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追いつけない速度

朝の訓練開始前、誰もユウトの隣に立たなかった。


意図的ではない。


だが自然と、距離が空いていた。


「配置につけ」


三崎教官の号令で隊列が動く。


ユウトは最前列へ進み、後ろにソラとレン、少し離れて女子班が続いた。


この並びが、今の関係をそのまま映しているようだった。


模擬市街訓練、三日目。


今回は敵役として上級訓練生が投入される。


「通信遮断あり。視界共有も限定だ」


アオイが短く告げる。


「単独行動は危険度高」


ユウトは頷いた。


理解はしている。


だが同時に、別の答えも見えていた。


開始の合図と同時に、索敵音が鳴る。


建物の影から反応が浮かび上がる。


「右、二」


「左、上」


情報が飛び交う。


ユウトはそのすべてを頭の中で重ね合わせた。


最短経路。


最小被害。


自分が前に出れば、全体損耗は最も少ない。


そう判断した瞬間、身体が動いていた。


「待て――!」


声が背後で途切れる。


瓦礫を蹴り、路地へ滑り込む。


【アナライズ】

能力:索敵補助型兵装

能力構造:反応速度・判断精度補正

代償:神経疲労

弱点:連続使用による感覚鈍化


敵影を二つ、同時に捕捉。


処理。


動作は最小限。


だが次の瞬間、爆音が響いた。


「ソラ、後退!」


遅かった。


衝撃に吹き飛ばされ、ソラが地面を転がる。


「……っ、息が……!」


真白が駆け寄り、再生を施す。


「大丈夫、命に別状はない!」


訓練停止の警報が鳴った。


成功判定。


だが誰も顔を上げなかった。


「ユウト」


三崎教官の声は低い。


「お前は正しい」


一瞬、胸がざわつく。


「だが、正しさだけで動く者は、部隊を壊す」


ユウトは返せなかった。


反論の材料が、見つからない。


夕方、医療室前のベンチ。


ソラは酸素マスクを外しながら、苦笑した。


「……追いつけねえよ」


「何に」


「お前の判断」


冗談めかして言ったが、笑ってはいなかった。


「怖くなくなったんだろ?」


ユウトは頷く。


「だから速い」


「だから、置いてかれる」


その言葉が、静かに胸に落ちた。


夜。


203号室は珍しく無言だった。


レンは遮断を深くし、ミコも女子側の部屋で言葉少なにしている。


ユウトは天井を見つめながら、自分の一日をなぞった。


失敗はしていない。


結果も出ている。


それなのに、距離だけが広がっていく。


誰もが“同じ方向”を向いているはずなのに、速度が違う。


速すぎる者は、並べない。


その事実を、ようやく理解し始めていた。


だが理解したところで、足を緩める理由は見つからない。


恐怖はない。


迷いもない。


あるのは最短距離だけだ。


追いつけないのは、周囲なのか。


それとも――自分なのか。

"ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


この物語は「観測されることで」先へ進みます。

もし少しでも続きを見届けたいと思っていただけたなら、

ブックマークという形で、観測に加わってもらえると嬉しいです。


次話も、アナライズは続きます。"

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