表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

エロ本が伝説の魔導書だった件

世界のあり方を変えるほどの魔導書。

中身がエロ本?

ここはミアモール国の王都の外れにある、エンブラソ家。

優秀な魔女(ウィッチ)を多数輩出し、敵国やモンスターを打ち払って来た誇り高き貴族である。

百年前までは。

エンブラソ家の女には遺伝という形で、血族にしか使えぬ数多の伝承魔法があった。

それらは神の仕業と言われ、吟遊詩人の伝承歌(サーガ)として歌い継がれてきた。

その遺伝が百年前に途絶えた。

結果、領地は荒れ果て、きらびやかな豪邸は荒廃し、使用人すら雇うことができなくなった。

しかしそれも今日までだ。

私は百年ぶりの適合者であり、魔女の素質を持っている。

15歳の成人を迎えた今日、お父上から古より伝わる魔導書を拝受した。

「――光よ」

漆黒の闇であった室内に、太陽よりなお眩しい光球が生まれる。

無限に体内から溢れる魔力。

一般人が使う魔法など既に極めていた。

その気になればこのあたり一帯に雨を降らすことすらできる。

力を持たぬものからしたら、既に奇跡に似た力。

私はその先、禁呪とさえいわれる伝承魔法に手を出す。

「私がエンブラソ家を再興するのだ」

自室の机の上、私はその本に敬意を払ってひと撫でしてから開いた。

なるほど、エンブラソ家は恋の女神様の加護を受けているらしく、この魔導書には神々が使う秘術が記されているとのこと。

我が家の歴史が刻まれた序章を過ぎると、様々な魔法が記されていた。

癒しを与える魔法、魔力の鎧を纏う魔法、天を切り裂く雷鳴を呼ぶ魔法。

ひとつひとつが歴史を変えるような魔法。

「すばらしい、すばらしいわ」

貴族特有の長い金髪を振り乱しながら読み進める。

夜が明け朝日が訪れたころ、私はすべての魔法を取得した。

これで正しく詠唱を行えば私は大陸最強の魔女となれる。

感情を込め、抑揚をつけ、一語一句間違えず、天の女神さまに聞こえるように高らかに詠唱すれば、奇跡の担い手となれる。

私は数百年守り続けられた家宝の魔導書を手に取り、あらん限りの力で床に投げつけた。

バアアアアアアアン

「……エロ本だこれ」

私は机に肘をつき頭を抱えた。

どうしてこうなった。

いや、魔法は素晴らしいよほんと。

死者を蘇生し、山を削り、海を割る、そんな魔法の数々。

でも詠唱が聞いたこともないドギツイセクハラで、どう読んでもエロ小説にしか見えない。

触るのも嫌な私はペンで魔導書を開き、できる限り薄目で見る。

「時間を巻き戻す魔法」

口には出せず心の中で読む。

え!?そんなとこにそんなの入れていいの?

聞いたことない聞いたことない聞いたことない。

あ、だめだ、心の中でもダメなやつだ。

見ていられないと魔導書から視線を外した。

「なんでこんな<<自主規制>>とか言わないといけないの…」

クソ親父、なんてものを娘に渡す。

われ15の乙女ぞ?

お前も読んだんだろ?

そうかだからか。

だから渡すとき少し気まずそうだったのか。

小さいころ読みたいと駄々をこねた私に、消耗が激しいため成人を迎えてからと言ったな。

ただの子供は見ちゃダメな本じゃないか!

「こんなの人前で言えるわけないよ」

なんでパーティーメンバーに囲まれてエロ本読み上げなきゃだめなんだ。

恋の女神って嘘だよ、猥談の女神とかじゃん絶対。

ご先祖様が猥談の神に祝福された貴族とか嫌すぎるから、恋とか言い始めたんだろ。

魔法の詠唱中に、オホーってダブルピースで叫ぶ指示があるのなんて初めて見たわ。

「でも」

私が才能を受け継いだことを知った時の父と母の嬉しそうな顔。

愛を注ぎ大切に育ててくれたふたり。

その両親を裏切るなんて私には。

――誇り高きエンブラソ家の末裔として、その様なこと許されるわけがない。

貴族は誇りとともに生まれ、誉とともに死ぬのだ。

全ては民のために、貴族の義務を。

もう一度魔導書を見る。

『いや、だめ、そんなとこ……もっとして』

ふうーと大きくため息を吐いた。

「よし、家出しよう」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ