表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の彼女は幻かもしれない  作者: Melon
第1章 目覚め
3/18

久しぶりの学校

 学校に入り、下駄箱で靴を脱ぐ。

 そして、上履きに履き替え、教室に向かう。

 向かうと言っても、小さな建物なので、下駄箱から二十歩ほど歩いたら教室に到着だ。

 教室の扉には四角い大きな窓が付いており、扉を開けようとすると先生の姿が確認できた。


「坂月先生。おはようございます」


「おはようございまーす!」


 俺は扉を開け、席がたった二席しかない教室に入る。


「あっ......。えっと、その......」


 俺たちに挨拶された坂月先生は、あたふたし始めた。


「お、おはようございます。その......。正道くん。体の方は大丈夫なの?」


「大丈夫ですよ。実際、登校できましたし......。それより坂月先生。さっきの慌てっぷりは何だったんですか?」


 気になった俺は、先生に質問する。


「あー......。実は、久しぶりだからどう挨拶すればいいかなって思ってたら、いきなり来たもんで......。えへへ」


 坂月先生が照れる。


「もう......。別にいつも通りでいいじゃないですか」


「えへへ。確かにそうね......。先生、気にしすぎだったみたい」


 俺たちが話していると、チャイムが鳴った。

 朝会開始の五分前のチャイムだ。


「あ、チャイムが鳴ったから。お話は終わりにして、準備しましょう」


 先生はそう言うと、俺たちを机に座るよう促した。



 それから、三人だけの教室で授業が始まり、一時間目、二時間目と授業が進んでいき、時間が過ぎていく。

 そして、四時間目の授業が開始した。

 四時間目は国語の授業だった


「それじゃあ、えーっと......。七瀬ちゃん! この前の小テストを返すね!」


 坂月先生がテスト用紙を取り出し、七瀬は先生の前に近づく。


「......あれ? 先生。ここ、採点ミスしてますよ?」


 七瀬はテスト用紙を指差し、指摘する。


「え......? あ、あー! 本当だ! いやー、先生うっかりしてたなー」


 坂月先生は笑いながら言う。


「もう......! 先生、しっかりしてよー」


 七瀬もつられて笑い、笑顔を見せる。


 そんな二人の様子を見て、俺は思った。

 日常が戻ってきてよかったと。


「じゃあ、ここ修正して......。はい! どうぞ!」


「ありがとうございます!」


 七瀬がテスト用紙を受け取ると、席に戻る。


「なぁ、結果はどうだったんだ?」


「えへへ......。実は、そんなに良くなくて......」


 七瀬が俺にテスト用紙を見せる。

 左上には、六十点と赤ペンで書かれていた。


「あれ? 七瀬っていつもこんな点数だったっけ?」


「だから、今回はあんまりだったんだって......! そのー、最近夜更かしばっかりしちゃって、ね?」


「......もしかして、俺のことを心配して......」


 俺は七瀬をおちょくる。


「そ、そんな訳ない! 違う! 違うって!」


 七瀬は顔を少し赤くし、照れながら言う。


「悪い悪い。冗談だって......」


「もう......」


「さあさあ、お話はそこまでにして、授業を再開しますよー」


 坂月先生が手を叩きながら俺たちに言う。


「そうだ。俺は難関校に合格しないといけないんだ。しっかり勉強をしないと......」


 入院生活のせいで目標を忘れかけていた俺は、意識を切り替える。

 そして、授業が終わるまではお互い話すことはなく、四時間目の授業を終えた。



 それから、給食、昼休みを終え、体育の時間となった。

 グラウンドに俺と七瀬は集合する。

 少し待つと、チャイムの音と共に坂月先生が校舎から姿を現す。


「正道くん。入院明けだから、無理しちゃダメだからね......?」


「心配ありがとうございます。でも、病院でリハビリをして体を動かしていたので、大丈夫だと思いますよ」


 俺はそう言い、心配する坂月先生を安心させる。


「じゃあ、準備運動を始めますね」


 坂月先生がポケットからスマホを取り出し、ラジオ体操の音声を再生した。

 俺たち三人では広すぎると感じるグラウンドの中心で、ラジオ体操をする。


「正道! 久しぶりの運動なんだから、しっかりと体を動かしときな!」


「言われなくてもわかってるよ!」


 俺はサボらず、真面目に準備運動に取り組む。

 すると、長かった入院生活に対し、思ったより体が動いた。


「おーいいねー! 体がなまって無さそうで良かったじゃん!」


「おう!」


 それから準備運動が終わり、短距離走をすることになった。

 短距離走は三ヶ月ぶりであり、全力で体を動かす運動はしていなかったので、いい記録が出るか少しだけ不安だった。


 俺と七瀬はスタートレーンに並び、合図を待つ。


「位置に付いて......。よーい、ドン!」


 坂月先生の合図と共に、俺と七瀬は走り出す。


「は、速い......!」


 俺は七瀬の足の速さに驚いた。


「いや、俺が遅いのか......?」


 俺の記憶では、七瀬はそこまで速くなかったはずだ。

 しかし、俺の体がなまりすぎているのか、七瀬が速く感じた。


「私の勝ちー!」


 ゴールラインを超えた七瀬が、両腕を上に挙げながら喜ぶ。

 俺は遅れてゴールし、息を切らす。


「えーっと、七瀬さんは自己ベストです!」


 七瀬は坂月先生がメモ帳に書いたタイムを見る。


「やったー!」


 七瀬は再び喜ぶ。

 俺も覗き込むように七瀬の記録を見ると、俺の記憶よりも一秒ほど速かった。


「えへへ......。自主練習した甲斐があったなぁ......!」


「自主練習......? あ、もしかして。演劇のための体力作りか?」


「実はね......! 走り込んでたから、成果が出たみたい!」


「そうか、良かったな」


「うん!」


 七瀬は笑顔で返事をする。

 それから、数本ほど走り、休憩を少し挟み、また数本走ると、体育の授業を終えた。

 そして、本日は五時間目で終わりなので、帰る準備をし、七瀬と共に学校を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ