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一人で十分

朝の点呼で、配置が変わった。


「本日の訓練は小隊再編成で行う」


三崎教官の言葉に、視線が動く。


「灰原ユウトは単独行動班とする」


一瞬、ざわめきが走った。


ユウト自身は、特に何も感じなかった。


合理的だと理解できたからだ。


索敵、解析、判断、実行。


すべてを一人で完結できる能力者に、連携は必須ではない。


「……待ってください」


声を上げたのはミコだった。


「それは危険です」


「危険性は把握している」


教官は視線を逸らさず答える。


「だが現状、彼の判断速度に他が追いついていない」


否定できなかった。


訓練場で、ユウトは一人で立っていた。


周囲に味方はいない。


通信回線も限定され、支援は最低限。


それでも不安はなかった。


むしろ、思考が静かになる。


開始の合図と同時に、敵影が動いた。


【アナライズ】

能力:模擬複合兵装

能力構造:反応速度・演算処理統合

代償:神経疲労蓄積

弱点:長期稼働による判断遅延


視界に情報が重なり、選択肢が一つに収束する。


移動。


制圧。


遮断。


すべてが無駄なく繋がり、数分で訓練は終了した。


成功率百パーセント。


被弾なし。


「……速すぎる」


アオイが端末を見ながら呟く。


「部隊行動としては、異常」


結果だけを見れば完璧だった。


午後、管理庁本部からの視察が入った。


黒いスーツの監督官が訓練データを確認し、静かに頷く。


「解析者の単騎運用、非常に効率的ですね」


鷹宮レイナ。


能力を持たない監督官。


「部隊連携より、単独投入の方が損耗率が低い」


その言葉に、ミコの表情が強張った。


「それは……人としての話ですか?」


「任務としての話です」


即答だった。


夜。


203号室のベッドは、ひとつだけ空いていた。


ユウトは臨時個室へ移動させられていた。


「……一人でいいんだよな」


呟いても、返事はない。


静かすぎる部屋は、思考を加速させる。


誰にも合わせなくていい。


誰かの速度を待たなくていい。


恐怖も、迷いもない。


ならば一人で十分だ。


そう結論づけるのは、あまりにも簡単だった。


だが――


その夜、廊下の向こうから聞こえた話し声が、耳に残った。


「……戻れなくなる」


「もう、人として見られなくなる」


誰の声だったのかは分からない。


ユウトは天井を見つめたまま、瞬きを一度だけした。


合理的であることと、人であること。


その境界線が、静かに遠ざかっていく。

"ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


この物語は「観測されることで」先へ進みます。

もし少しでも続きを見届けたいと思っていただけたなら、

ブックマークという形で、観測に加わってもらえると嬉しいです。


次話も、アナライズは続きます。"

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