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それでも人間だと

出動命令が下りたとき、そこに灰原ユウトの名前はなかった。


「……単独任務中か」


ソラが苦笑する。


「もう、別枠扱いだな」


編成表には、風圧、結界、医療、視覚共有、感情感知。


解析者の欄だけが空白だった。


「行くしかない」


三崎教官の声は、いつもより硬い。


任務は能力犯罪の制圧。


対象は二名。


連携能力を持つ兄弟型能力者。


「解析なしでの戦闘だ。慎重に行け」


市街地の裏路地。


夜雨で濡れた路面が光を反射する。


「右、反応あり」


アオイの声で全員が身構える。


ソラが風圧を弱めに放ち、距離を保つ。


だが敵の連携は速かった。


一人が視界を奪い、もう一人が死角から踏み込む。


「レン!」


結界が間に合わず、衝撃がソラを弾き飛ばす。


「っ……!」


「ソラ!」


真白が駆け寄ろうとするが、二人目の能力が進路を塞いだ。


「ミコ、感情は!」


「焦りが……強すぎる!」


判断が遅れる。


いつもなら、ここでユウトの声が入っていた。


構造。


弱点。


最短経路。


それがない。


「下がれ!」


三崎教官が叫ぶ。


だが撤退路すら読めない。


「……違う」


ミコが息を呑む。


「今まで、どれだけ助けられてたか……」


アオイの視界共有で、ようやく敵の連携パターンが見え始める。


「右が起点だ。遮断できれば――」


「レン、賭けるぞ!」


結界が強引に張られ、風圧が正面から突き抜ける。


乱戦の末、敵は撤退した。


勝利とは言い難い結果だった。


救急車のサイレンが夜に溶ける。


ソラは担架で運ばれながら、天井を見つめていた。


「……なあ」


かすれた声。


「ユウトがいたら、早かったよな」


誰も否定できなかった。


施設へ戻ると、203号室は静かだった。


空いたベッドが、まだそこにある。


「強すぎるってさ」


ミコがぽつりと呟く。


「便利すぎるって、怖いんだね」


彼がいれば、被害は減る。


だが彼がいるほど、皆は判断を委ねてしまう。


夜。


個室のユウトは、別の場所で報告書を読んでいた。


同じ時間、同じ街で仲間が戦っていたことを、後から知る。


「被害者三名、軽傷二」


数字は小さい。


だがそこに、彼の名前がない。


助けられたかもしれないという仮定が、どこにも書かれていなかった。


ユウトは端末を閉じる。


人間であること。


それは、役に立たない非効率なのか。


それとも――失ってはいけないものなのか。


答えはまだ、どこにもなかった。

"ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


この物語は「観測されることで」先へ進みます。

もし少しでも続きを見届けたいと思っていただけたなら、

ブックマークという形で、観測に加わってもらえると嬉しいです。


次話も、アナライズは続きます。"

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