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俺の彼女は幻かもしれない  作者: Melon
第3章 謎
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診察

 次の日、母さんに車で俺が入院していた診療所まで送ってもらった。

 診療所と扉を開けると、カランカランと鐘の音が鳴る。

 館内に入ると、人は一人もいなかった。

 この周辺は人がほとんど住んでおらず、健康的な人が多いので、診療所に人が来ないのだろう。


「おや? 正道くんじゃないですか」


 入院の際にお世話になった藤波さんが、受付の奥から姿を現す。


「あれから体調はどうですか? ......まぁ、良くはないから本日やってきたのだとは思いますが......」


「はい......。ちょっと調子が......」


「お話は診察室でしましょう。今は見ての通りお客さんは誰一人いませんし」


「わかりました」


「じゃあ、母さんは受付前の椅子で待ってるからね」


 母さんはそう言うと、受付の正面にある椅子に座る。

 俺は藤波さんの案内に従い、診察室へと入った。


 診察室には藤波さんが使っているであろうデスクが置いてあり、その上にはパソコンが置いてあった。

 デスクの反対側には、診察用のベッドが置いてある。


「こちらに座ってください」


 デスク前の椅子に座っている藤波さんが、丸椅子に座るように案内をする。

 俺は丸椅子に座り、藤波さんと向き合った。


「では......。本日はどうされましたか?」


「えっと......」


 ここまで来て、俺は思った。

 果たして、本当のことを話してしまっていいのだろうか。


 七瀬の姿が変わり、ドッペルゲンガーであるかのように自分の姿になっていた。


 そんなことを話してしまえば、明らかに精神疾患を疑われてしまう。

 そうなった場合、七瀬との生活を続けるのは不可能になってしまう可能性がある。


「......ん? どうしたんだい?」


 なかなか答えない俺に、藤波さんが心配をして声を書ける。


「あの......その......」


 必死に頭をフル回転させ、最適解を考える。


「実は......。最近目の調子が悪いような気がして......」


 とりあえず、無難な解答をしてみた。


「目ですか? 例えば、どのような症状が出ていますか?」


「例えば、ぼやけて見えたり......。後は......。疲れてるのか、見間違えが増えたような気がして......」


「見間違え......」


 見間違えという言葉に引っかかるのか、藤波さんは何か考え始めた。

 余計なことを言ってしまったのではないかと思い、心拍数が上がり、冷や汗が出始める。


「......ちなみにその見間違えって、物に対してかい? 例えば、人を見間違えたりとか......。そういうことはない?」


「えっ......?」


 何故、そんなことを聞いてきたのだろうか。

 何故、見間違えている対象を、物か人か気にするのだろうか。


「りょ、両方です......。どちらも、時々見間違えが......」


 俺は咄嗟に嘘を付いた。

 勘であるが、少しだけこの先生を怪しく感じてしまったのだ。


「ふーむ......。ちなみに、具体的に例を教えてもらっていいですか? 例えば......。目の前の人をじ......。失礼、目の前の人を身近な人と見間違えてしまったとか、そういう症状はあったかい?」


 どういうことだ。

 まるで、こちらの症状を把握しており、それを俺の口から言わせようとしているような気がする。

 これでは、診察というよりは尋問だ。


「......いえ、別の人に見えたというよりは、ちょっと髪型が変わってるように見えたとか、その程度です......」


 また嘘を付く俺。

 少しだけこの人のことが怖くなり、本当のことを言えなくなっていた。


「......なるほど」


 藤波さんはキーボードでパソコンに文字を打ち込み始める。

 おそらく、カルテに情報を入力しているのだろう。


「ちなみに、勉強はどのくらいしていますか? 入院前みたいに過剰にしていたりしませんか?」


「......勉強はそこまでしていないはずです。平日は授業を除くと二時間。休日は六、七時間ほどで......」


「ふーむ......」


 再び情報を入力していく藤波さん。


「......おそらく、入院明けの環境変化による体調不良と勉強疲れが重なり、調子が悪くなっているのでしょう。どうしても気になるのであれば......。街のふもとの眼科に行ってください。生憎私は眼科では無いので、詳しい目の治療はできないので......」


「そ、そうですか......」


「......診察は以上となります。何か、聞いておきたいことはありますか?」


「いや、特には......」


「そうですか。では、お疲れさまでした」


「あ、ありがとうございました......」


 俺は立ち上がり、お辞儀をする。

 そして、扉を開け、診察室から出た。

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