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正しい兵器

出動命令は、簡潔すぎるほど簡潔だった。


「灰原ユウト。単独投入」


それだけで、同行者の名前はなかった。


輸送車に乗り込むと、座席は一つだけ使用されている。


向かいの席も、後部も、すべて空席。


通信回線は開いているが、聞こえるのは管制音だけだった。


「現場は廃工場地帯」


鷹宮レイナの声がイヤーピース越しに響く。


「敵能力者一名。重力偏向、黒瀬ジン」


名前を聞いても、胸は動かない。


再戦だと理解できるだけだ。


工場地帯は静まり返っていた。


錆びた鉄骨、割れた窓、風に揺れる看板。


人影はない。


「周囲に一般人なし。被害制限は不要」


その一言で、条件が整理される。


守るものがない戦場。


なら、最短で終わらせればいい。


「来たか、解析屋」


黒瀬の声が高所から降ってきた。


「今度は仲間なし? 随分と割り切ったな」


返事をする前に、重力が歪む。


足元が引き剥がされ、視界が上下反転する。


【アナライズ】

能力:重力偏向

能力構造:視線方向基準の重力軸再設定

代償:平衡感覚の慢性低下

弱点:再設定時の硬直


理解はすでに済んでいる。


前回と同じ構造。


違うのは、止める声が存在しないことだけだった。


瓦礫を蹴り、死角へ回る。


視線が追う前に、距離を詰める。


重力が反転する瞬間、その硬直に合わせて撃つ。


拘束弾が命中し、黒瀬の身体が地面へ叩きつけられた。


「……は?」


拍子抜けした声が漏れる。


戦闘は三十秒もかからなかった。


「目標無力化を確認」


管制の声が淡々と続く。


「被害ゼロ。完璧な成果です」


ユウトは、倒れた黒瀬を見下ろしていた。


勝った。


確実に。


だが達成感はない。


あるのは、数値が整ったという理解だけだ。


「帰投してください」


その指示に、迷いはなかった。


施設へ戻ると、誰も出迎えなかった。


報告書は自動生成され、評価ランクは最高値。


「優秀な兵器ですね」


誰かがそう呟くのを、耳にした気がした。


夜、個室。


ベッドに腰を下ろし、ユウトは天井を見る。


仲間がいれば、声があった。


止める声も、無茶だという叫びも。


今はない。


速い。


正確。


無駄がない。


それは理想的な戦力だった。


だがその理想の中に、人間が存在しないことを、誰も問題にしなかった。


自分ですら。


「……正しいんだろ」


そう呟いても、返事は返らない。


正しさの代わりに残ったのは、静けさだけだった。

"ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


この物語は「観測されることで」先へ進みます。

もし少しでも続きを見届けたいと思っていただけたなら、

ブックマークという形で、観測に加わってもらえると嬉しいです。


次話も、アナライズは続きます。"

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