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【11話(5/5)】宝槍使いの特訓

神木の加護を受ける街・煌都(こうと)


訓練校の新入生・(みなと) 陽輝(はるき)は、神木と意思疎通できる女児・猪狩(いかり)美咲(みさき)の身辺警護を任務として請け負っている。

幼稚園が終わった美咲を研究室に連れて行き、美咲と神木の測定を手伝っているのだった。


一方、灯西(とうせい)刑務所の集団脱走事件は未だ解決していない。灯西の様子を探るべく、とある訓練生が先行調査に潜入していた。

成海の自宅にて、湊は弥生(やよい)に今日のことを話した。

「――左様でございますか。では直接お嬢様が狙われたわけではないのですね。皆さまご無事で何より……!」


美咲は弥生の膝の上で静かにしている。危険な目に遭ったことは分かっていないようだが、ただならぬ状況にあることは何となく察しているのかもしれない。


成海は目頭を押さえ、俯く。

「僕がいけないんだ……僕が猪狩家での立場が弱いばかりに、こんなことになってしまった」

弥生は表情を曇らせる。

「坊ちゃん。ご自分を責めないで下さいませ」

「そうですよ。悪いのは襲って来たあいつらでしょ。どうして成海さんのせいってことになるんですか?」

湊がそう言うと、成海は暗い顔で話し始めた。


「本当は、狩野(かのう)を美咲の専属として従事させたいんだ。でも、それができないせいで幼稚園もしばらく休ませてしまったし、湊くんにもずっと世話を頼んでいるし……今日だって、狩野ならもっと上手く対応できたと思う」

「俺は別にいいですよ。狩野さん、本家での仕事があるんですよね?」

「ああ。狩野は猪狩本家で宝刀の指南役を務めている。僕に猪狩家での発言権があれば、そんなの辞めさせて、美咲の警護に専念させられるのに」


成海は掛け時計を見上げる。


「今日だって、こんな遅くまで本家の稽古に付き合わされている。全く、武を尊ぶ猪狩家だなんて笑わせてくれるよ。実態は侍従に教えてもらってるのにさ。僕が猪狩家での立場を強めて、侍従の采配に口出しができるようにならないと……」


湊は、落ち込む成海に声をかける。

「でも、俺と美咲は成海さんのおかげで助かったんですよ。今日みたいなことがまた起きても対応できるように、俺ももっと宝刀が使えるようになりたいです」

「そうだね。狩野を美咲に専念させられるのは、今日明日じゃ無理な話だからね……しかし警護となると、宝刀よりリーチの長い宝具がいいかもしれないね」


湊は、錆びた傘を手に男と対峙したことを思い出す。

「確かに。美咲を守りながらとなると、ある程度は距離があった方が安心です」

成海はニコリと笑った。

「そういうことなら、宝槍(ほうそう)がいいんじゃないか?腕の立つ宝槍使いを知っているから、僕が紹介してあげよう」


***


数日後の夕方。

実践練習場にて、湊は「腕の立つ宝槍使い」と対面していた。夕日を受けて、仏頂面にかかった眼鏡が光る。


「あぁー……ども」

「湊陽輝。何だ、その顔は?嫌なら帰れ」

「いや、別にいいんですけど」


生徒会副会長、吉川(きっかわ)照臣(てるおみ)

この人が成海の言う「腕の立つ宝槍使い」らしい。


(またこの人かよ。確かに試験で宝槍使ってたけど)


「吉川さん、非戦闘員なんですよね」

「何だ、文句でもあるのか?嫌なら帰れ」

「いや、だから別にいいんですけど」


湊の言わんとすることを察したのか、吉川は眉を吊り上げる。

「お前、僕の腕前を疑っているな?言っておくが、志望先がどこの班だろうと、任務登用試験の内容は変わらないからな。それに僕は宝槍術の演舞で賞を獲ったこともある。基本の美しい動きを学ぶには適任だと自負している」

「へぇー……じゃ、お願いします」

「全く、教え甲斐のない奴め!成海の頼みでなければ絶対に受けなかったんだぞ!僕らに感謝するがいい!」


最悪の雰囲気の中、宝槍の特訓が始まるのだった。


***


「まずもって警護隊とは、煌都が設けた公認の自警団だ。警察とは異なり、銃器の携帯、犯罪者への傷害行為は認められていない。そのため我々が所持する宝具に刃物はついていない」


吉川は、倉庫から宝槍を取り出した。


「本来の槍術では、相手へのとどめに突きを用いたり、重い刃の遠心力で打撃を与えたりする。しかし宝槍には鉄の刃がついていない。そのため宝槍術は槍術とは異なり、棒術を取り入れた独自の動きに発展している」


吉川は片手で宝槍をクルクルと回す。

そして背中を通して滑らかに左右の腕へと持ち替える。


「おぉー……」

「このように宝槍ならではの軽さを活かして、回転で相手を翻弄するのも手だ。しかし、側に成海の妹がいることを前提にするならば、振り回すことは得策ではない。お前は背が高いから、それを活かして上から相手を制圧するのがいいだろう」

「なるほど」

「それらを踏まえて、まずは構えだ。上段、中段、下段……」


吉川に倣い、湊は基本の構えとその後に続く動きを教わった。

「宝槍は本来の槍より軽いとは言え、宝刀より長いため宝具の中では重い部類だ。重さに負けると肘が伸びてくる。脇で支えない構えの場合は、手元が下がらないように注意するといい」


吉川の言葉に従い、湊は基本の振り方を覚える。

(癪だけど、この人、言語化するのが上手いな……)


気がつくと、窓の外はすっかり真っ暗になっていた。

吉川は宝槍を下ろした。

「もうこんな時間か。今日はここまでにしよう」

「はい。吉川さん、教えるのがこんなに上手いって思いませんでした。ありがとうございます」

「何だと?少しは言葉を選べ!」

吉川は湊に憤ったが、湊の純粋に輝く目を見るとそっぽを向いた。

「ま、まあ、僕に先輩としての畏敬を覚えたようだな?それなら許すとしよう」

「吉川さん、またお願いしてもいいですか?」

「ふん、成海の頼みだからな、仕方ないな。次回は祈念を交えた振り方を指南しよう。追って連絡する」


***


湊は寮の自室に戻った。二段ベッドを勢いよく駆け上がり、その勢いで布団にボフンと突っ込んだ。

「はぁーっ、疲れた!」


腕の通信機が通知を告げる。

(ん、吉川さん、連絡早いな。次は明後日か)


下段にいた瑛心(えいしん)が、顔を覗かせる。

「湊くん、どうしたのぉ?」

「別に。なんか、忙しい日々になってきたなと思って」


瑛心は結晶の原石を撫でながら、ふにゃりと笑った。

「そっかぁ。湊くん、充実してるんだねぇ」

「何それ?達観したこと言うんだな」

「ううん、見たままの感想だよ?いいことじゃないか、忙しいって」


美咲のお守りが終わってから寮の夕食までの僅かな時間だが、湊はしばしば吉川と落ち合い、宝槍の手解きを受けることとなったのだった。

読んで頂きありがとうございます!

初投稿ゆえ、至らぬ点があればすみません。

完結まで頑張ります!

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