ナルシスト
大富豪の、18歳の愛娘が奇術師に呪いをかけられてから早5年。深い眠りについた彼女は、1度も目を覚ましていない。
1年かけて、ようやく問題の奇術師を見つけ出し、尋問すると
「その娘が心の底から信じ、愛しているものと接吻しない限り、呪いをとくことはできない」そう不気味に笑うだけだった。
それから更に5年。愛娘はまだ目を覚ましていない。と言うよりも、大富豪が呪いをとこうとしないのだ。
「旦那様、私みたいな者がこんなことを聞くのはおこがましいかもしれませんが……どうしてお嬢様の呪いをとかないのです?」
庭師がおそるおそる聞くと、大富豪が物凄い剣幕で怒鳴った。
「出来るわけがないだろう!」イライラしながら大富豪が叫んだ。「どうやったら自分自身と接吻できるというんだ!」