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俺の彼女は幻かもしれない  作者: Melon
第4章 不信

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質問

「ねぇ、正道......」


「......なんだ?」


「......落ち着いて、聞いて欲しいの。そして、正直に話してほしい」


 七瀬が突然、真剣な顔でそんなことを言った。

 普段の七瀬らしくないので、体が強張り、身構えてしまう。


「な、なんだよ......」


「......最近、変な違和感ってない? ......明らかに、体調不良とか、そういうことに関係していなさそうな......」


「......っ! ど、どうして......そんなことを......」


「......今は私を信じて答えてほしい」


 七瀬の真剣な眼差しが、俺の目を捉える。



 正直に話すべきなのか。

 正直に話したら、全て解決するのか。


 幻覚や幻聴が見えているかもしれないと、七瀬に話してもいいのか。

 馬鹿にされたり、軽蔑されるのではないか。


 そもそも、何故、七瀬はこちらに何か問題があるのではないかと分かっているのか。

 何故、俺に問題があると思い、問いかけてきたのか。


 もしかして、俺の症状に関して、何か知っているのではないか。

 それなのにも関わらず、困っている俺を見て楽しんでいるのではないか。

 それとも、何か、恐ろしいことでもしよう、いや、している最中なのではないか。



 七瀬は、信じてもいい存在なのか。

 信じられない存在に、真実を話す利点はあるのか。


 彼女である七瀬を裏切るような答えを出していいのか。

 俺を今まで支えてくれた七瀬を、信じなくてもいいのか。



「......いや、特には......」


 苦渋の決断。

 俺は、否定する決断を選んだ。

 彼女である七瀬に、嘘を付く選択をした。


「......そう。なら、いいんだけど......」


 先ほどまでの真剣な眼差しから一点、少し落ち込んだような表情を見せた。

 いつもの七瀬に戻り、俺は心の中で少しだけ安心する。


「あ、正道くん。起きたんだね」


 教室の外から、坂月先生が声をかけてきた。


「もう......。今日は許しますけど、今度からは夜更かしせずにちゃんと寝て、居眠りしないようにしてくださいね......!」


「は、はい......。今日は本当にすみませんでした......。これからは気を付けます......」


 俺は深々と頭を下げ、謝罪する。


「......さ、先生のお説教はここまで。これ以上空気が悪くなったら、この後の誕生日会を楽しめなくなっちゃいますもんね。車の準備はできたので、一緒に行きましょう」


 先生はそう言い、玄関に向かって歩いて行った。


「私たちも行こ」


「お、おう......」


 七瀬は先生の後を追いかける。

 俺も同じように先生の後を追いかけ、教室から出た。



 校門前には、先生の赤い軽自動車が止まっていた。

 先生が車のロックを解除し、後ろのドアを開ける。


「さ、乗ってください。シートベルトはちゃんとするんですよ」


「はーい」


 七瀬は元気よく返事をし、車に乗りこむ。

 俺も乗り込み、七瀬の隣に座る。


「それじゃあ、出発しますね」


 坂月先生が運転席に座り、エンジンをかける。

 車が動き出し、デコボコした道を走り始める。


 俺は窓の外をボンヤリと眺めていた。

 窓からは森や山、ここ最近使われておらず、草が大量に生えている畑しか見えない。

 しかし、そんな単調な風景でも、現実逃避をするには十分だった。


「そういえば先生。先生も今日の料理を作るんですよね?」


「そうですよ。参加させてもらうお礼ということで......」


「先生の料理、楽しみです!」


 七瀬と坂月先生が話し始めるが、俺は窓の外から視線を動かさなかった。

 目を逸らしたら、不安だらけの現実に戻されてしまう。

 そう思ったからだ。


「正道も楽しみだよね?」


「......え、あ、あぁ」


「もー......。先生が料理を作ってくれるっていうんだから、ちゃんと感謝しないと......」


「い、いいんですよ! 凄い料理が作れるわけでもないので......」


「えー? そんなことないでしょー。先生料理上手そうだし......。私の勘だけど」


 再び二人は楽しそうに話し始めた。

 そしてまた、俺は窓の外へと視線を戻す。


「先生、こっち方面の道はほとんど通らないんですけど、全然人がいないなぁって毎回思うんですよね......。家はたまーに見かけますけど......」


「この辺って老人ばかりだから、みんなふもとの街の老人ホームに入っちゃったんですよね。この辺じゃ、車が無いと生活できませんし。かといって、車に乗るのも危ないですし......」


「そうなんですね......。確かに、こんな舗装されてないデコボコしている細い道を、ご老人の方が通るのは大変ですもんね......」


「私、ここが好きだから、もう少し人が増えて、少しでもいいから賑わってほしいんですけどね......。せめて、お祭りとかはしたいなぁ......」


「そうですねぇ......。流石に、寂しすぎますもんねぇ......」


「あ、次に見える家が正道の家ですからね」


「知ってますよ。毎年ある家庭訪問で訪れているので」


「あ、そっか」


 二人はずっと話続けており、俺はずっと窓の外を眺め、ボーっとしていた。

 だが、そろそろ家が近い。

 現実逃避の時間は、もうそろそろ終わりそうだ。

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