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俺の彼女は幻かもしれない  作者: Melon
第4章 不信

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 それから、俺たちは楽しく会話をしながら、食事を続けた。

 俺と七瀬、母さん、坂月先生。

 みんな笑顔で、とても居心地が良く、幸せな時間だった。


 そんな状況でも、疑問は頭を離れることはなかった。

 いや、そんな状況だからこそ、頭から離れることは無かった。


 本当に、ここを出る必要があるのか。


 そんなことを考えつつ食べていたせいで、食事量を調整できていなかった。

 食事を終えた頃には、俺の腹はパンパンになっていた。


「ふぅ......。ご馳走様でした......」


 腹をさすりつつ、声を振り絞る。


「正道、もしかしてお腹いっぱい......? ケーキ、どうする......?」


「ケーキ......。ごめん......。食いすぎて、もう......」


「じゃあ、冷蔵庫に入れたままにしておくね?」


「ああ......」


「......正道、大丈夫?」


「正道くん......。大丈夫ですか......?」


 七瀬と坂月先生が、心配そうに俺のことを見つめる。

 大丈夫、ではない。

 食べ過ぎたせいで、若干気分が悪い。


「ごめん......。少し、横になっていいか......?」


「う、うん......」


「七瀬、ごめんな......。体調崩しちゃって......。今日はありがとな」


「ど、どういたしまして......」


「先生も、今日はありがとうございました......」


「こちらこそ、呼んでくれてありがとうね......。お大事に......」


 俺は先生に頭を下げると、椅子から立ち上がり、自室へと向かう。

 気持ち悪いせいか、少しだけ歩きにくい。

 フラフラとした足取りで、踏み外さないように階段を上っていく。


 部屋に入り、一目散にベッドへと向かい、倒れ込む。


「うぅ......」


 意識が朦朧としてきた。

 本当に、ただの食べ過ぎなのだろうか。


「なんなんだ......。マジで......」


 俺は、目を閉じる。

 辛い、とても辛い今の状況から解放されることを願って。



「......ねぇ、七瀬。今日の旅行、楽しかった?」


「うん。楽しかったよ」


 名残惜しそうに、窓の外を眺める。

 帰りたくない。

 家に、帰りたくない。


 出たい。

 生まれたこの地を、出たい。


 私の居場所は、あんなところではない。

 あんなつまらない場所ではないはずだ。


 ......本当にそうなんだろうか。



「んぅ......」


 目を開けると、少しだけ調子が良くなっていた。

 だが、完全に良くなったわけではない。


「喉......乾いた......」


 体が、水を求めている。

 俺は水を飲むために、部屋を出る。


 人の声は聞こえず、カエルの声が少しだけ響いているだけだった。

 そんな中、ゆっくりと階段を降り、台所へ向かう。


 台所に入ると、そこには誰も居なかった。

 俺は棚からコップを取り出し、水道水を入れる。

 そして、中の水を少しだけ飲んだ。


 水を飲むために顔を上げたついでに、時計を見る。

 時刻は夜の十一時。

 とっくに七瀬と坂月先生は帰り、母さんも寝ている時間だ。

 仕事だった父さんも帰宅し、疲れてぐっすりと眠ってしまっているだろう。


「まだ、気分が優れないな......」


 俺は水を飲み終えるまで、椅子に座って休むことにした。

 薄暗い台所で、ボーっとしながら、少しずつ水を飲む。


 そうしていると、ふと、視界にゴミ箱が入った。

 七瀬がチラシを捨てたゴミ箱。

 そのはずなのだが、中にあのチラシは入っていないような気がした。


「あれ......?」


 俺は歯を食いしばって立ち上がり、ゴミ箱を覗き込む。

 見間違えなどではなく、本当にチラシは入っていなかった。

 元々入っていたゴミはそのまま残っており、チラシだけ無くなっていた。


「ど、どうして......」


 もしかして、隠されたのではないか。


「あ、怪しい......」


 あのチラシをこのまま無視してもいいのだろうか。

 何故か、無視してはいけないような気がした。

 俺は、ふらつきながらも台所を出て、チラシを探すことにした。



 あまり音を立てると母さんと父さんが目を覚ましてしまうため、音を立てずに慎重に探す。


 音を立てずに、タンスや押し入れを探していく。

 もしかしたら、既に捨ててしまったかもしれない。

 だけど、残っている可能性だってある。

 だから、必死に探した。



 そして、あのチラシは見つかった。

 母さんの部屋のゴミ箱。

 パンパンに詰まったゴミの下の方に、チラシはあった。


 俺は取り出し、クシャクシャになった紙を広げていく。


「な、なんで......」


 俺はチラシを見た途端、頭が疑問で埋め尽くされた。


「どうして、七瀬と母さんは......」


 七瀬と母さんは、花火大会の中止のお知らせが書かれていたと言っていた。

 だが、目の前のチラシには、花火大会開催のお知らせが書かれていた。

 

 体調不良ということもあり、頭が働かない俺は、そのチラシをポケットに突っ込み、部屋へと戻った。

 どうして二人はわざわざ嘘を付いたのか。

 そのことについて考えたかったが、そんな元気も無かった。


 手すりを握りしめ、死に物狂いで部屋へと戻る。

 そして、俺はすぐに寝ることにした。


 目が覚めたら、調子が良くなることを信じて。



 だが、そんな俺に訪れたのは、快調などではない。

 死にそうなくらい辛く、まるで、病気にでもなったんじゃないかと思うほどの不調だった。

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