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加速する理不尽と抗う意思

「貴方がシン様ですね。お話はうかがっています。此方が報酬の金貨2枚になります。」


俺は受付で報酬を受け取る。


「確かに、それと冒険者登録をしたいんだが…」


「はい、登録ですね。此方の書類に必要事項をご記入ください。」


渡された書類には名前と年齢、得意武器、適正魔法、スキルの記入欄があった。


名前は家名は書かずに只シンと書いた。得意武器は剣、魔法適正は無し、スキルは危機察知だけを記入した。


「こちらのギルドカードに血を垂らしてください。」


俺は渡された針で指先を刺して血を垂らす。


「はい、此れでシン様の登録は完了しました。ギルドランクFからのスタートになります。ランクは依頼を受け、達成しギルドにその実力を認められる事で上がって行きます。また素行なども考慮に入れられあまり悪さをされますと、ランクが上がりずらくなります。ランク上限はSSSとなっており現在はSランクが5名、SSランクが2名、SSSランクは居ません。また、この街には中央に大規模なダンジョンがある為そちらで入手した魔石や素材も此方で買い取りいたします。その質などでもギルドへの貢献度として認知されランクが上がる場合があります。それと、ギルドは冒険者間のトラブルには一切関与しません。明確な証拠が有れば犯罪者には罰を与えますが。」


「はい、分かりました。」


「それでは、良い冒険を」


こうして俺は冒険者になった



「今日は色々買い足さなきゃな…依頼は明日にしよう」


俺は取り敢えず既に刃毀れが酷く限界まで来ている剣の替えを購入するためにギルドを出た。





「おい兄ちゃん儲かってるみたいだなぁ」


ニタニタしたおっさんがギルドを出た俺の行く手を阻んだ。


不味いな、もう囲まれてる…


「そんな事無いですよ…。俺は急いでいるのでこれで失礼します。」


そう言って出来るだけ穏便かつ迅速にその場を離れようとするが取り巻きに阻まれる。


「おいおい、逃げる事ないだろ?ちょっと社会勉強として俺達について来いよぉ、俺はCランク冒険者やってんだ。」


周囲の人間も我関せずと言うように視線を逸らせて足早に去って行く…

俺は腕を掴まれて裏路地へと引きずられていく。




「おらぁ!」


俺は現在サンドバックにされている。


「おいおい、こいつ今登録する前に金貨2枚も報酬貰ってるからどんなけ強いのかと思ったら只の雑魚じゃねーか!」


「金貨1枚と銀貨95枚…ひっひっひ、結構儲かったなぁ~」


クソ、矢張りステータスの差で反撃も出来ない。


「…ウグゥ」


「いいね~、いい感じにうめくじゃない。このまま放っておいてもいいが…、そうだ、あそこに持っていこう」


更にニタニタし始める冒険者と思しきおっさん


そして俺は何か薬を飲まされ麻袋の様なものに詰められた。

そこで、俺は意識を失う。





そして意識が目覚めたのはダンジョンのなかっだった。


「よおぉ、目え覚めたか、此処はダンジョンの第3層目だ。」


此方に来てからこんなことばっかりだ…

厄介事に群がられ、その度に意識を失う。

で、目が覚めたら厄介事の種。

目が覚めてから穏やかで居られたのはシンシアさんとシエルの時くらいだ…


「そんでもって、この部屋の中央には転移トラップが設置されている。行先はこのダンジョンの第57層、ランクに換算するとBランク最上位ってところだ。部屋自体隠し部屋みたいなもんでな、此処を知ってんのは俺ら位だ。」


転移トラップだと?しかもそんな深くに飛ぶ物…


「で、本題だが、俺は余興を思いついた。お前にはこのトラップに自分から掛かってもらう。」


ゲラゲラと他のヤジたちも笑い始める


は?

こいつは何を言っているんだ?


「キョトンとしてんじゃねーよ!最高だろ?お前の絶望に歪んだその顔、あー想像するだけでたまらないね!」


狂ってやがる…!


「慈悲だ、その腰につけてるボロボロの剣はそのまま持ってっていいぜ。」



チッ!何かないか!


「そろそろ、お時間だぜ。さっさと行っちまいな!」


思いっきり蹴りつけられ吹き飛ぶ俺


そして吹き飛んだ先は部屋の中央



トラップが起動する。


こうして俺はダンジョンの下層まで飛ばされた。






チクショウ…


そして俺は今ダンジョンを慎重に移動していた。

幸い観察眼のお陰でトラップに引っかかることは無い。


「ハァ…ハァ…」


しかし精神消耗が激しく現在俺は激しく消耗していた。

おまけにサンドバックにされた為に体中痛い。


ここに送られてから早30分が経過している。

まだ魔物には一度も遭遇していないがそれも時間の問題だろう…


「クソッ!!なんで俺ばっかりこんな目に…!才能が無いのがそんなにいけないのか!!」


シンは精神的にかなり追いつめられていた。

幾たびにも及ぶ不幸に精神は悲鳴を上げている。


しかし、シンは死ねない、未だに生を諦めれは居なかった。

それは、シンシアを…シエルを救う事が出来きず、のうのうと逃げ去った自分が許す事が出来ないからだ。

自身は彼女達を置いて来て生き延びたのだ。生かされたのだ、ならば死ねない…。野垂れ死ぬ事など許されはしない!!…と……


そしてそれは現れる。


シンの視界に入る三体の大きな影、あちらも既に此方に気づいている様だ。

それは、ブタの様な顔を持ち槍や剣を持った。所謂オークと言うやつだ。

シンは知らないが、このオーク達は分類的にハイオークと言われていてオークの上位種だそうだ。



クソ!どうやったらこんなに早くこっちに気付んだよ!


シンは既に逃走を開始していて、全力で疾走している。


だが、オークの方が早い、既にかなり距離を詰められている。


そしてシンは立ち止まる。


「クソ!!こんな時に行き止まりか!」


そう行き止まり、完全に退路を閉ざされ最早生存は絶望的

そしてオークがシンに完全に追いつく


「来やがれ…、俺はまだ死ねないんだ…」


シンはボロボロの剣を抜き構える


しかし、ステータス差が圧倒的なためオークの攻撃を回避する事もいなす事も出来ずに槍の一撃でシンを貫いた。


「…グフ!」


シンは吐血しながら床に倒れ込む。





死ねない…




こんな所では死ねない…



シンは意識が朦朧とする中必死に死に抗う

しかし、小説の主人公みたいに都合良く真の力が発現する事も、神様や悪魔なんかが語り掛けて来て契約する事も無い。ましてや世界のシステムが無才と判断しとわざわざ称号を与えるくらいだ。そんな事が有る訳がない…


それでもシンは抗う…、必死に自身が最も信頼出来、尚且つ最も熟練したものを、観察眼をフル活用して勝機を探す。




そして、一つだけ見つけた。自身が勝つ可能性を…それは掛け、下手をすると自身も死ぬ賭けを…


シンは自身に残る気力を振り絞りオークに這い寄る。

オークは苦しむ俺を見て遊んでいる様だ…。勝機は相手が油断している今しかない…



そしてシンはオークの足元の床を思いっきり押し込む。

その部分だけが沈みカチッという音がした。

その瞬間左右の壁がズレて無数の槍を射出した


シンは自身の危機感知スキルの指示に従いそのままじっと動かず床に倒れ伏す。


「ブモォォォーーー!!」


槍はシンの頭上を通り過ぎオークのみを貫いていく。



「ざまーみやがれ…」


シンは剣を拾い虫の息の三体のオークにそれぞれ止めを刺していく


それが終わるとシンは壁によし掛かり座り込む


「どうだこのやろう…勝ったぞ…」


シンはオークを倒しレベルが上がったおかげか痛みが引き傷も若干回復しているが矢張り今のままでは長くは持たない…


シン・サキヤ-------

Adaptive Status ON

Lv.20

種族.人間

Job.剣士


HP.100/1200

MP.0/0


STR.108

VIT.150

AGI.115

INT.80

MND.0

DEX.103


スキル.

 異世界言語Lv-

 観察眼Lv10.MAX

 鑑定Lv1

 回避Lv1

 心眼(偽)Lv1

 危機感知Lv2


称号.

 巻き込まれし者

 異世界人

 才無き者

 観察する者

 抗う者


-------

三体とは言え格上を倒したためかLvが7も上昇している。


観察眼がMAXになってる…


それに鑑定が増えてる…


-------

鑑定

取得者が選択したものに対しLvに応じた情報を閲覧する事が出来る。

観察眼の類似スキル。本来はそれ単体として機能するが、観察眼がLvMAXに至ったため観察眼との並列使用が可能になっている。


観察眼LvMAXに伴い変則的に取得

-------


試しにオークを鑑定してみる


-------

オークの死体

既に死したオーク、体内には未だ魔石が有り採取可能、位置は心臓部分

現在地がダンジョンの為、放置し続けるとダンジョンに取り込まれる。

-------


へー、こいつは便利だ。薬草とか毒草とか食い物とかの選別に困らなさそうだ…

観察眼との並列使用で情報量も通常のLv1より多いみたいだ


「まあ、生きて帰れたらの話しだけど…」


シンは体を引きずって試しにオークの死体から魔石を取り出した。


「此れが魔石か…」


-------

魔石

魔力を宿した石、種類があり、それによって効果が異なる。

主に建物内の明かりや魔道具の燃料に使われる。

-------


三体から取り出した魔石はそれぞれ色が異なる事から同じ種類の魔物から同じ種類の魔石が取れる訳では無いと思われる。


それにしても、それそろヤバいな…、次第に目が霞んで来た…


そう言えばシンシアさんが作ってくれた朝食以来何も食べてないな…


「ハハ…、こんな時に腹が減ったってか…。我ながら呑気だ…いっそこのオークでも食ってやろうか」


そんな、冗談のつもりだったが意識すると空腹が抑えられなくなって来た。


「おいおい…冗談きついぞ、こんなの食いたくねーよ…」


しかし、精神、肉体ともに消耗が激しいシンは何かを食べたいと言う欲求を抑えられなかった。


剣でオークの肉を削り少しづつ口に含んでいく…

どのくらい食べただろうか、そこまで時間は立っていないはずだ。それは直ぐにやって来たのだから。



全身に走る痛み、シンは突然の事に驚き、地面を転げまわる。



「グッ…!ああ、あああぁっぁぁ!!!」




拒絶反応



ダンジョンに居る魔物は通常よりも魔力を多く含んでいるため食べると過剰な魔力摂取に人族では耐える事が出来ず拒絶反応を起こして最悪の場合死んでしまう。

しかもシンはMP、MND共に0の為その負荷は常人の比では無い



その痛みは長時間続きシンを蝕み意識を刈り取った。

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