りるはず、足りるはずだった。

俺はイライラしながら小瓶に入った蒸留酒を一煽り。


「くっそ、バックれは絶対許さねえからな!」


ドンっと俺は空になった小瓶を机に置く。

ん、とその時に机に広がっていた新聞の見出しに大きく書かれていた文字が目に入る。


『引き裂き魔、またもや出現!?今度の犠牲は若き女性!』


「引き裂き魔、ね・・・。そういやぁここ三ヶ月くらいで出てきた連続殺人犯だっけか。」


どうやら今回の現場は俺の事務所のある聖帝国アリ東3番城壁街の近くだ。

ふむ、と俺は懐から鍵を取り出しその汚い事務机の鍵付きの引き出しに差し込む。


「一応持っておくか」


俺はそこから一丁の魔動拳銃を取り出して残弾を確認する。

カシャンとマガジンをしまうと懐に鍵と共に仕舞う。


「こんな夜中に出歩く奴なんておっかねえ奴しかいねえもんなぁ・・・」


くくっと、自嘲した笑いを漏らして扉を開ける。

俺は「金貸し屋」ジャック。世間で言う「おっかない奴」だ。



2/28 ショバ代を15万ゼニから30万ゼニへと変更。それに伴いかき集めたお金の額を変更。

3/1 全体の魔昌石の昌の字を晶の字に変更。

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