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俺の彼女は幻かもしれない  作者: Melon
第4章 不信

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プレゼント

「とうちゃーく!」


 車が止まると、七瀬はシートベルトを外し、車から降りる。


「じゃ、私は家にケーキを取りに行くので!」


「あ、じゃあ乗せて......」


「先生は正道のお母さんの手伝いをしなきゃいけないんでしょ? ケーキは私に任せて、お手伝いしてあげてください!」


 七瀬はそれだけ言って、自宅へと走っていった。

 俺はそれを途中まで見届け、玄関の扉を開ける。


「ただいま......」


「お、お邪魔しまーす。担任の坂月でーす......」


「あら、おかえり。それに、坂月先生。今日はありがとうございます。お手伝いに来てくれて......」


 台所から玄関に向かって歩きながら、俺たちに言う母さん。


「いえ、むしろ、今日は私なんかを紹介していただいて、ありがとうございます......」


「私なんてって、そんな自分を卑下しないでください。毎日毎日、とてもお世話になっているんですから」


 大人の女性二人が楽しそうに会話を始めたので、俺はそそくさと脱衣所に向かい、洗面台で手を洗う。

 そして、何となくだけど、顔を洗ってみた。


「ふぅ......」


 車の中でボーっとしていたせいでまた眠くなっていたが、冷たい水が俺の脳を叩き起こす。

 眠気は水と共に流れ落ち、少しだけ気が晴れた。


「......幻、か......」


 もし、今までの不可解な謎。

 それが、病気による幻だったら。

 それが、夢で見るような、不可解な幻のようなものだったら。

 俺の身を包む幻が、この水で流されてくれたら。


 しかし、現実は甘くない。

 ゲームやアニメのように何か変わるわけでもなく、ただ、眠気が消えただけだった。


「じゃあ、こちらへ......」


「はい......」


 脱衣所の外から、母さんと坂月先生の声が聞こえてきた。

 母さんが台所に案内しているのだろう。


「......俺も手伝おうかな」


 俺は脱衣所から出て、台所へ向かう。


「あ、正道。わざわざ手伝おうだなんて思わなくてもいいわよ。今日は誕生日なんだから、楽しみに待ってなさい」


「そうですよ。料理は先生とお母さんに任せてください......!」


 二人は笑顔でそう言うと、料理の支度を始めた。

 どうやら、俺が手伝うまでもなさそうだ。


 俺は台所から出て、自室へ向かう。

 自室に入ると、鞄を適当に置き、何となく椅子に座る。


「......勉強、するか......」


 俺は鞄からノートと参考書、筆箱を取り出し、机に向かう。


「今日寝てた分、取り返さないとな......」


 そんなことを考えながら、俺は勉強を始めた。



「正道ー?」


 勉強開始から数十分後。

 突然、七瀬が俺のことを呼びながら、部屋の扉を開けた。


「わっ......。誕生日なのにそんなガッツリ勉強してるの?」


「あ、七瀬......」


 俺は勉強を一旦やめ、振り返る。

 部屋の入口には、ピンクのトートバッグを肩にかけた七瀬が立っていた。


「私も料理を手伝おうとしたんだけど、私たちに任せなさいっていうから、こっち来ちゃった」


「そ、そうか......。ま、まぁ立ちっぱもあれだし、適当に座ってくれ」


「うん」


 七瀬はベッドを背もたれにし、床に座り込んだ。


「あ、そうだ。私からの誕生日プレゼントがあるんだけど。先に渡しちゃうね......」


 トートバッグの中に手を突っ込む七瀬。

 そして、トートバッグの中から、如何にもプレゼントの箱だということがわかる、リボンに包まれた箱を取り出した。

 箱は、一辺が五センチメートルにも満たない、小さな立方体だ。


「これ、私からのプレゼントなんだけど......。なんだけど......」


 七瀬は恥ずかしそうにし、箱を渡そうとしない。


「......ごめん。やっぱ、後日でもいい......? 今更、正道に相応しくないと思っちゃって......」


 俺に相応しくないプレゼント。

 一体、中には何が入っているのだろうか。


「いや、七瀬が俺のことを思って用意してくれた。それだけで、とても嬉しいよ......」


 俺は七瀬を気遣い、そう言った。


「で、でも......」


 しかし、七瀬は渡そうとしない。

 そんなに受け取ってもらいたくないものが入っているのだろうか。


 気になる。


「そんなに心配しなくていいって」


「......後悔しない?」


「......え?」


 ただの誕生日プレゼントで、何故、後悔しないかなどと聞いてくるのだろうか。

 もしかして、見てはいけない、知ってはいけない物でも入っているのだろうか。

 俺の顔から、冷や汗が垂れ始める。


 怖い。

 だが、それ以上に気になってしまう。


「こ、後悔しない......!」


「じゃあ......」


 七瀬は箱を手の平に乗せ、差し出した。

 俺はそれを受け取り、リボンをほどいていく。


 リボンをほどいている途中、視線を少しだけ七瀬に向ける。

 七瀬は相変わらず、顔を赤らめている。


「じゃあ、開けるぞ......」


 リボンをほどき、箱の蓋を持ち上げる。

 中には、いったい何が入っているのだろうか。

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