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俺の彼女は幻かもしれない  作者: Melon
第4章 不信

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19/28

 七月二十五日、金曜日。

 今日は俺の誕生日。



 いつものように起きた俺は、台所へ向かう。


「あら、おはよう」


「......おはよう」


 朝食を食べに台所へ入った俺は、母親の挨拶に返事をした。


「......ここ最近調子が良くないようだけど、大丈夫......?」


「だ、大丈夫......」


 体に関しては、調子は悪くない。


「......いただきます」


 食欲はあまりないが、食べなくては体調を崩してしまう。

 無理やり口に入れ、無理やり食事を詰め込んでいく。



 母親の回答に対して大丈夫と答えたが、それは体は悪くないという意味だ。

 調子が悪いのは、精神である。


 ここ最近、自分に襲い掛かる不可解な現象について考え続けていたせいで、日に日に精神が衰弱していた。

 心配をかけさせないために表には出さないようにしているが、もしかしたらバレているかもしれない。



「ご馳走様でした......」


 食事を食べ終え、食器を水につける。

 そして、いつものように学校に向かう準備をし、いつものように七瀬を待つ。


 数分ほど玄関で座っていると、ガラガラと扉が開く。


「ハッピーバースデー!」


 七瀬は扉を開けるやいなや、大声で俺を祝った。


「あ、ありがとう......」


 小さな声でお礼を言う俺。


「あれ? あんまり嬉しくなかった......?」


「い、いや嬉しいよ! ありがとう......」


 七瀬の悲しむ顔を見た俺は、即座にちゃんとしたお礼を言った。


「それじゃ、誕生日会の話でワクワクしつつ、学校行こうか」


「お、おう......」


 そして、いつものように七瀬と手を繋ぎ、二人で学校へと向かった。



「あ、そうだ。坂月先生だけどね。今日は即座に仕事を切り上げて来てくれるってよ。......その分、明日休日出勤するんだろうけど」


「へ、へぇ......」


「あとね、私のお母さんがケーキをネット注文してたみたいでさ。せっかくお祝いしに行くんだったら、プレゼント代わりに持っていきなって......」


「そ、そうなんだ......」


「それでね......。......って、正道? 聞いてる?」


「あ......。ああ! 聞いてるよ!」


 正直、話はあんまり頭に入っていなかった。

 現在の俺の頭の中を支配している話題はただ一つ。



 何がおかしいのか。



「......もしかして、調子悪い?」


「いや、そんなことないけど......」


「......本当?」


「本当だってば......」


 七瀬が俺のことを怪しみ、顔をジロジロと観察してくる。

 顔が近く、少しだけ恥ずかしくなり、それと同時に、少し恐怖し、俺は後ろへ一歩下がる。


「まぁ、顔色はそんなに悪くない感じはするけど......。調子が悪くなったらすぐ言うんだよ?」


「わ、分かってるって......」


「分かってるならよろしい。じゃ、早く学校に行こ?」


 七瀬は俺の腕を引っ張り、歩き始めた。



 少し前までは、俺の身の回りのおかしな現象は体調不良によるもの。

 そうだと信じていた。

 しかし、数日前にふと、何となく考え込んでしまったせいで、その考えは変わっていた。

 体調不良というだけで、あそこまで不可解な現象に見舞われるものなのだろうか、と。


 七瀬が俺の姿に見えた。

 その後、藤波先生と七瀬、両者とも【俺が人を見間違えたこと】に関して質問した。

 そして、七瀬から俺の声が発せられ、他の人は違和感を持っていなかった。


 あれから考えてみると、不可解な現象には、全て七瀬が関わっていたことが判明した。

 だからこそ、俺は彼女である七瀬に対し、恥ずかしいという感情と共に、恐怖という感情を抱いてしまっのだ。



「......うーん、今日は霧がすごいね......」


 七瀬が辺りをキョロキョロと見渡す。

 それにつられ、俺も周辺を見渡した。


 特に気にしていなかったが、今日は霧が深く、先があまり見えない状況だった。


「なんかさー。こういう霧が深いときにさ、不可解な現象が発生して、なんだなんだー! ってパニックになっている間に、化け狐にバクっー! っていう展開をこの前アニメでチラッとみたんだけどさ......。その時と似てるんだよねー」


「今の状況が......?」


「うん。妖怪がテーマの作品でね、幻を見せて人を喰らう化け狐がテーマのお話だったんだー」


「幻......。......というか七瀬、アニメとか見るんだな......」


「うん。演劇のシナリオとか考えることになった際に、こういう積み重ねが役に立つかなぁ、って思ってさ」


「へ、へぇ......」


 七瀬は楽しそうに話すが、俺はうわの空だった。

 幻という言葉が、妙に引っかかったからだ。



 もし、この世界が幻だったら。

 七瀬が俺の姿に見えたのも幻だったら。

 藤波先生と七瀬、両者とも同じ質問をしたのも、幻によるパニックによる聞き間違えだったら。

 七瀬から俺の声が発せられたのも、パニックにより併発した何かしらの症状だったら。



「幻......か......」


「ん? どうしたの?」


 ふと、七瀬の顔を見る。


「な、何......? そんなに私の顔をジロジロ見て......。寝癖でもある......?」


 もしこの世界が幻だったら。

 俺の彼女、七瀬も幻なのだろうか。

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