プロローグ
見渡す限り一面の瓦礫の山が広がり、立ち上る炎によって真っ赤に染まった空の下、満身創痍の男とハ頭八尾の蛇が対峙していた。
「全く馬鹿なことをしたものだよ」
片腕が千切れ、抉られた脇腹から血を流しながらそれでも男は笑っていた。
「身に余る力を手に入れ、少し自惚れていたらしい」
風に吹かれただけで、倒れてしまいそうな男の姿を恐れのような感情の色を浮かばせて睨む十六の目。
「多分これ以上無理をしたら私は死んでしまうだろう 嗚呼、やだやだ死にたくないな」
言い表しようのない恐ろしさを男から感じ取った蛇は、本能に突き動かされるままに獲物を仕留めにかかった。
「だがな、私1人の命で大切な人を救えるというのなら、この命いくらでもくれてやろう」
八つの牙が迫る中、男は真っ黒な瞳に不屈の意志を讃えて言い放つ。
「さあ、行くぞ化け物 私たちの神話の終わりを始めよう」
この言葉を最後に、刃の嵐が吹き荒れた。
これは、1945年8月6日広島、世界で初めて【因子持ち】が暴走した記録。
最後の日付を見てピンと来た方もいると思いますが1945年8月6日、これは広島に原爆が落ちた日です。こんな感じで我々の住む世界と歴史が変わっています。次回からタイトルの意味だとか主人公登場とかして話が進んでいくと思います。