【8話(3/4)】幼き御使さま
神木の加護を受ける街・煌都。
サボりの学生・湊陽輝は、神木と意思疎通ができる女児・猪狩美咲のお守りを任務として請け負っている。
美咲は意思疎通の力を調べるために研究室へ預けられ、日中は狭い部屋に閉じ込められていた。
湊は迎えとお守りを担当することで、普通の子と同じように幼稚園に行きたいという美咲の願いを叶えるのだった。
美咲は日々の幼稚園で、色々な思い出を作っていく。
一方、湊には中間試験が迫っていた。
任務の給金は、中間試験の結果に応じて決まる。
勉強をサボってばかりではいられない。
美咲の面倒を見ている間も、湊は試験勉強に励むのであった。
※小説家になろう・note・Nolaノベルにて同時投稿中
※残酷な描写として、殴る蹴る・鼻血が出る程度です。
湊はオフィスで明石に勉強を見てもらっていた。
「これと似たやつ、小テストでもやりました。ミスりやすいから嫌いです」
「その構造式はテストでは頻出だからな。今度、自分が持っていた問題集を持って来ようか?いや、ここに置いてあるかもしれないな……」
明石が足元の棚を引き出していると、美咲がやって来て、扉をバンバンと叩く。
「ねぇーっ!あけてぇー!みてみてーっ!」
ひと眠りしたからか、やけに声が元気で大きい。
「はいはい、ちょっと待ってよ……」
湊は椅子から立ち上がりながら、最後の式を解く。
計算を終わらせておかないと、また最初から考える羽目になる。
「ねぇ!ねぇーっ!」
「……よし。どしたの、って!?」
ガラス扉の向こう。
美咲の腕には、幼木の鉢が抱えられている。
幼木は、翡翠色から桃色に変わっていた。
「うわっ!!美咲、その色!」
湊の声に反応して、明石が顔を上げる。
「湊くん、美咲嬢がどうかしたのか?」
「明石さん!苗木が!」
湊は急いで扉を開ける。
美咲は明石に駆け寄り、桃色の幼木を見せた。
「みてみて、あかしさん!」
明石は驚いて尻餅をついた。
「あぁっ、明石さん!大丈夫ですか!?」
「美咲嬢!?それは何だ!?」
「さくらちゃん!」
「さ、さくらちゃん!?」
「うふ、よかったねぇー!」
美咲はご満悦だが、何も良くない。
今までは何事もなかったのに、ちょっと目を離した隙にこんなことが起こるなんて思わなかった。
「美咲嬢、何をしたんだ!?」
「さくらちゃんになった!さくらちゃん、かわいいねぇ〜!」
湊は明石と美咲の腕を取った。
「話にならない。課長さんに見せに行きましょう!」
***
資料室の扉を、ノックなしでバタンと開ける。
「――あら、湊くん。ノックくらい」
「いいから!これ見て下さい!」
桃色の幼木を見るなり、課長は悲鳴を上げて椅子から転げ落ちた。
(へぇ、この人もこんなコミカルな反応するんだ。なんか面白いな)
明石が慌てて課長に駆け寄る。
「課長っ、大丈夫ですか!?」
「どうやって!?いつ!?どうやって変化したの!?」
「それが、美咲嬢しか見ておらず」
美咲は課長に鉢植えを差し出す。
「おばちゃん、みて!さくらちゃん!」
「さ、さくらちゃん!?」
「美咲嬢は、さくらちゃんがかわいいとしか言ってくれないのです」
課長は地団駄を踏んで叫ぶ。
「あぁっ!もうっ!何で誰も見てないわけっ!?明石くん!聞き取りと測定!」
課長は大慌てでどこかへ走り去った。
***
測定後、明石はオフィスで美咲から何とか状況を聞き取ろうとしていた。
「まずは緑だっただろう?そこから?」
「ぱぁーって!ぱぁーってなった!」
「ぱぁー?えぇっと……」
明石が美咲に質問していると、室長がやって来た。
美咲の腕の中の幼木を見るなり、眉を顰める。
「そう。じゃあ、この幼木の御使はこの子で確定なのね……」
「なんか、嬉しくなさそうですね」
「だって、これからのことを考えると……」
そう言って、室長は黙ってしまった。
(美咲が御使だと思ってここに呼んでたんだよな?だったら喜ばしいことじゃないのか?)
湊は、美咲に目を向ける。
美咲はずっと桃色の幼木を抱いて離さない。
初めて幼木が自分の願いに応えてくれて、嬉しかったのだろう。
(美咲、普通の子どもになりたいとは言ってるけど、幼木のことは好きっぽいよな。話せるし、人間の友達と変わらない感覚なのかな)
***
明石の聞き取りが終わった。
美咲から聞いた話によれば、美咲が眠りに落ちる直前、幼木は白い光を放った。
美咲はそこで意識を失ったらしい。
そして、夢の中でさくらと自称する女の子と遊んだという。
美咲が起きたら既に桃色の木になっていたそうだ。
「ううむ……夢で幼木と意思疎通を図ったのだろうか?課長が戻って来たら、報告するとしよう」
課長が戻るまで、湊と美咲は部屋に引き上げることにした。
読んで頂きありがとうございます!
初投稿ゆえ、至らぬ点があればすみません。
完結まで頑張ります!




