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能力者同士

警戒区域の空気は、張りつめていた。


市街地東部、閉鎖された再開発区画。


二名の能力者が衝突し、管理庁の介入が追いついていない。


「解析者は現在別任務中です」


管制の報告が、無情に響く。


三崎教官は短く舌打ちした。


「……時間を稼ぐしかない」


現場では、すでに能力が激突していた。


一人は電流操作。


もう一人は金属変質。


放電が走るたび、鉄骨が溶け、路面が爆ぜる。


「近づけない……!」


ソラの風圧が弾かれ、身体が後退する。


レンの結界も、衝突の余波で軋んでいた。


「感情、完全に振り切れてる」


ミコの声が上ずる。


「互いに恐怖と怒りしか残ってない」


止める手段がない。


説得も、交渉も届かない。


「撤退命令は?」


「まだ出ていない!」


上空を旋回する無人機が、淡々と記録を続けている。


その様子が、異様に冷たく見えた。


「……来るぞ!」


金属の槍が空を裂き、放電が直撃する。


衝撃で一人が吹き飛び、ビルの壁に叩きつけられた。


即死だった。


残った能力者は、その死体を見ても止まらなかった。


恐怖も、後悔もない。


ただ破壊衝動だけが増幅されていく。


「これ以上は無理だ!」


三崎教官が判断する。


「管理庁、強制介入を要請する!」


数秒後、上空から低い駆動音が響いた。


粛清部隊。


能力ではなく、規格兵器による制圧部隊。


「退避!」


次の瞬間、白い閃光が視界を覆った。


衝撃。


爆風。


音が遅れて襲ってくる。


瓦礫が落ち着いたあと、そこには何も残っていなかった。


二人目の能力者も、完全に消失していた。


現場に沈黙が降りる。


「……終わった」


誰かが呟いた。


だが勝利ではなかった。


救われた命は、ゼロ。


ただ被害が拡大しなかっただけだ。


帰投後、報告書にはこう記された。


《能力者同士の衝突により、両名死亡。管理庁介入により事態収束》


事実だけ。


理由も、感情も、記載されない。


夜、施設の屋上。


ソラが柵にもたれて空を見上げていた。


「ユウトがいれば……」


その言葉は、途中で止まった。


いれば助かったかもしれない。


だが同時に、彼が来なかったから死んだわけでもない。


世界は、誰か一人で救えるほど単純じゃない。


遠くで救急車の音が鳴っている。


今日もまた、どこかで能力が暴れている。


ユウトのいない戦場でも、死は平等だった。

"ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


この物語は「観測されることで」先へ進みます。

もし少しでも続きを見届けたいと思っていただけたなら、

ブックマークという形で、観測に加わってもらえると嬉しいです。


次話も、アナライズは続きます。"

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