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【11話(2/5)】小さなご褒美

神木の加護を受ける街・煌都(こうと)


訓練校の新入生・(みなと) 陽輝(はるき)は、神木と意思疎通できる女児・猪狩(いかり)美咲(みさき)の身辺警護を任務として請け負っている。

幼稚園が終わった美咲を研究室に連れて行き、美咲と神木の測定を手伝っているのだった。


一方、灯西(とうせい)刑務所の集団脱走事件は未だ解決していない。灯西の様子を探るべく、とある訓練生が先行調査に潜入していた。

照東、推進研究室。

美咲はいつもの測定を終わらせて、神木の苗木「さくらちゃん」と話していた。

「さくらちゃんっ……ううん、あのねぇ、ちょこもらえるの!あっ、さくらちゃんも、ちょこあげる!」


湊は美咲の言葉をノートに書き留める。

先日、研究員の明石(あかし)がお高いチョコを買ってきた。美咲はそれを測定終わりに一個ずつ食べている。

どうやら幼木にその話をしているらしい。


「みなとさぁん!ちょこー!」

「はいはい」


湊はノートを置き、オフィスの棚の上に手を伸ばす。

目を離すと美咲がこっそり2個以上取ろうとするので、絶対に手の届かない棚のてっぺんに置いてあるのだ。


湊がチョコの袋を開けると、美咲はそこへ手を突っ込む。そして嬉しそうにチョコを2個取った。


「だーめ。一個ずつって約束でしょ」

「これ、さくらちゃんのぉ!みさきのいる!」

「だーめ!木は食べないでしょ!」

「みさきがたべさすのぉ!」


そう言うと、美咲は幼木の鉢を抱え、幹にチョコを押し付けた。


「あぁーっ!明石さん!美咲が木にチョコ食べさせてます!」

「えっ?何だって?」


明石は慌ててカメラを手にやって来た。美咲の手元に向けてカメラを構える。


「明石さん!止めなくていいんですか!」

「いや、幼木が食物を吸収できる構造になったら興味深いと思って。現状は一般の樹木と同じく、水で育つとされているからな」


美咲は幹にチョコをぐりぐりと押し付ける。桃色の幹がチョコでベタベタになってしまった。


(あーあ、汚くなった……こっから吸収できんの?)


「さくらちゃん!はい!たべて!」

幼木は美咲の言葉に反応するかのようにほんのりと光ったが、幹のチョコは消えなかった。


「おいしい?ねぇ、おいしいねぇ!」

しかし美咲は幼木が食べたかのように喜んでいる。

「美咲?そいつ食べたの?」

「そいつじゃないっ!さくらちゃん!」

「……さくら、チョコ食べれたの?」

「ん!あじ、わかるって〜!」


明石が幹を確かめる。

「チョコレートは幹の表面に付着しているだけだな。しかし美咲嬢はこれで食べたと思っている……」

「女の子がよくやるおままごとじゃないんですか?人形に食べさせるって同じようにやってた子、見たことあります」


湊がそう言うと、明石は顎に手を当てて唸った。

「ううむ……それが、ままごとではない可能性もある。歴代の御使殿の報告によると、意思疎通は口に出さなくてもできるんだ。今までは美咲嬢が喋っていたから、美咲嬢の方からは口頭でしか意思が伝えられないのだと認識していた。しかし、美咲嬢も思念のみで幼木に意思を届けられるのやもしれん」

「じゃあ、美咲がチョコの味を思念で伝えたってことですか?」

「ああ。美咲嬢のチョコレートを食べた時の記憶や感情が、幼木に届いているのだろう」

「へぇー……なんか、便利なのかよく分かんないですね」


湊は、視界の端で美咲がチョコを口に入れたのを確認した。

(木に食べさせるって言い張ったのに、結局自分が食べたな。やっぱり物理的に食べられないってのは分かってんじゃん……)


湊は美咲の手からもう一つのチョコをつまみ取った。

「はい、それ返して」

美咲が脚に縋ってくる。

「みなとさぁん!それ、みさきのちょこ!」

「さっきの木に渡すチョコ、自分で食べてたじゃん。俺見てたよ」

「んぅ……」


美咲はむくれた顔をしたが、あっさり引き下がった。

(この子、あわよくば2個食べようとしたな。騙されないって)


幹のチョコを拭き取りながら、明石が湊に声をかける。

「湊くんは取ったのか?あれは湊くんへの土産でもあるんだぞ?」

「いいんですよ。俺はもっといいもん奢ってもらったし、美咲が毎日の楽しみにしてるんで」


湊が明石と話していると、通信機に通知が入った。

「あ、美咲の迎えだ。美咲、今日はお兄ちゃん来るって。下で待ってよう」


明石に暇を告げ、2人はオフィスを出たのだった。


読んで頂きありがとうございます!

初投稿ゆえ、至らぬ点があればすみません。

完結まで頑張ります!

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