表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/22

止まれない距離

朝の点呼が終わっても、ユウトの鼓動はほとんど変わらなかった。


以前なら、整列するだけでわずかな緊張があったはずなのに、胸の内は驚くほど静かだった。


「――昨日の任務について通達する」


三崎教官の声が響く。


「灰原ユウトは前線判断において危険行動が確認された」


ざわめきが起こる。


ユウト自身には、何が問題だったのか分からない。


危険度を理解し、最適解を選び、結果として全員が生還した。


それ以上の正解があるとは思えなかった。


訓練後の食堂。


ソラがトレーを置きながら、ちらりとユウトを見る。


「お前さ……昨日の動き、速すぎた」


「そうか?」


「そうだよ。俺たちが声出す前に、もう前に出てた」


レンも短く頷いた。


「判断が早いのは利点だが、共有がないのは危険だ」


その指摘に、ユウトは首を傾げる。


共有する必要性が、理解できなかった。


自分が動けば結果が出る。


なら、迷う時間は無駄ではないのか。


午後は模擬市街訓練だった。


瓦礫を模した障害物が並び、敵役の無人兵器が巡回する。


「今回は連携重視だ」


三崎教官が告げる。


「単独行動は禁止」


開始の合図と同時に、索敵音が鳴り響いた。


レンが結界を張り、ソラが風圧で視界を確保する。


アオイの視覚情報が共有され、ミコが感情の変化を読み取っていく。


その中で、ユウトだけが違っていた。


敵影を捉えた瞬間、身体が勝手に動く。


走る。


距離を詰める。


危険度を計算し、最短距離を選ぶ。


「待て!」


背後から声が飛ぶ。


だが足は止まらなかった。


【アナライズ】

能力:模擬強化兵装

能力構造:反応速度増幅

代償:神経疲労

弱点:過負荷時の一時停止


理解した瞬間、攻撃経路が一本に絞られる。


撃破。


あまりにも早く、訓練は終わった。


「何やってる!」


三崎教官の怒声が響く。


「単独行動禁止だと言ったはずだ」


「結果は出ました」


ユウトはそう答えた。


その瞬間、周囲の空気が凍りつく。


「結果だけでいいなら、チームはいらない」


教官の言葉が重く落ちる。


夕方、医療室。


定期検査の数値は安定していた。


異常があるのは、感情項目だけだ。


「恐怖反応は完全消失したままです」


医師の淡々とした声。


「今後、危険回避判断が極端になる可能性があります」


夜、203号室。


ソラがベッドに腰掛け、珍しく黙っていた。


「……なあ」


少ししてから口を開く。


「俺たち、お前と一緒にいるのにさ」


言葉を探しながら続ける。


「同じ場所にいない気がする」


ユウトは返す言葉を見つけられなかった。


理解はできる。


だが共感できない。


危険を恐れないことは、効率が上がる。


なのに、それが“仲間を置いていく”行為になる理由が分からなかった。


消灯後、天井を見つめながら思う。


恐怖がなくなっただけだ。


感情を一つ失っただけだ。


それなのに、距離は確実に広がっている。


誰かが止めなければ、もっと速く、もっと深く踏み込んでしまう。


だが今の自分には、止まる理由そのものが存在しなかった。

"ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


この物語は「観測されることで」先へ進みます。

もし少しでも続きを見届けたいと思っていただけたなら、

ブックマークという形で、観測に加わってもらえると嬉しいです。


次話も、アナライズは続きます。"

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ