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【6話(4/4)】宝刀と実践授業

神木の加護を受ける街・煌都(こうと)


サボりの学生・(みなと)陽輝(はるき)は、神木と意思疎通ができる女児・猪狩(いかり)美咲(みさき)のお守りを任務として請け負うことになった。


研究室に預けられっぱなしの美咲は、普通の子と同じように幼稚園に行きたいと願っていた。

湊は美咲が幼稚園と研究室の両方へ通えるようにして、その願いを叶えるのだった。


※小説家になろう・note・Nolaノベルにて同時投稿中

※残酷な描写として、殴る蹴る・鼻血が出る程度です。

寮にいた時は肌寒かったが、時間が経つにつれて空気があたたまってきた。

日が当たるベンチを探して、仰向けに寝転がる。


(この俺が、この時間に起きたってだけで凄くないか?今日はもう何もしなくていいだろ)


早起きしたから、眠くなってきた。


目を閉じていると、聞き覚えのある声が近づいてきた。


「湊陽輝く〜ん、相変わらずサボりですかい」

「……近衛(このえ)先生。毎回よく俺の居場所が分かりますね」

「色んな人が教えてくれるんだ。お前の担当してる訓練生は一体どうなってるんだってな」

「へぇ、そりゃ大変ですね」

「他人事じゃない。お前、給金が欲しいんだろ?」


湊は起きて伸びをした。

「うぅーん……ま、もう心配いりませんよ。俺、ぼちぼち授業に行くんで」

「ふーん、今はお昼寝してるみたいだけどなぁ?」


そういえば、授業は途中から出席してもいいのか尋ねたいんだった。

「とりあえず、なんかの実技、出ようと思ってるんで。途中からでも出れるやつ教えて下さい」

「授業なんていつからでも出りゃいいんだよ。座学こそ、早めに受けないと大変だぞ〜?つっても、お前が飽きちゃいけないからなぁ。まずは宝具に触ってみるか?ちょうど2限目にオレの宝刀の実践授業があるから来てみろ」


***


ジャージに着替え、近衛と一緒に体育館に入る。

中には2クラス分くらいの生徒がいた。


「さ、まずは4人組作れ〜!お友達がいない奴はオレが適当に突っ込んでやるから気にすんなー」


近衛の言葉を聞き、生徒たちが分かれて並び始める。


(言い方ムカつくな。まあ、割り振られるのを待つか)


湊が突っ立っていると、横から視線を感じた。

「ん?……あぁ、あんたらもいたんだ」

神木ファンクラブの3人が近寄ってきて、湊を取り囲む。


「湊くん、実技だから来たの?僕らと組もうよ!」

「いいけど、別に」

「やったぁ!」


近衛が生ぬるい笑顔で肩を叩いてくる。


(何だよ、うぜぇ……)


湊は3人に連れられて、生徒の列に加わるのだった。


***


「さーて、今日は宝刀の組み合いをやるぞ〜。まずは祈りを通さずに、振り方だけやってみるように。慣れたら祈りを通してみてもいいぞ〜」


近衛が宝刀の構えと振り方を見せた後、4人組に2本ずつ宝刀が配られた。

2人が組み合い、それを見る2人がアドバイスするらしい。


「とぉっ!」

「やぁーっ!」


研究マニアと結晶マニアが、宝刀の先でちょんちょんと小突き合う。

立派な掛け声に反して双方腰が引けており、足元はおぼつかない。


歴史マニアが2人に拍手を送る。

「いいよー、2人とも!探検節に登場する勇猛な剣士のようだ!」


(いや、全然違うだろ。こいつら下手すぎないか?)


組み合いが終わった研究マニアが、持っていた宝刀を渡してきた。


「さあ、今度は湊くんたちの番だ」

「うん……へぇ、宝刀って案外軽いんだ」

「自分たちが扱っていいのは結晶成分の少ない訓練用宝具だからな。刀身はプラスチックで、結晶の粉末を塗装しているだけさ」

「え?そんなんで力が発揮できるわけ?」

「確かに結晶が多いほど、反映される力は大きい。だが祈念の要求量も多いんだ。訓練生にとっては、結晶が少ない方が扱いやすいというわけだ」


結晶マニアも会話に加わってくる。

「それに、結晶の流通量は年々少なくなってるんだよぉ。粉末でさえ貴重だから、僕ら訓練生は薄い塗装の安い宝具しか持っちゃいけないんだぁ」

「なるほどね。安物なら安心して振り回せるな」


湊が宝刀を手に向き合うと、相手の歴史マニアは縮こまって後退する。

「どしたの、やんないの」

「だって湊くん、威圧感があって怖いよー」

「何言ってんの。隊員になったら悪者ぶっ倒さなきゃいけないのに」

「僕らは研究志望だから、実践は苦手なんだよ……単位のために仕方なく出てるんだ」


傍で見ていた研究マニアが、湊の宝刀に目を向ける。

「時に湊くん、宝具の祈念は経験があるのか?」


(祈念……前に紫苑さんが見せてくれたやつか)


「いや、やったことない」

「ならば、まずは祈念の練習をしよう。宝具に祈りを通すんだ。これなら君が湊くんの宝刀を受けなくて済むだろう?」


研究マニアに言われて、歴史マニアは嬉しそうに宝刀を下ろした。

「ああ、そうだね!よーし、僕が教えてあげよう!」


歴史マニアは湊の隣に立って、宝刀を構えてみせる。

「湊くん、まずは先生がやってた通りに構えてみて。こうやって、必ず刀身に手を当てておくんだ」


祈りを通せるように、最初から刀身に触れる姿勢を取っておくようだ。

「こう?」

「そうそう!左手はしっかり柄を握っててね。右手は手のひらでも指先でも、とにかく刀身に触れていたら大丈夫だよ」


確か、紫苑は宝具のフックを首に当てていた。

肌に触れていれば身体のどこでもいいらしい。


「で、そのまま祈りを込めるんだ。触ってるところが光り始めたら成功だよ!」


刀身に添えた手に意識を集中させる。


(祈り……そうだな、コレで小昏をボコせますように……)


しかし、一向に刀身は光らない。


「おかしいな、ちゃんと祈ってるのに」

「これは人によって掴むのに時間を要するからね。いずれできるはずさ。ちなみに何を祈ったの?」

「小昏をボコせますようにって」

「えぇ、なんてことを!湊くん、教典を思い出して!『神木、すでに善し悪しを学べり。善き願いを聞き、悪しき願いを断つ』ってあったでしょ?善い内容じゃなきゃ効かないよ!」

「あー、それもそっか」


(そういや紫苑さんも人体は傷つけないって言ってたな。教典にも書いてあったっけか)


教典の内容を教えとしては覚えていないので、イマイチ行動に結びつかない。


「でも、善き願いって何?」

「それは人によるけど……隊員さんだと、守りたい存在を思い浮かべるのが早いって言ってたよ。正義感が強いと祈念が成功しやすいみたい」

「……分かった」

「じゃあ、もう一回やってみて!」


再び刀身に手を当てる。


(守りたいって何だ?……そうだ、美咲を守れるようにならないと!小昏みたいに美咲を狙う奴が出てきてもいけないから、念のため宝具は使えるようにしたいな)


気がつくと、手元が仄かに白く光っている。

マニアたちが手を叩いて歓声を上げる。


「すご〜い、湊くん!大成功だよぉ!」

「しかも明らかに白光が見えているぞ!自分たちがやっても凝視しないと判別できない程度なのに!」

「湊くん、手をゆっくり刃先へずらしてみよう!光を刀身に行き渡らせるイメージで!」


ゆっくりと手を滑らせると、刀身の全体がぼんやり淡い光に包まれた。

「これだけか。もっと光らない?」

「これでもすごい方だよ。祈り方が上手いほど、輝きも効果も強くなるんだ。本当に上手い人は、白色が自分の固有の色に色づくんだよ」


紫苑が見せた輝きには到底及ばない。

あと2年頑張れば、あのくらいの光を放てるのだろうか。


***


「お前ら、団子になってどうした?ちゃんと組み合ってるか〜?」


近衛が様子を見にやって来た。

歴史マニアが喜び勇んで報告する。


「近衛先生!湊くん、初めて宝具を扱ったのに、白光がしっかり見えるんですよ!」

「ん?おぉー、ホントだな!」


近衛は湊に向き合い、持っていた宝刀を構えた。

「じゃあ湊、オレの宝刀に打ち込んでみろ」

「祈りながらですか?」

「そうだ。本当は相手に及ぼしたい影響なんかも込めるといいが、まあ今はそこまで要求しない」


湊は紫苑に気絶させられたことを思い出した。

「じゃあ、先生が気絶するように祈りながらやってみたら、そうなるってことですか?」

「ああ、やってみてもいいぞ」


湊は集中して宝刀を構える。

美咲を守れるようにと思いつつ、近衛が気絶するようイメージしつつ。


振りかぶって、勢いよく刀身を近衛に振るった。

近衛は宝刀で受けながら、湊の動きを指導する。


「もっと踏み込んで!そう、手は下がらないように!」


宝刀を打ち込むことに集中していると、今度は刀身から光が消えてしまう。

動きを止めて宝刀に祈りを通すと、再び刀身が光る。


(祈念の間は宝刀が光るけど、光った状態で相手に当てなきゃ意味が無いんだ。難しいな)


「ほら、足が止まってるぞ〜」

近衛が宝刀で太腿を小突いてくる。


「はぁ、はぁ……これ、意外と大変ですね……」

「動きながら祈りを通すのは難しいだろ?だから最初は動きだけをマスターしろ。そうすりゃ頭で考えなくても動けるようになる」


近衛は宝刀を下ろし、こちらに腕を差し出す。


「もうひとつ、オマケだ。湊、オレが気絶するようにやってみろ」

「いいんですか?」

「ああ。お前の全力をぶつけてみろ」


湊は目を閉じて、宝刀に祈りを込める。

集中していると、手と刀身が一体化したような、不思議な安定感が腕を伝う。


周りの生徒のざわつきが聞こえてくる。


「えっ、何あれ!?」

「あんなに光ってるの初めて見た!」


目を閉じていても分かるくらい、刀身が強い輝きを放っている。

湊は目を開け、眩く輝く宝刀を、近衛の腕に振り下ろした。


「ふんっ!……あれ?」


近衛は何事もなかったかのように腕をヒラヒラと振る。


「残念だったな。お前の祈念より、オレの加護が強い」

「加護?先生、特殊な力があるんですか?」

「そうじゃない。煌都の住人の身体は、常に加護を受けている。強靭な心身ほど大きな加護を受けやすく、他人からの祈念を跳ね返せるようになる。要は鍛えりゃ強くなる。簡単な話だろ?」


近衛は湊の肩を抱いてくる。

「何ですか」

「湊、お前は祈念のセンスがある。あれほどの輝きは、オレが見てきた新入生の中でもトップクラスだ。サボって腐らせちゃあもったいないぞ〜」


近衛は湊の肩をポンと叩いて、他の組を見に行った。

「さ、人のを見てないで、練習しろよ〜!」


湊は手にした宝刀を見つめた。

もう刀身は光っていない。


マニアたちが湊を取り囲む。

「湊くん、凄かったよ!」

「上級生でもあんなには光らないぞ!」

「……うん」


結晶マニアが不思議そうに顔を覗き込んでくる。

「どうしたのぉ、湊くん?」

「いや、なんか……楽しい、とはちょっと違うんだけど……この辺がザワザワするっていうか」


ジャージの胸元を掴むと、結晶マニアはニコッと笑った。


「そっかぁ!それはきっと、湊くんにも好きなものが見つかったんだよぉ!さっきよりいい顔してるもん」

「はぁ?好き?何それ」


そんなに緩んだ顔をしていただろうか。

恥ずかしくなって、口元を袖で覆い隠した。

しかし歴史マニアが袖を引っ張ってくる。


「隠すことないよ!湊くん、まずは宝刀に関係することから頑張ってみようよ!次は結晶を使った授業だから、一緒に受けよう!ね?」

「……分かった」


宝刀への祈念は、不思議と心地良い感覚だった。

宝刀に関することは、少しなら勉強してもいいかもしれない。


そう思った湊は、その日初めて座学に出席したのだった。

読んで頂きありがとうございます!

初投稿ゆえ、至らぬ点があればすみません。

完結まで頑張ります!


次回・番外編は3/26(水)更新予定です。

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