【13話(3/3)】合同緊急会議・前夜
神木の加護を受ける街・煌都。
訓練校の新入生・湊 陽輝は、神木と意思疎通できる女児・猪狩美咲の身辺警護を任務として請け負っている。
幼稚園が終わった美咲を研究室に連れて行き、美咲と神木の測定を手伝っているのだった。
そしてある日、美咲の思いに神木の苗木が応え、目に見える形で意思疎通が証明された。神木の託宣を受け取る、幼い御使の処遇を決めるための緊急会議が迫っていた。
合同緊急会議、前日。
明石は会議用資料の最終版を完成させていた。
「うむ、こんなものだろう」
試し刷りした一冊をめくり、明石は大きく頷いた。
「あとはデータを課長に送信して……」
明石が添付ファイルを送信したところで、湊がオフィスにやってきた。
「美咲、帰りました。明石さん、終わりそうですか?」
「ああ。ちょうど今、最終版を課長に送ったんだ」
「ほんとですか!間に合って良かったですね」
湊は試し刷りに目を留める。
「それが最終版ですか?」
「そうだ。ギリギリになってしまったから、人数分の資料もこちらで刷らないといけないかもしれないな……そうなったら、今日も徹夜だな……」
明石は湊に試し刷りを手渡した。
「これを、明日の会議に持って行ってくれないか?そうすれば、一冊は作らなくて済む」
「分かりました」
湊はパラパラと資料を眺める。
「すごいなぁ、こんなのがパッと作れるなんて」
「パッとではないよ。徹夜だってしているんだから」
資料には、美咲と幼木のことが事細かにまとめられていた。美咲が幼木と出会った経緯。今までに測定してきたデータとの関連性。鉢か本体に触れて会話するが、夢でも意思疎通が図れること。美咲の願いに応じて桃色になったこと。そして幼木は美咲の脳内を読み取ったり、身体能力に変化を与えたりできること。
「こうして見ると、だんだん御使の力が強くなってますよね?できること増えてきてるし」
「今までもやろうと思えばできたことだが、最近になって我々が発見したという可能性もある。いずれにせよ、美咲嬢の行動に幅があった方が、新たな要素に気づける機会も多くなるだろう。それを最後に加えてみたんだ」
湊は最後のページを見た。
今後の展望として、美咲に多様な行動を期待すると書かれている。行動の中には通園も入っており、美咲が来年小学校に上がることにも言及されている。さらに、美咲が幼稚園に行きたいと願っていたことにも触れていた。
「これだけ書けば、多少は汲んでくれるだろう。神事局や鹿鳴家にも、美咲嬢の通園や通学に理解を示して頂けると良いのだが……」
「明石さん、ありがとうございます!これなら絶対に大丈夫ですよ!」
湊と明石が話していると、課長がオフィスに入ってきた。
「課長!今しがた最終版を送信したのですが」
「ええ、確認したわ。多少体裁を整えてから、神事局の事務に投げておくから」
「そうですか。自分が刷らなくても間に合いますか?」
「提出が遅くなることは事前に連絡しておいたから、今日は遅出の人員を手配してあるそうよ。あなたは週明けの報告を待っていなさい」
「承知致しました。後はよろしくお願いします」
湊は、課長をじっと睨んでいた。
「何かしら?言いたいことでもあるの?」
「……この間、偶然、灯西の脱走犯に襲われたんです」
「ええ、聞いたわ。それで?」
「あいつら、課長に恨みがあるって言ってましたけど。何やったんですか?」
課長はそう問われても、顔色ひとつ変わらない。
「ああ、その話。それは当たり前よ」
「当たり前?」
「だって、灯西の受刑者による協力実験は、全て私の名義で実施しているんだもの。彼らに恨まれることはあっても、彼らが具体的に何をされたかなんて知らないわ」
「ええ……?」
困惑する湊のことはそっちのけで、課長はスケジュール帳を開く。
「そんなことより湊くん、私は予定を伝えに来たのよ。明日は8時に鹿鳴本家集合ね」
「ん?鹿鳴本家?」
「あら、言ってなかった?明日の会議は輝央市の鹿鳴本家で開かれるの。美咲ちゃんの家には伝わっているはずよ」
輝央市といえば、煌都の中枢都市だ。だが、鹿鳴本家は敷地が広すぎるので、ビルがひしめく輝央市の中心部にはなかったはずだ。
(えぇ、そんなの急に言われても……電車からバスで乗り継いで行けるのか?全然知らないや)
首を捻る湊に、課長は冷たい視線を送る。
「美咲ちゃんと一緒に来ればいいじゃない。それとも、私の車に乗りたいの?」
「んなわけ。狩野さんにお願いして、美咲たちと一緒に送ってもらいます」
「ええ、そうしてちょうだい」
明石は、2人のやり取りをヒヤヒヤしながら聞いていた。
(良かった、2人が別々の車で。一緒に乗っていたら大変だったぞ……だが、会議もどう転んだものか。無事に終わってくれるといいが……)
読んで頂きありがとうございます!
初投稿ゆえ、至らぬ点があればすみません。
完結まで頑張ります!




