【9話(1/3)】最後の試験
神木の加護を受ける都・煌都。
訓練生・湊 陽輝は、神木と意思疎通ができる女児・猪狩美咲のお守りを任務として請け負っている。
ある日、美咲の願いに応え、神木の苗木が姿を変えた。
美咲の意思疎通が初めて目に分かる形で明らかになり、神木を取り巻く関係者たちが動き始めるのだった。
一方、湊は訓練校の中間試験を迎えていた。
中間試験の結果に応じて、貰える給金の額が決まる。
金のために、湊は筆記試験に四苦八苦するのであった。
※小説家になろう・note・Nolaノベルにて同時投稿中
※残酷な描写として、殴る蹴る・鼻血が出る程度です。
試験最終日。
筆記試験の最後の科目を終え、湊は伸びをした。
「うぅ〜ん、終わった……色々と」
同級生の晃記がやって来る。
「湊くん、手応えはどうだった?」
「うーん、割とヤバい」
「でも、休んでた期間より出席してた期間の方が長いでしょ?きっと大丈夫だよ!」
晃記はジャージの入ったナップサックを手にしている。
「さあ、後は実技試験だよ!湊くん、得意だろう?」
「うん。そうだな、実技で取り返せばいっか」
湊は気を取り直し、晃記と共に体育館へ向かった。
***
体育館では、まだ前のクラスの生徒が実技試験を受けていた。教官から外で待機するように言われ、玄関ホールはジャージに着替えた生徒で溢れかえった。
隣の晃記が話しかけてくる。
「1年の実技試験は宝刀の構えや振り方だけで、組み合いはないんだって。湊くんの祈念なら余裕で満点だよ!」
「ふふん、そう?ま、本番でもあんな風に光るか、まだ分かんないけどね?」
口ではそう言いながらも、湊は余裕の笑みを漏らす。
あれから何度か実践授業を受けたが、湊の宝刀は毎回眩い輝きを見せていた。
(祈念のコツ、完全に掴んだもんね。楽勝、楽勝)
前のクラスが終わり、生徒たちが一斉に移動を始める。
湊と晃記も中に入ろうとしていると、何者かに呼び止められた。
「あっ、いたいた!湊〜!」
「ん?」
生徒の波を掻き分け、指導教官の近衛がやって来た。
「近衛先生?」
「ほーら湊、行くぞ〜」
近衛は湊の腕をガッチリと掴み、2階へ繋がる階段に連れて行く。
「近衛先生!?湊くん!?」
晃記の困惑した顔が、どんどん遠ざかっていく。
「先生!俺、まだ試験やってないです!」
「分かってるっての〜。お前はこっちだ!」
近衛が2階の扉を引くと、だだっ広いフローリングの中央に、見覚えのある生徒が2人並んでいた。
(あれ、成海さん?隣の眼鏡野郎は……名前忘れた。生徒会の会長と副会長が、どうしてここに?)
「ここは実践練習場。普段は訓練生が宝具を扱うトレーニングルームだが、今日はここがお前の試験会場だ」
「俺の?一体どういうことですか?」
「これは任務登用試験だ。本来なら、この試験に合格した訓練生にのみ、任務への参加が許可されるんだ。手順が前後してしまったが、お前にもこの試験を受けてもらう。そしてこの試験が、お前にとっては今期の実技試験にあたる」
(任務ったって、子どものお守りじゃん。特別な実技試験とか要るか……?)
訝しむ湊を他所に、近衛は生徒会の2人のもとへ歩いて行く。
「待たせたな、お前ら〜!」
「近衛先生!湊!」
真っ先に駆け寄ってきた成海は、湊に囁く。
「美咲の加護の件、照臣と近衛先生は詳細を知らないんだ。内密に頼むよ」
(てるおみ?……ああ、副会長のことか。妹が神木の御使だなんて、親しい間柄でも言えないか)
湊は黙って頷いた。
副会長はバインダーを手に、滔々と資料を読み上げる。
「警護隊附属照東訓練校1年、湊陽輝。素行不良における懲罰の一環として、当校学生の妹の一時的預かりを担当中。預かりには給金が発生しており、一般任務に分類される行為である。当該訓練生は、任務登用試験の合格を要するものと判断される」
(ふーん……ただのお守りとはいえ、金貰うんなら相応の手順を踏めってことか)
副会長は、読み上げを続ける。
「任務登用試験は教官3名が同席する規定であるが、本日は急を要する事態に見舞われたため、例外的に教官と登用訓練生で試験を監督する」
「ん?急を要するって?」
副会長がかしこまった声色を止め、呆れた声を出す。
「何だお前、ニュース見てないのか!」
「ニュース?」
「昨晩、灯西の刑務所で集団脱走事件があっただろう!受刑者はまだ捕まっていない。それで灯西へ応援に行ったり、訓練校周辺の警備を強化したり、先生方はてんてこ舞いなんだ」
「へぇー」
「全く、それが隊員を志す者の反応か?第一、僕はお前がこの試験に受かろうと、他の一般任務に登用されることについては――」
近衛が副会長のお小言を遮る。
「まあまあ、その辺で、な?ほら、ささっとやるぞ!湊、お前はコイツらの片方と手合わせするんだ。その様子を、オレともう片方が見て評価する」
「手合わせ?ボコればいいってことですか?」
「その認識でいい。ただ、2人とも1年生の時に登用試験をクリアした実力者だ。どっちを選んでも、お前の思うようにはいかないぞ」
(成海さんと副会長、どっちがボコしやすいだろ……)
湊が迷っていると、成海が湊に近寄ってきた。
「湊くん、宝刀を触ってまだ数週間だろう?怪我しちゃいけないから、僕が様子を見つつ合わせよう」
しかし、副会長が成海を押し除けて前に出る。
「成海!妹が世話になってるからって甘やかすんじゃない!僕が相手になる」
「そうかい?照臣、無理は禁物だよ」
副会長はフロアの片隅の倉庫から、細長い宝具を取り出した。
(何だあれ……槍か?)
「僕は宝槍を使わせてもらう。湊、お前は宝刀でいいか?」
「はい。よろしくお願いします……えっと……副会長さん」
「吉川!吉川照臣だ!」
「ああ、そうだっけ……お願いします、吉川さん」
読んで頂きありがとうございます!
初投稿ゆえ、至らぬ点があればすみません。
完結まで頑張ります!




