【11話(4/5)】登用訓練生
神木の加護を受ける街・煌都。
訓練校の新入生・湊 陽輝は、神木と意思疎通できる女児・猪狩美咲の身辺警護を任務として請け負っている。
幼稚園が終わった美咲を研究室に連れて行き、美咲と神木の測定を手伝っているのだった。
一方、灯西刑務所の集団脱走事件は未だ解決していない。灯西の様子を探るべく、とある訓練生が先行調査に潜入していた。
成海は男に向き合う。
湊は2人から離れ、建物の陰から見守る。
「あっ、おにいちゃん!おにいちゃんおそい〜っ!」
美咲が顔を上げて叫ぶので、慌てて口を塞ぐ。
「美咲、しーっ!お兄ちゃん今忙しいの!後でね!」
成海が宝刀に手を添えると、一瞬で刀身に淡い蒼の光が灯る。
(成海さんも自分の色にできるんだ!しかも色が変わるのが早い!祈念が上手いんだ)
以前、成海は1年生で任務登用試験に合格したと聞いた。その実力は確かなのだろう。
成海は男に向かって蒼い宝刀を構える。その刃先は喉元の延長線上でぴたりと止まり、寸分のブレも見られない。
(凄い……お手本みたいに綺麗な構えだ)
「ほら、かかって来るといい」
「っ……」
男は黒い刃物を構え、動かない。
「宝刀の真に正しい構えは、どこにも隙を作らない。どう動いても負ける気しかしないだろう?」
男は黒い刃物を煌めかせ、成海に飛びかかった。
「こ、このっ、学生風情がっ!」
成海は男の攻撃をいなし、男の手首に宝刀を当てる。
「ぐっ……!」
男は手首を押さえたが、すぐ成海に目がけて刃物を振り回す。しかし成海は冷静に黒い刃を捌く。
「おや、動けるんだね?お仲間より加護が強いと見える」
湊は、成海の軽やかで正確な宝刀捌きに目を奪われていた。
(あんなに攻められてるのに、間合いも重心も全然乱れない。戦いがずっと成海さんのペースで進んでる。もしかして、成海さんって凄い人なんじゃないか?)
男の刃が空振った隙を見逃さず、成海は男の肩に宝刀を振り当てた。
「ぐぁっ!」
男は白目を剥いて膝から崩れ落ちた。
成海が宝刀の構えを解いたその時、背後からもう一人の男が刃物を手に飛びかかった。
「危ない、成海さん!」
成海が振り向くと同時に、男が黒い刃を振りかぶる。
しかしその手は男の頭上で止まり、カランと刃物が落ちた。
「っ……!」
男は声もなく、その場にバタリと倒れた。その襟首には、見覚えのあるフックが引っかかっている。
成海が嬉しそうに声を上げた。
「紫苑!」
フックを投げた主は、建物の庇に立っていた。上背のある身体は、音もなくヒラリと地面に降り立つ。
「紫苑、任務から帰ったんだね!」
「成海、まーた手ぇ抜いたっしょ〜?不意打ちで気絶させてないのはフツーに舐めプなんですけど〜?」
成海は気まずそうに宝刀を納める。
「ああ、ごめん……」
「別に謝んなくたっていいけどさぁ、ガチのワルに情けは不要っしょ?ま、そこが成海の良さっちゃあ良さだけどさ〜」
紫苑は男たちの黒い刃物を回収し、ベルトから伸ばしたワイヤーで男たちを縛る。ワイヤーの先のフックは襟首に引っかけ、それぞれの男の首根っこをフックごと掴む。
「はい、確保〜!やっぱコイツら、噂の囚人かなぁ」
男たちが縛られたのを確認して、湊は美咲と一緒に2人へ近寄った。
「成海さんも紫苑さんも、ありがとうございます」
美咲は紫苑の元へ駆け寄り、両手を伸ばす。
「しおんさぁん!だっこだっこ!」
「お、美咲ちゃん〜!ごめんねぇ、抱っこしたいんだけど、両手におっさん状態で無理なんだわ〜」
代わりに成海が美咲をひしと抱きしめる。
「おにいちゃぁん、いっつもおそい〜」
「ごめんね、美咲……怖かったよね……」
美咲は不思議そうに成海を見上げる。幸い、この状況をあまり理解していないようだ。
彼方から、野太い男の声が聞こえてくる。
「おい、鳩羽〜!逃げんなぁ!」
「あっ!やっべぇ、伊織センセー!」
紫苑は慌てて男たちを引きずる。
「あぁークッソ、見つかっちゃう〜っ!」
「紫苑、伊織先生だろう?どうして逃げるんだい?」
紫苑が両手で男たちを引きずってジタバタしていると、教官・伊織が駆けつけた。男たちを見て顔色を変える。
「どうした、お前たち!?」
成海が伊織に説明する。
「1年の湊陽輝くんと僕の妹が、この男たちに襲われていたんです。僕が急行して応戦しましたが、紫苑が加勢して確保してくれたんです。ほら、この通り!」
伊織は笑って紫苑の肩をバシバシ叩く。
「そうかそうか〜!鳩羽お前、報告書が嫌で逃げたわけじゃなかったんだな!逃亡犯の確保に奔走するとは、感心感心!」
「へへっ……そ、そっすよぉ、センセー!オレ頑張ったくないですか〜?」
「おう、お手柄だな!さ、これも報告報告〜!」
伊織は腕を回し、紫苑と男2人を軽々と担ぎ上げた。
「どっこいしょ〜!」
「あぁ〜っ!?」
「よーし、このまま支部まで連行だ!」
「オレも〜っ!?助けてぇ、成海ぃ!」
「猪狩と1年は明日詳しく話を聞くからな。今日は妹さんをお家で安心させてあげなさい」
成海は爽やかな笑顔で手を振る。
「ありがとう、紫苑!僕は美咲と帰るから、犯人を頼んだよ!」
「やだよぉ!成海〜!」
伊織は紫苑たちをリズミカルに上下させる。
「報告!連絡!相談〜!全ては報告に始まり〜!報告に終わる〜!報告報告〜!」
「んぎゃあーっ!その歌やめてぇ!頭が変になる!」
紫苑はワイヤーで男たちと繋がったまま、伊織に運ばれて行った。
読んで頂きありがとうございます!
初投稿ゆえ、至らぬ点があればすみません。
完結まで頑張ります!




